★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 ☆ 第二巻弐拾弐回 分別 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 御機嫌よう。葡萄瓜でございます。 ではゆるゆると綴らせて戴きましょうか。 JUNE・耽美・ボーイズラブ・やおい…境界線が はっきりしている様で時々曖昧になっている此 れ等の区分を今回は御肴に。 先ず、やおいの定義には広義と狭義があると言 う事を最初に申し上げます。 広義のやおいとは同性間交歓を描く作品全般を 示すもの。同人誌「らっぽり」【註1】誌上にて 定義されたものでございますね。その下位概念 として狭義のやおい、キャプテン翼同人誌ブー ム以降に定義された男色風味パロディ・二次創 作と言うものがあります。現在「やおい」と言 われて皆様が連想するのがこの狭義のものでは 無いでしょうか。広義のやおいからはもう一つ の流れとして一次創作も発生しておりますが、 こちらには明確な名前が付けられていなかった 様です。それ等の内小説群は後に『耽美小説』 と名付けられ【註2】、その派生から漫画やイラ ストも耽美と呼ばれたりする様になりました。 JUNEの場合、先述の流れとは異なった流れの中 で成立していた様です。雑誌「JUNE」周辺でそ の美意識にそぐう世界観を持つ作品群、として 形成されてきた様です。耽美的な観点を持つ創 作としての同性愛、とも言うべきものでしょう か。 ここで問題になりますのは、ボーイズラブはJ- UNEと耽美いずれの流れの延長線上で発生したか と言う事です。 筆者が資料を集めた上で考えますに、ボーイズ ラブの流れは耽美と共に在った様に思われます。 初期の「ボーイズラブ」と言う語はほぼ「耽美」 の言換え語として存在致しましたし。【註3】 JUNEは、時代が変わってもJUNEで在り続けまし た。JUNEの名の下に全ての作風が収斂され、一 つの美意識として再構成されていたと観るべき ではなかろうか、と思われます。 耽美とボーイズラブの距離を少しずつ遠ざかっ て行ったのはJUNE以外の勢力が打ち込んでいっ た楔による、と考えた方が妥当でしょう。 では、耽美からボーイズラブへの移行があった と言うのは何時頃と考えるべきか。此処で或る 作品を取り囲む状況の変遷をサンプルとして御 覧戴きます。 「ベイシティ・ブルース」 神崎春子(現;神崎竜乙)作 筆者の手元には三つの版が存在します。 ・ロマンJUNE掲載『シャドウ・ハンター』 (88.10.5発行/サン出版) ・VelvetRomanシリーズ 新書上製/92.12.25初版/二見書房 ・CHARADE BOOKS 新書/95.10.25初版/二見書房 面白いのは、この三つの版では意義付けがそれ ぞれ違うと言う事です。 ロマンJUNEと言うのは誌名からお判りの通りJ- UNEの系列雑誌【註4】です。ですから区分とし てはJUNEに該当致しましょう。 そして二見書房のVelvetRomanシリーズ。これは 勁文社及び白夜書房のシリーズに続き耽美小説 叢書の基礎を固めたシリーズです。 そして最後の二見書房CHARADE BOOKSと申します のは、ボーイズラブノベルズと明確に打ち出し た先駆けのシリーズではなかったか、と史料上 からは読み取れます。 JUNEから耽美に移る迄の四年間、そして耽美か らボーイズラブに移る迄の三年間。その合計の 七年間、神崎春子と言う作者の描き出す世界の 理念は少なくとも変わっていない様に思えます。 変わったのは周囲の状況でしょう。 JUNEの中で通じていた美意識だけでは物足りな いと言う感覚から少し開かれた「耽美小説」の 世界がうまれ、更に耽美小説の中に流れていた 「同性同士と言う枷」と言う通奏低音を取り払 う形でボーイズラブと言う世界が発展する。大 雑把に説明するとこうなろうかと思われます。 そう言う事から考えてみますと、二見書房から 「CHARADE」と言うレーベルが発足した辺り【註5】 が現在のボーイズラブの起点である、と捉える のが妥当ではないか、と。 この辺りの状況説明が曖昧になっているものだ から徐々に区分の境界も曖昧になってきたので はないか、と筆者は思ってしまうのですが。 さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて 戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 註1 『らっぽり やおい特集号』 らっぽり編集事務局/波津彬子:責任編集 79.12.20初版 ★ 小説JUNE 2001年3月号 に再録。 No.129/01.3.1発行/マガジンマガジン 註2 公称される様になり出したのは1991(平成3) 年12月、勁文社より『耽美小説SERIES』が刊 行されだしてから。 それまでは個別の作品のコピーとして「耽美 小説」坏と用いられていたりした。 註3 comicイマージュ及び小説イマージュ(白夜 書房)のキャッチコピーとして〈BOY'S LOVE〉 が提唱されていたが、版元サイドでは同誌に 掲載されていた作品群、及びその周辺の作品 群を〈耽美〉と認識していたらしい。 註4 正確には「小説JUNE」の増刊。 註5 雑誌「CHARADE」創刊 94.3.1 CHARADE BOOKS創刊 94年11月? ======================= 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 第二巻弐拾弐回 2005.8.10発行 文責:葡萄瓜XQO website:『仇花の記憶』 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/ mail:xqo_gm@yahoo.co.jp このメールマガジンは melma! http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00090840/ メルマガ天国 http://melten.com/m/14637.html Mailux http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533 Macky!からの配信分は7月よりRanStaに移行しました。 http://www.ransta.jp/backnumber_2939/ メルカップ http://www.melcup.com/cgi-bin/magazine/magazine.cgi?mag_id=M000000737 マガジンすきやねん http://www.sukiya-nen.com/sys/m.cgi?id=xqo のシステムを利用して発行させて戴いています。 ご意見ご質問等はWebサイトBBS http://bbs.infoseek.co.jp/Board02?user=bxqo にて承ります。 又連動BLOG「ショタやおい雑記」も運営しております。 http://blog.melma.com/00090840/ こちらも宜しくお願い致します。 バックナンバーはサイト内にて公開しております。 再配信ご希望の場合はお手数ですがメール若しくは BBSにてご用命戴ければ幸いです。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆