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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第二十三回  美意識
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
では、ゆるゆると雑談をさせて戴きましょう。

今年の秋、イタリアはヴェネツィアにてビエン
ナーレ(註1)と銘打たれた世界規模の催しが
開催されるそうです。日本もこの催しに参加す
る訳ですが、テーマが破天荒なのです。
『おたく:人格=空間=都市』(註2)と題し、
おたく文化の詳細な紹介を試みようと言う事だ
そうで…筆者にしてみると時代は変わったなぁ
と思わざるを得ません。
驚きはもう一つあります。この出展に際し「お
たくの美意識」なるものが提示されているので
すが、列記しますと『侘(わび)』『寂(さび)』
『萌へ』『ぷに』『へたれ』そして『やおい』
なのですね。
やおいがおたくの美意識だとは、筆者は初めて
耳にしました。その事について少し考えてみた
いと思います。

そもそも『侘』『寂』と言いますのは、主に茶
道、茶の湯で言う感覚でありまして同時に江戸
時代以前の日本文化の骨格の一部ともいえる感
覚です。そう言う感覚がおたくの文化と関係が
あるのか…接触点はあるかも知れませんが、美
意識として根付いているかと言えば、答えはNO
でしょう。おたくの文化と『侘』寂』と言う感
覚はむしろ対極にあるものと思われます。
やおいにした所で『侘』『寂』と言う感覚から
は遠い所にあるかと思われます。静寂内観を愛
する心と妄想で萌える心が一つの体に納まり得
る事は恐らく難しいでしょうから。
では何故此処で『侘』『寂』が導入されている
かと言うと…フジヤマゲイシャハラキリで知ら
れた日本の名残を喚起させようと言う計算の結
果ではないかと拝察します。若い人にはあとの
四語で充分日本を伝えられるかも知れませんが、
お年を召した方にはその作業は少々難しいかも
知れませんし。手っ取り早く申し上げれば欧米
の方向けの東洋趣味と言う所でしょう。これら
の『美意識』なるものも毛筆で書かれたという
体裁でサイト上にて公開されていますし。電脳
掛軸と言う様な感じでしょうか。

コミックマーケット+秋葉原+ネット空間で
『おたく』の概念を説明しようとなさっている
様子なのですが、どうも今一つピンとき難いの
ですね。そもそもそこに『やおい』を美意識と
して導入する意図が見えて来ない。やおいを前
面に出す様な展示内容も無いですしね。おたく
の一部にやおいもあるから取り上げてみようか
と言う軽い気持ちなのでしょう。これならまだ
カリフォルニアで開催されるYAOI-CON(註3)の
方が誤解も少なかろうと今から思ってしまいます。
こうなるとオンライン空間の取材がどこまで正
確なのかと言う事に期待を掛けたくもなるので
しょうが、一時が万事と言う事もあるかも知れ
ません。日本を紹介したつもりが却って日本に
対する誤解を深めるだけになりはすまいかと言
う懸念は、増すばかりです。

もしかするとこの企画展示が目指すものはOTA-
KUのサンプル確定なのかも知れません。
確かにOTAKU・HENTAI・YAOI・SHOTA等の同人関
連用語は世界レベルで通じる様になりました。
が、正確な用法まで同時に通じる様になった訳
ではありません。YAOI一つ取ってみても時には
GAYと混同され、時には同人活動を指す言葉とな
り又コスプレの代替語としても扱われていたり
するのです。
その語彙の混乱を是正する為に敢えて前時代的
な展示企画を展開して、OTAKUの基本概念を浸透
させようと言う試みが今回為されようとしてい
る、可能性があるかも知れません。
まあ、おたく文化の内部にいながら傍観者風に
今回の件を観ている者のほんの戯言ですよ。
今回の試みが成功してもしなくても、OTAKUの
美意識なるものは人々の心の何処かに刻まれ、
そして波紋やさざなみを起こすでしょう。
そして、新しい何かを生み出すのだろうと思い
ます。それを是か非かと判断するのはその時其
処にいるおたく≒OTAKUの子等でありやおい≒
YAOIの子等なのでしょう。

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
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註1
イタリア語で『隔年(一年おき)』の意味。芸
術祭の事を指す。隔年開催であるが、実質とし
ては芸術のオリンピックと解釈されている。
各地で『ビエンナーレ』、又『トリエンナーレ
(「三年おき」を意味するイタリア語)』と銘
打たれた芸術祭が開催されているが、ヴェネツ
ィアのものはその元祖と言う事で別格視されて
いるとの事。
本邦では2005年に横浜でトリエンナーレが開催
される運びとなっている。
→ http://www.jpf.go.jp/yt2005/j/index.html
ヴェネツィア・ビエンナーレ関連サイト(英文)
→http://www.labiennale.org/amicidellabiennale/

註2
公式サイト
http://www.jpf.go.jp/venezia-biennale/otaku/j/index.html

註3
公式サイト  http://yaoicon.com/
アメリカの『美青年屋』と言う集団がプロデュー
スして毎年行われている。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第二十三回 2004.8.31発行

文責:葡萄瓜XQO
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