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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第二巻拾九回  朱を混ぜて暈す人
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
ではゆるゆると綴らせて戴きましょうか。

今回のお題は、ボーイズラブの分類と取り扱わ
れ方に就いてです。鹿爪らしい物言いをしてお
りますが、平たく言えば版元さんがボーイズラ
ブをどう扱っていらっしゃるか、を本を買う側
から一寸見てみましたよと言う程度のものです。

今でこそ書店の棚にも古書店の棚にも溢れんば
かりになっているボーイズラブ作品の数々です
が、まだボーイズラブと呼ばれず〈耽美〉や
〈やおい〉と呼ばれていた頃は専用レーベルも
本当に無く、探し当てると言う事自体が先ず一
仕事でした。そう言う中でやおいブームと時同
じくして生まれた新興出版社であるBIBLOS(当
時青磁ビブロス)やJUNE掲載作品等を刊行して
いた白夜書房・光風社出版発行の単行本の存在
と言うのは実に有り難く得難いものでありまし
た。
そんな中、大手出版社もさり気無く出版に参画
してきました。90年半ば頃から角川書店が若者
向けの文庫レーベル『スニーカー文庫』に『JU
-NE』掲載作品等を収録する様になっていたの
です。これは大きな出来事であったと思います。
耽美小説がいきなり文庫化されて、廉価で入手
出来る様になったのですから。
しかし、この出来事は同時に軽い混乱を起こし
た事であろうと推測されます。筆者自身も往時
書店にて唖然と致しましたから。
何気なく棚から抜き出したスニーカー文庫。冒
険SF譚を手に取ったつもりで表紙を改めて観る
と少年同士の恋愛を匂わせる絵に目が釘付けに
…免疫が無い方には本当に衝撃的な事態であっ
たかと思われます。それに伴う抗議が多かった
のかそれとも当初の計画だったのか如何かは判
りませんが後にJUNE方面から流入した作品を中
心としてスニーカー文庫からルビー文庫が分派
独立創刊されると言う運びとなりました。92年
末の事です。そう言う経緯を以って創刊された
ルビー文庫ですが、近年はティーンズルビー文
庫の独立創刊休刊を経てビーンズ文庫が分派独
立創刊される辺りでまた軽く収録作品の定義が
混乱していた様ですね。〈女性向け〉と言う言
葉の再解釈があったのやも知れません。

さて、角川書店さんの場合文庫のみならず漫画
でも多少の混乱がある様です。その例がB6判漫
画単行本の分類ですね。
このサイズの単行本は当初『あすかコミックス
DX』と言う括りであり、収録作品としては同社
発行の少女漫画誌『ASUKA』掲載作品及びその
増刊『ミステリーDX』掲載作品と言う原則があ
ったかと受け止めております。
その中に何時頃からでございますか、『あすか
コミックスCL−DX』と言う括りのものが混在す
る様になって参りました。これは如何言う括り
かと申しますと『ASUKA』から分派したボーイズ
ラブ漫画誌『CIEL』掲載作品を中心にしたボー
イズラブ漫画用のレーベルなのでございますね。
有り体に申しますと、描写もやや大人し目であ
るとは言え一般の少女漫画とは少し異なる方向
でございます。
この両者、背表紙の約束事さえ飲み込んでいれ
ば確実に見分ける事は出来ましょう。が、そう
言う選択に不慣れな方にはかなり不親切な区分
ではあるまいか、と思われます。
せめて表紙(カバー)にもう一工夫あれば、と
思うのですが。背表紙のレーベルロゴの違いだ
けでは、如何にも。

そして、他の大手出版社に於いても軽い混迷状
態は続いております。
元々ボーイズラブ小説用レーベルでは無かった
講談社X文庫ホワイトハートシリーズがボーイズ
ラブと非ボーイズラブの二本柱で構成される様
になったり【註1】、少女小説レーベルだった小
学館パレット文庫が実質的なボーイズラブ取扱
レーベルに済崩しに変遷して行ったり。集英社
コバルト文庫がボーイズラブも収録しながら従
来の女性向ライトノベルと言う方向性を保って
いるのが今にして思えば奇跡と言える様な感じ
です。
ボーイズラブと言う市場の状況は、草創期と現
在とでは多いに違います。草創期は好事家達が
商業出版さえも密やかに、時には書店を梯子し
ながら捜し求めておりました。現在は、専門書
店にまで赴かずとも手近な本屋に入ればそれな
りの本を買う事が容易な状況となりました。同
人誌再録アンソロジーでさえ、町の本屋さんで
入手可能な時代となっているのです。
そう言う時代だからこそ、大手版元さんにはき
ちんとした区分をお願いしたく思う時があるの
です。ボーイズラブと共に歩んできた版元さん
がそれなりの対応をなさってきた経過を併せ見
て考えますと、ね。
曖昧な部分が魅力ともなるこの分野ではありま
すが、其れはあくまでも作品の持ち味としての
事かと。

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
註1
http://blog.melma.com/00090840/20050602153329
http://blog.melma.com/00090840/20050604144922
以上二記事を参照。
元来〈恋愛〉と〈ファンタジー〉と言う区分だ
ったものが変遷し、〈恋愛〉区分(カバーデザ
イン紫色帯)が〈ボーイズラブ〉に、〈ファン
タジー〉区分(カバーデザイン緑色帯)が〈非
ボーイズラブ〉にそれぞれスライド。
ご指摘、感謝致します。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第二巻拾九回 2005.7.10発行

文責:葡萄瓜XQO
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