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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第三巻弐拾回  小説「極楽時間」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

   極楽時間
              XQO

 時間潰しの為に万華鏡を覗いていた筈が、随
分と夢中になってしまっていたらしい。お陰で
我に帰った瞬間逆上せそうになっている自分に
気がついた。
 「帰ってきた?」
 ニヤリと笑いかける廉にハンと鼻息で返して
鞄を探る。タオルハンカチに替え靴下。湯上り
のポカリ一口も欠かせない。
 学校帰りの足湯と言うのも良いもんだ。温泉
も在るんだから一風呂浴びて帰宅と洒落込みた
いけど、それはそれで少し困った事になるから
なぁ。どうしたもんだろう。
 混浴なら却って大丈夫だと思う。日常生活の
延長だと思えるから。こう言う考え方から既に
間違ってるのかも知れないけど。

 「却って心地好いよね」
 「まーな。逆上せ注意だけど」
 「そりゃ噴水の縁じゃないんだし」
 「なんじゃそりゃ」
 確かに夏にはこの近所の噴水の縁に腰掛けて
水に足を浸して涼をとってたりするけどね。季
節としては足湯を味わうには良い頃合って事か。
暑くも無く一寸涼しくなり加減って所が。
 「水着なら茶目っ気も許して貰えるかな」
 「止めれ。俺が恥ずかしい」
 「内心やってみたいと思ってる癖に」
 「衆人環視じゃなきゃな」
 ま、恥ずかしいと言う言い訳は半分嘘。半分
の本当は勿体無いから。俺の事じゃなくて相方
の事。万が一の可能性も作りたくないしね。
 学ランを着てる時でさえ如何言う訳か虫は寄
って来る訳で。そう言う現実がある以上好まし
くない状況はできるだけ排除しておくに限る。
今でも実は内心穏やかじゃない。ふくらはぎと
か爪先とか、見慣れた部分なのに何故か観るの
が気恥ずかしくなっているから。恋と言うより
も明らかに変だよ、これ。
 かといってこう言う気持ちを知らなかった頃
に戻りたいかと言うと…なんだかなぁ…こう言
う居心地の悪さに快感を覚えたりもしているん
で始末が悪い。と、言うよりはこの居心地の悪
さを味わいたくて一歩踏み出した訳なんだから
もう見事なまでの自己矛盾。
 いっそ、次からは二人して半ズボンで来てや
ろうかな。二人で視線浴びた方が却って気楽そ
うだし。で、その方が虫を追っ払うにも直接行
動とり易いだろうし。

 「あ、爪伸びてる」
 「面倒臭いんだよな、足の爪って」
 「靴下穿くの、待てる?切っちゃうから」
 「はえ?」
 言うが早いか足首掴まれ膝の上、彼が片手で
鞄から探り出したはややごつめの爪切。
 「何でんなもん持ってんだよ!」
 「コンビニで買った。こう言う大きさが欲し
かったけど持ってなかったし」
 「そっとやってそっと!あぅあぅあぅ」
 「五月蝿いなぁ、もう。爪切程でなんで騒ぐ
かな」
 「怖いもんは怖いの!」
 「………お子様〜」
 鼻で笑われてしまった…よりにもよって相方
に。でも、怖いんだよな、マジで。足の爪って
切る加減が判らないから深爪して何度痛い思い
をした事か。
 「お湯でふやけてるんだから切り易くなって
んの。それで一寸は安心?」
 「…そりゃ、一寸は…」
 「まだ不安材料があるの?」
 「深爪は無しな?」
 「それ程判ってるつもりだけど?」
 体の向きを換えて相方の足は再びお湯の中。
その膝の上で俺の足が居心地悪そうにもぞもぞ
している。
 「逆上せる前にチャッチャとやっちゃうから」
 そういってニヤリとすると本当に素早くカバ
ー付爪切が爪の上を滑ってゆく。切断の瞬間の
軽い当たりは感じるにせよ、後の感覚は一切伝
わって来ない。足首には相方の掌の温もり。あ、
良い感じかも。
 「ほい終了。耳掻きもついでにする?」
 「…莫迦」
 立ち上がりによろけた振りして耳元で返事。
 「続きは俺んちで。どうせ来るだろ?」
 「もう一度温まってからね。万華鏡貸して?」
 改めて二人並んで足湯遣い。さりげなく指を
絡めながら、逆上せを口実に出来る様に。
               (了)

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。

少々外注の宣伝をば。
来る今週末の29日(日曜日)都立産業貿易セ
ンター・台東館七階にて行われるショタオンリ
ー同人誌即売会<ショタスクラッチ>カタログ
掲載のコラム『ショタコンのゆりかご』を書か
せて戴いております。イベント会場へのご来場
及びご高覧戴けましたら幸いです。
なお、同カタログは前売りもあるそうでござい
ます。詳細はイベント公式サイトまで。
※ショタスクラッチ公式 http://syotaratch.com/※

では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第三巻弐拾回 2006.10.25発行

文責:葡萄瓜XQO
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