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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第五巻拾八回  小説「二人寝の風景」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

  二人寝の風景
              XQO

 目が覚めるといきなり視界が真っ暗だった。
すわ何事かと慌てかけ、瞼の上の感触に気付い
て苦笑する。
 疲れが酷くてすぐに疲労回復したいと目枕を
使ったのは自分自身。それを失念する程疲れて
いるのかね、全く困ったもんだ。
 で、そう言うときに隣から少しやかましい寝
息なぞ聞こえてくるとヤットコなんぞ持ち出し
たくなる訳だ。この野郎俺だけ消耗させやがっ
て幸せそうに寝てんじゃねえよと。でも実行に
移せない。この寝顔の愛らしさはかなり卑怯と
言うものだ。
 流石に今日は素肌の腕枕なぞ貸して無いが、
必要とあらば体の随所を枕に提供している身。
惚れた弱みとは言え一寸献身し過ぎでないの?
と自分にツッコミを入れたくなる時もある。第
一体格で言ってしまえば疾うの昔に自分の方が
こいつに寄りかかっても良い感じのバランスに
なる様に逆転されてしまっている。頭一つの身
長差が対等になったと思うと頭二つ離されてい
た。そう言う奴なのに寝顔が可愛いとは卑怯こ
の上ない。実年齢の差を考えれば納得は出来る
が矢張り理不尽だ。
 だからといって惚れた弱みを年齢差による虚
勢で埋め合わせようなんて不毛な考えを実践す
る心算は更々無い。割れ鍋に綴じ蓋の様な感じ
に近付いたと思えばそれで充分。心身ともに支
えて貰っている機会も確かに増えているし。
 そう納得した上で癪に障る事があるとすれば
だ。無茶を通したいが為に可愛げを振りかざす
のは反則だって事で。無理を通すんならこっち
は無条件に後押しするが、無茶遣ってとり遺さ
れて泣き暮らすってのは堪ったもんじゃない。
心配六割エゴ四割の正直な気持ちだ。
 あ、後もう一つ。……つーかこれもエゴの領
域ではあるよな。自分好みに育った抱き枕を今
更手放すなんて惜しくて堪らないんだ。自分好
みに育てたって自負もあるから余計にね。これ
程の男に釣り合う奴が居るともそうそう思えな
いし。はっきり言って惚気以外の何物でもない
けどね。
 それにしても五月蝿い寝息だな。多分何時も
と調子は変わらないんだろうけど、今日はこっ
ちのコンディションが下降気味な所為で五月蝿
く聞こえる様だ。この寝息を子守唄代わりにし
て熟睡する日もあると言うのにな。神経の芯が
凝り固まってるのかも知れない。もう一寝入り
した方が少し優しくなれそうだ。淋しいけど一
人寝で。

 目が覚めるとベッドの上の空間が人一人分空
虚だった。実家へ帰る日じゃないよなと思い返
しつつ視線を彷徨わせるとソファの肘置き越し
に頭が見えている。一人寝の方が落ち着く状況
だって事か。じゃ、悪い事しちゃったな。こっ
ちが事の後にソファで横になって置くべきだっ
たのかも知れない。いや、むしろそう言う不埒
な事をしなさんなって事だろうけど。
 判ってる心算なんだけどね。こっちが元気で
も相手が元気じゃない時があるって事は。最初
は感じていなかった年齢の壁の存在を年追う毎
に感じて居るし。たかが七歳されど七歳。出会
った時はこっちも餓鬼だったし相方もまだまだ
初々しかった。若さの相乗効果かどうか知らな
いが文字通りぶつかり合って色々越えて来た感
じ。
 とても有り難かったのは、相方が俺の事を一
貫して年下扱いしなかった事。どんな場合でも
対等の相手として扱ってくれたお陰で必要以上
の引け目や遠慮とは無縁で居られた。俺に色々
不足してる分きちんと下駄を履かせてくれたけ
どその代わり必要以上に甘やかされもしなかっ
たから強くあろうと必死になったけどね。
 そう言う過程があるからこそ、相方を甘やか
したいという気分を持てる様な俺になれたんだ
と思う。それは、感謝だな。
 うん、まあ。
 この状態で俺がやる事って言ったら呆然と一
人寝する事じゃない訳で。かと言って相方の横
に無理やり添い寝する事でもない。ナイトテー
ブルの中の常備食って、今どうなってるんだっ
たっけ。

 二度寝の目覚めは、玉蜀黍の香りで齎された。
インスタントの奴に別売りのパウダーを加えて
濃い目にしたか。全く好みを突いてくれる。
 「おはよ。スッキリ?」
 「まあ、はっきり」
 「それは何より」
 火をつけようとした煙草を横に避けて笑いか
ける年下の男に、ゆっくりと感謝のくちづけな
ぞしてみる。     
                 (了)


○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第五巻拾八回 2008.9.25発行

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