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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第五巻四回  小説「独り双り」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

  独り双り
              XQO

 珍しいね。どういう風の吹き回し?まあ良い
から玄関で立ち話もなんだからお茶でも飲んで
いきなよ。
 …ああ、目敏いね。そう。その写真の右が相
方。前と同じ人に見えるって?当たり前じゃん。
同じ人なんだから。
 嘘だろって言われてもさぁ…本当の事なんだ
から嘘言っても仕方ないでしょ?うん。もう付
き合い始めてから十年にはなるのかな。お宅と
知り合った時にはもう付き合い始めてたもんね?
知るかよ!ッて冷たいなぁ…お宅が話を振って
きたんじゃん。
 ……ゴメン、嘘ウソ。お宅が余りに吃驚した
んで惚気で中てつけてやりたくなってさ。こう
いう惚気ってオープンに出来る様でまだまだし
難いんだよね。お茶請けの草餅に免じて許して
よ。え?塩昆布も欲しいって?丁度良かった。
会社のお歳暮のお裾分けで良いのが入ったんだ。

 十年って改めて考えると長いもんだよね。僕
も自分で確認して改めて驚いた。男同士が同居
せずに十年関係が続いてるんだよ?凄くない?
 …ああ、まだ言ってないよね。うん。同居し
てないよ?週に二回程どちらかの家に通ったり、
月に一度旅行に出たりって感じ。それ程のリズ
ムが今一番良い感じかなぁ。肉体の回復度から
考えても。
 ナニよその顔。何か男同士の関係で変な風な
情報ばかり先行してない?僕と言うサンプルが
身近にいながら、そう言う男ってのは性の部分
で特殊とか言う風な事を本気で考えてはいない
よね?
 ぶっちゃけ、性衝動だけ宥めるんだったら独
りでも充分でしょ。衝動から色々加わった欲に
発展してきたら何らかの過程は必要だけど。そ
れに、感情の確認の為に肌を合わせる事を強要
するのもなんか違うって感じしない?お互いが
きちんと求め合っての上なら良いけどさ。
 そう言う押し付けから生じる御一人様の自乗
恋愛もどきって嫌なんよね、僕達。どうせ二人
で過ごすんなら丁度良い頃合の暖か味を確保で
きる程度が良い。
 ってねぇ、何言わせてるんだよお宅は!男同
士の惚気を聞いて寒い気分になりたいなら今か
ら小一時間とっくり耳元で語ってやろうか?え
ーい!期待で目を輝かせるんじゃない!このウ
ツケモノが!
 ………何も用事無いならこのまま居座る?今
日は相方も来る日だしさ。色々話すのも良いじ
ゃん。ついでに泊まって行けば?部屋数はある
からもしも…の時には何とか出来るだろうし。

 一人で居るのって、冷静に考えてみるとそん
なに寂しくない事なんだよね、実は。元々…男
女の関係であっても最初は独りから始まる訳で
しょ?で、関係性が出来て行って輪が広がる。
お宅ともこうして話してるけど、元は友達の友
達の友達だった訳じゃない?ダイレクトに友達
になった訳じゃなくてさ。
 独りがしんどくなるってのはさ、他人との関
係に利便性を感じてしまって以降からなんだよ
ね。その利便性の中に多分不本意ながら温もり
も含まれるんだろうけど。
 僕にしたって最初からこういう風に落ち着い
て考えられる様になったんじゃないしね。こう
いう考えに落ち着くまで衝突もしたし自分独り
でも考え込んだ。二人で居る息苦しさを感じて
しまうとさ、なんか悪循環に陥る人が多いみた
いね。二人で居るから息苦しいんだと言う事実
から目を背けて二人でいる時間が足りないから
おかしいんだと変に意固地になって密着を増や
して、余計に息苦しくなる。一足す一を一にし
たい世界、って言うのかな。それって、凄く狭
いよね。濃厚は濃厚だけど。
 二人で居るって事はそうじゃなくて、一足す
一は二で更にお互いのプラスアルファを足して
行く事じゃん、って判ったら凄く楽になった。
僕の知らない相方の世界があった方が楽しいか
も知れない、って思える様になった。独りでこ
つこつ何か構築しといてさ、さあどうだ!って
見せ合いっこするサプライズがあっても良いじ
ゃない。

 あ。お帰り。うん、来てるの、あいつが。今
日泊まって行く?って誘っちゃったけど、良い
よね?事後承諾でゴメン。

 『幸せ?』
 『ああ、とても。こういうペースになって惚
れ直してるしな』
 台所から聞こえる静かなざわめき。暖かい宴
は、もうすぐ始まる。ゆっくりお相伴と行こう
か。            (了)

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第五巻四回 2008.2.25発行

文責:葡萄瓜XQO
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