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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第四巻拾六回  小説「夏、果てる」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

     夏、果てる
               XQO

 素麺さえも食えずくたばっている僕を心配し
てくれるのは有り難いんだけど、だからと言っ
て白くまが夕食だなんていうのは一寸なあと思
う。
 確かに白くまも嫌いじゃない。嫌いじゃない
んだ。ただお茶の時間か夕涼みの時に食いたい
んだ。僕の中じゃ夕飯時に許される冷たい甘味
って、精々心太の黒蜜掛け程度だしさ。第一、
白くまを僕が食べると言うのは、ある種共食い
になっちゃうじゃないか。わざわざ本式に作っ
てくれてるお陰で余計共食い感が増してるんだ
よね、これが。
 「それじゃルイベの方が良い?」
 「あるの?」
 「店にはある」
 「………問答じゃないんだから」
 「最近生鮭の良いのが入ってこなくてね。塩
のきついハラスが多いんでこういう時の料理に
困る」
 割烹着をまとった彼が苦笑を消せない様で戸
惑っている。だから、僕も溜息を一つ吐いて返
す。
 「じゃ、せめてヴィシソワーズ」
 「セロリ多目?」
 「かな」
 「じゃ、せめて食前代わりに一匙口に入れと
きな。それだけでも結構違うから」
 「うん」
 僕等の同棲が異種同士のものだと言うのに今
まで破綻しなかったと言うのは、彼のこういう
少しピント外れだけど僕を気遣ってくれる気持
ち故に、だろう。僕等の様なつがいの場合、彼
等の種族の方に負担が確実にかかる。だからな
るべく負担が少ない方法を執ろうと心がけるの
だけど、気を遣い過ぎると彼の方から負担を背
負ってこようとするのでそれも困る。
 『異種同士だって、恋愛じゃ五分五分でしょ
?変に気を回さないで』
 君の体格がせめて僕の半分ならね、と心の中
で突っ込んでみる。体格差で恋愛するつもりで
は無いけど、自覚してしまうと少し寂しい。
 せめて毛皮一枚の差でも埋められたらと思う
のだけど、それさえもままなら無いもんなァ。
いっそこの毛皮が着脱可能なものだったら良い
のに、と何某かの手を考えてしまう自分がいる。
 「こら。何考えてる?」
 「ん。色んな事」
 「問答返しですか、ほんとに」
 顔を覗き込まれて、不意に鼻っ面を咥えられ
る。
 「な!」
 「んー……チョイ渇き気味、か。鶏挽肉なら
食えそう?」
 「ヴィシソワーズに混ぜて?」
 「そう。本式じゃないだろうけどね」
 「もう少し細かめの方が良いかも」
 「心得た。あ、せめて腋に氷枕挟みなさいよ。
気持ち程度は違うだろうから」
 言いながら僕の布団周りを整えて又台所へと
立って行く。タフだよな、ホント。僕の種族の
方が彼の種族より肉体構造上タフな筈なんだけ
ど、その割に僕は彼にこういう面倒をかけさせ
る事が多い。
 …にしてもさ。今の変則キスは反則。変な熱
が出る元気は流石に今無いけどさ。三十近くな
った様なつがいが遣る事じゃないでしょ、ホン
トに。

 半時程経って、ベッド横のテーブルに載せら
れる硝子のスープ皿。彼の料理はかなり手早い。
仕事で慣れた故にか手順を幾つか同時進行させ
ているのでそういう事も出来るのだろう。ただ
本人曰く、寝かせておいた方が良い料理は矢張
り寝かせておくべきだとの事。彼の煮込みを食
うと確かに納得する。
 「ま、ゆっくりおあがり」
 「君は?」
 「少し涼んで、それから貰う。今だとこっち
の熱で温くなっちまうし」
 新聞指しから渋団扇を抜き取って遣う彼を見
遣って、ゆっくりとスープをすする。うん。確
かにこれなら入る。味付けも丁度良いし、喉越
しが冷たいのに腹の中に入ると温かい。
 「お代わり、出来そう?」
 「お蔭様で」
 「なら良かった」
 安心した様に笑ってベッドの端に腰を下ろし、
身を寄せてくる彼を出来るだけ引き寄せて、顔
を寄せて来た所で右手で遮る。
 「いきなり消耗させてどうするの。今日はお
預け」
 してやったり。さっきの反撃だよ。
                  (了)


○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第四巻拾六回 2007.8.25発行

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