★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 ☆ 第二十一回 ショタやおい日本史(三) ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 御機嫌よう。葡萄瓜でございます。 では、ゆるゆると雑談をさせて戴きましょう。 本邦に於けるショタ及びやおいという観点から 捉えた虚実交えた人物史もどき・第三回目で御 座います お気軽に御読みくださいませ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ 弥次さん喜多さんで知られる十遍舎一九作「東 海道中膝栗毛」はそもそもの始まりからして衆 道絡みであります。静岡の大店のご主人であっ た弥次さんこと弥次郎兵衛さん、旅芝居の陰子 花水鼻之助に懸想して良い仲になったは良いが 入れ込みすぎて身代潰し、鼻之助と手に手をと って江戸へ出奔。後に鼻之助を元服させて喜多 さんこと喜多八と名乗らせつるんでいた…と言 う馴れ初め。 まあ、ショタややおいという観点からは外れる でしょうが、こういう設定があってもおかしく は思われなかった時代性は凄いなと。 この二人の同性愛関係という部分に焦点を当て て窯変させたのがしりあがり寿作「真夜中の弥 次さん喜多さん」「弥次喜多inDEEP」ですね。 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ 上田秋成作「雨月物語」は一種の怪奇譚として 語り伝えられていますが、ここにも男色の影は さしています。 『青頭巾』では物語の因としての僧侶による稚 児愛の妄執(稚児を愛する余りに修行を怠る様 になり、病死した稚児の骸を愛しさの余りに食 べてしまった!)が語られ、『菊花の契り』で は男色と見紛う程の義兄弟の絆が物語の軸とし て語られています。『菊花の契り』の文中では この義兄弟の絆についてあからさまに男色であ るとは語られておりませんが、菊=後門という 連想と義兄弟の絆というには余りにも深い結び つきが匂う事から、男色の関係を連想する解釈 もありますとか。 この作品は山口椿氏の手によって濃厚な愛欲譚 としてリライトされております。 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ この当時は風流人の遊びとして男色を認識する 人も多かったようですが、遊ぶ相手は基本的に 若衆(思春期に突入した元服前の少年)。元服 して大人の形となった『野郎』同士で男色を行 う事は少なかった様子です。そう言う交わりが あったとしても、それは野郎同士が出会って関 係が始まるのではなく、若衆と念者(年嵩のリ ード役、つまり攻)の関係が継続する或いは若 衆同士の交わりの継続がそのまま野郎になって も継続されたものであろうと思われます。 そういう稀有な例が井原西鶴『男色大鑑』に一 例紹介されておりますね。 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ 江戸時代の若衆と言えば、その中に春を商う人 も存在したと言う事は否定できません。陰間で すとか色子ですとか言われた、一応役者見習の 少年達ですね。 彼等の中には金銭と快楽を得る為に斯界に身を 投じた人もいるのでしょうが、そこは本来男の 子ですから我慢できなくて爆発したり燻ったり する事もあったでしょう。 井原西鶴翁のお気に入りに酔うと刀を振り回し て客を追いかける威勢の良い上村辰弥という若 女形(註1)が居て『それでもなお彼は可愛い』 と西鶴翁は惚気て居たとか言う話を筆者は聞き 及んでおりますし、杉浦日向子女史は『百日紅』 其の十九「色情」に於いて陰間茶屋に於ける若 衆の悲喜交々を描いております。 何となく現代にも話が一脈通じますような、そ うでないような。 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ 江戸時代の武士階級における男色は単なる好色 の一部ではなく、武士道と融合して一つの流儀 を形成しました。これがいわゆる衆道の本来の 姿です。 精神面においては古代ギリシャにおける教育的 な指導も込みになった少年愛関係と等しきもの、 と思って良いでしょう。 ただそれが常に正しき形で行われたかどうかと 言うと、文献中に散見出来る記録を見る限り疑 わしくはあります。衆道と言う規範でも置かな い限り、社会は血気に逸って過ちを犯しやすい 若者を指導出来なくなってきたのではないか。 若しくは衆道を大義名分にして若者は自らの欲 を正当化したのではないか、という疑念は一応 持っておいても良いやも知れません。 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ とりあえず大雑把に江戸時代辺りまででこの企 画は一先ず終わりにしとうございます。 ふと心に浮かんだ妄想がございます。みなもと 太郎氏の「風雲児たち 幕末編」を垣間見ますに 明治の世を迎えるまで本邦には友情と言うもの の確固とした概念が存在しなかったとか。四方 やすると稚児愛衆道又は野郎同士の交わりの中 からその情を知り、そこから友情とは何かを理 解した人も少数派とは言え居たのではないでし ょうか? 片や明治以降も所詮色情嗜好と割り切って森鴎 外の『ヰタ・セクスアリス』文中に描かれてい る書生の稚児趣味の如く、暴走した人も居るや も知れません。 いずれに優劣をつける心積もりは筆者にはござ いませんし、いずれも時代の求めた必然であっ たのやも知れません。 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ 末筆に蛇足を。明治から昭和初期にかけての一 部の若者の稚児嗜好というものは嗜み流行故に 行われたものばかりとは言い切れず、元々素養 の在った人が流行の様相を見て安心して、とい う事もあったのだろうと愚考しております。 その流行の様相を当世一部に見られる自称ノー マルな方の(性的な妄想の絡んだ)『お兄ちゃ ん願望』とダブらせて観るのは筆者の妄念がさ せる仕業でしょうか? ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて 戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 註1 おやまと訓じる。歌舞伎において女装する役者 を指す。往時の女形は女性としての躾嗜みも叩 き込まれていたとか。 ======================= 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 第二十一回 2004.7.31発行 文責:葡萄瓜XQO website:『仇花の記憶』 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/ mail:xqo_gm@yahoo.co.jp このメールマガジンは melma! http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00090840/ メルマガ天国 http://melten.com/m/14637.html Mailux http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533 Macky! http://macky.nifty.com/cgi-bin/bndisp.cgi?M-ID=xqo メルカップ http://www.melcup.com/cgi-bin/magazine/magazine.cgi?mag_id=M000000737 マガジンすきやねん http://www.sukiya-nen.com/sys/m.cgi?id=xqo のシステムを利用して発行させて戴いています。 ご意見ご質問等はWebサイトBBS http://bbs.infoseek.co.jp/Board02?user=bxqo にて承ります。 又連動BLOG「ショタやおい雑記」も運営しております。 http://blog.melma.com/00090840/ こちらも宜しくお願い致します。 バックナンバーはサイト内にて公開しております。 再配信ご希望の場合はお手数ですがメール若しくは BBSにてご用命戴ければ幸いです。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆