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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第四巻弐拾四回  小説「炬燵で御二人様」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

  炬燵で御二人様
              XQO

 昔ながらの御節料理を作る人が居なくなった、
なんて嘆く声もあるんだろうけど生活様式が変
化した以上それは止むを得ない事だと思う。
 とは言っても平成になってから生まれた僕も
御節料理は好きだったりする訳で…好みはかな
り偏ってますけどね。それでも矢張り御節料理
らしいものが無いと正月を迎えたと言う気にな
れない。しかも始末が悪い事に重箱とは言わな
いまでもそう言う塗りの器に収まった料理で無
いと嫌だと言う我儘ぶり。幸い実家に居る時も
今棲んでるここでも重箱詰めのなんちゃって御
節料理を有り難く戴いてますけど。
 むしろ今の方が、ここに棲む様になってから
のここ数年の方が御節料理に使われる食材をき
ちんと食べている様な気がする。相方の食べさ
せ方が上手いのかも知れない。箸で掴むのが苦
手だった黒豆は甘納豆になっているし、殻を剥
くのが面倒で敬遠してた海老は素揚げ或いは丸
ごと煎餅になって殻ごと歯応え良く食べていら
れる。
 『好き嫌いで不健康な相棒と暮らすよりは工
夫の手間をかける方が良いやね』
 などと苦笑いされちゃった日にはね…嫌いで
すから食べられませんなんてとても言えない。
増してや食べるまでの過程が面倒ですから食べ
られませんなんて言った日には罰が当たる。だ
から食べる事が出来そうなものにはなるべく挑
戦してみると言う癖がついた。いざ食べてみる
とかなり嵌ってしまう食材もあったし。料理は
愛情なんていう物言いは結構真理なのかも知れ
ない。

 「八幡巻、牛ので良い?」
 「鴨!って言ったら贅沢?」
 「買えば贅沢」
 「じゃ、鴨で」
 「我儘だなぁ」
 「牛蒡を下拵えしてくれれば僕やるよ?」
 「……やっぱ俺やる」
 会話しつつ斎がざっと皿にあけたのは乾煎り
したねじり蒟蒻。少し休ませてからベーコンと
一緒に炊き合わせるんだそうだ。ベーコンを遣
うんなら大根とも炊き合わせるのもありだよな。
ベーコンの脂と醤油味ってかなり合うし。
 「そうそう。千枚漬は要るよな?」
 「紅白でしょ?要る要る」
 「あと買わないと無いものはなんかあったっ
け」
 「あ、鯖の棒寿司も欲しい」
 「……嵌りやがったな。バッテラ嫌いだった
のに」
 「別腹別腹」
 正月から色々な店が開いてるのが当たり前っ
て感覚はあるんだけど、そう言う店に行って普
通のものを食べるお正月って、なんかね。
  折角のお正月なんだからそれらしい物を食べ
たいという欲求は、矢張り僕にもある。遺伝子
に組み込まれた欲求なんだろうか?
 とは言うものの、自分で感じる味覚と伝わっ
ている味付けの差異と言うのは如何ともし難く
…好き嫌いとかそう言うのじゃなくて、上手く
言えないけど何処かが合い難いのだ。
 それが斎の味付け一つで克服出来てしまうの
だから現金なものだ。で、苦手が克服出来ると
欲が出てきて開拓が進む。その結果、苦手と思
っていた味付けも気がつくと食べられる様にな
っている。斎が作ってくれたものだという意識
があるから食える様になったのだとは思うけど。
 正直な話、威しつけられた部分も実は少しあ
る。苦手克服に対応する天秤の錘として行為の
一手間増加とかを賭けられて。今考えてみれば
それは斎なりのプレイだったのかもと思わない
でもない。不謹慎な思考だけど。でもそれで会
話が滑らかに進み、関係に退屈さを感じる事が
ないのだから良いと言う事にしておこう。爺む
さい考え方だけど健康面の補強もして置いた方
が関係の長持ちの為にも良いのだろうし。

 一通り料理も終わり、一風呂浴びて差し向か
いの食卓。四人掛けの正方形炬燵でも色々料理
を並べてみると二人で使うには手狭に感じる。
ま、良いけどね。今夜は仮眠時間までかけてゆ
っくり平らげれば良いと言う余裕あるし。
 差し向かいの食卓の肴は料理とまだまだ話し
足りないお互いの事。性急にぶつけ合うのでは
なく手酌の様にゆっくりゆっくり少しずつ。こ
れから長く差し向かいで居たいからこそのお互
いの結論だ。
 「今年の蕎麦は蕎麦湯付きな」
 目敏く空のコップに酒を注いでくれながら彼
がポツリと告げる、大晦日の夕。       
                                    (了)

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。
本年もお付き合い・ご愛顧戴き誠に有難うござ
いました。
明年も変わらぬご愛顧を戴けましたら幸いでご
ざいます。
では明年の次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第四巻弐拾四回 2007.12.25発行

文責:葡萄瓜XQO
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