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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第六巻拾四回  小説「ねもふぃれま」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

    ねもふぃれま
                          XQO

 「奇遇だね」
 まさかと言う気持ちで声のした方を観ると、
見覚えのあるツラが在った。
 「な」
 「ひょっとしたら呼ばれたのかな」
 相手が飄々として居るのでこっちも感情を荒
げるのが段々アホらしくなって来る。そう言う
可愛げの無い所が変わってないってのはホント
に始末が悪い。
 「他の連中は?」
 「サア?あれから会ってないし」
 「マジ?」
 「マジ。結構皆時間差があったから、こう言
う偶然は無いと思うけど?」
 「そっか」
 「僕等はほぼ同時だったけどさ」
 そう言われて改めて記憶を探る。ああ、確か
にそうだ。皆は出て行くと同時にてんでばらば
らに旅立ったけど俺達は一緒に出て行ってから
暫くつるんでいたんだっけ。ま、最後の出発組
だったってのもあるんだけどさ。
 「ったくよー。お前がいつまでも離れないか
ら」
 「中々離れなかったのはそっちだろ?ガッシ
リしがみついちゃって」
 な…よく言うぜこいつ。しれっとした顔でな
に過去を捏造してやがんだよ。
 で、抗議しようとしたら互いに仏頂面を突き
合わせる事になって、瞬時に噴出してしまう。
 「最初と最後が一緒だなんてさ」
 「んだな」
 どうやらここで短い様な永い旅が終わりだと
言う想いは一緒の様だ。だから今更最初の後先
に拘っても…と言う気分になったのはお互い様
らしい。

 生まれて最初の記憶は七人押し合いへし合い
して一本の綱に繋げられてた事。よくよく観れ
ば隣近所にもそう言う光景があったのでこんな
ものかと納得した。
 まあ、押し合いへし合いと言っても密着して
いた訳では無い。静止した状態で互いに接触し
ないで済む距離だけは辛うじてあった。
 俺達は七つ子、と言うには余りに外見がそっ
くりだった。むしろクローンが七体集まった様
な状態だったのかも知れない。だからと言って
思考までそっくりだった訳ではなかった。表だ
った順列こそは無かったが、それなりの気構え
は互いにあったと思う。
 その中で俺とこいつは互いに対等だと思って
いたらしい。下の方で二人固まり気味でつるん
でいたから尚更そうだったのだろう。物心つい
てから暫くは密着するのを楽しんでいた様な覚
えが微かにあるし。
 そんな日々の中、綱に繋がっていた同類が一
人減り二人減り互いの絆が少しずつ頼りないも
のになって行った。いつかは旅立つのだからと
判っていても、感情と言う奴はどうしようもな
い駄々っ子な訳で。
 だから自然に口に出していたのだと思う。
 『暫く、一緒にいない?』
 お互い一字一句同じタイミングで口を滑らせ
たと言うのは…そう言う事なのだろう。
 それからのつるみ方は結構濃厚だったと思う。
遺伝子の構成が似ているのだから兄弟然と振舞
えばそれで良かった筈だ。しかし俺達の寄り添
い方は正直、そこをとっくに越えていた。遺伝
子を残す、と言う意味で体を重ねる事がなかっ
ただけと言う関係にまでなっていたと自覚は有
る。
 だからあの日、俺からこいつの手を離した。
 こいつの遺伝子を残せないなんて、そんなの
嫌だったから。贔屓目なのかも知れないけど、
こいつの方が多分俺より染色体五本分は優秀な
筈だし。

 「あったくよー」
 「なんだよいきなり」
 回想を終えた後、とりあえず小突いておく。
俺が思い切って身を離したってのになんでこい
つは最後の最後で俺の元に帰って来やがります
か。見た様子だと遺伝子を残す事すらしてない
んでしょうが全く。こう言う状況が予測出来る
ならあんな思いをしてまでこいつの手を引き剥
がす事なんてなかったってのに。
 「どじ踏みやがって」
 「仕方ないだろ?そっちがこの近所を離れよ
うとしないから」
 「へ?」
 「人から離れるんなら、未練がましくうろう
ろしなさんなっての。全く世話が焼ける」
 口調は飄々。でも顔を背けながら絡められた
指は…。なんだ、こいつも同じ気持ちだったの
か。そっか。
 だからもう人目を憚らず抱きつく事にする。
二人でなら怖い事なんてもう無いし。
                 【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。

ここでしばし喧伝を。
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★
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★
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★
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第六巻拾四回 2009.7.25発行

文責:葡萄瓜XQO
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