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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第七巻弐回  小説「充満する空虚」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

  充満する空虚  
                          XQO

 みっしりはちきれんばかりになったビニール
袋から湧き水の如く次々取り出される靴下を傍
から見つつ、彼の手際の良さと執着心に僕はつ
い目頭を押えてしまった。感動故に?いや、困
惑故に。
 男の癖に買い物云々とか早合点するのは了見
が狭いってもので、実際は男の買い物の方が結
構細かくてみみっちい。その上肝心のものに対
する投資を理由もなしに省こうとした上で自分
の好悪を判断材料にした口実付の買い物をする
ので気をつけなければ何所かで躓いてしまう。
いやそう言う細かさに捉われない豪胆な旦那の
買い物をする御仁もいるけど、残念ながら僕自
身そう言う人物と直接の知り合いになった事は
無い。
 相方の買い物と言うのは関西のお母んだった
御婆様の仕込みだそうな。が、残念ながら僕は
「ああ、あの御婆様ならなぁ」…とは思えてい
ない。明らかに彼自身の解釈によるアレンジが
様式に施されているからだ。
 確かに御婆様の買い物術は見事だった。詰め
放題でも格段の収穫を毎回得てうちが御裾分け
を戴いた事も数回ではきかない。しかしながら、
決定的に違う部分がある。それは御婆様は引き
際を心得つつ詰め放題を愉しんでいたと言う事
だ。詰め放題なのだからそりゃ幾ら詰め込んだ
所でそれは購入者に許された権利ではある。し
かし、傍から視て合法か非合法か迷う様な合間
の裏業を駆使してまで自分の欲を満たす詰め放
題に興じる姿はどうにも美しくない。欲を満た
すにしてもそれなりの様式美はきっとある筈だ
から。
 …まあ良いか、靴下なら。少なくとも腐って
無駄になる様な事は無い。サイズ違いのものが
あってもそれなりに分け渡す場所もある。とり
あえず前向きに事後を考えておくとしよう。使
用済みの靴下なら趣味人でもない限り確実に始
末に困るのだろうけど。

 今僕が置かれている環境は贅沢な部類だろう。
中々巡り会えないだろう同性の相方がいると言
う時点で既に相当な贅沢だと思う。同居してい
るのだから贅沢度は更に上がる。  
 更に言えば職場環境もそれなりに良い。少な
くとも二人の関係について理解不能な咎め立て
をする人はいないのだから。先入観から物言い
をつけられることがないではないが、人間良く
したものでこちらが淡々と説明する限り、相手
に聞く耳があれば自然と解決に向かっている。
相方と出会う前と出会って直後辺りはしんどか
ったな。喧嘩腰でものを言うのが正しいと思い
込んでいたから兎に角何時も怒っておかなけれ
ばいけないと肩肘を張って疲れ果てていた。な
んの事は無い。壁にボールをぶつけてた様なも
のでこっちが喧嘩腰であればある程相手も頑な
になって、そして物別れしか解決策が見つから
なくなってしまう。
 その八方塞がりに糸口をつけてくれたのが相
方とその御母堂だ。但し本人達は…今にして想
像すると…相当にしんどかったかも知れない。
僕の言う事を肯定しつつ時にやり込めるという
高等技術を常に要請されていただろうから。
 だから、と言う訳ではないけど。
 相方がこう言う趣味の詰め放題に興じる姿を
何らかの形で容認する事が自分の責務なのかな、
と思ってしまう事はある。美意識云々と世間の
通念を適用しつつも依存せず、と言うのが簡単
な様で難しいとお手上げになりそうになるが。
 こういう許容の仕方は不遜なんだろうか。実
際の所良く判らない。二人で悩める様な恋愛を
一つでもして居れば対処策の一つや二つ思い浮
かぶのだろうけど。生憎どういう形ででも自己
完結する様な関係にしか寄りかかって来なかっ
たものだから、どう言う風にすれば自分にとっ
ても相手も取っても一番円満になるのかが判ら
なくなっている。弱ったものだ。

 「一寸良い?」
 「何?」
 「俺の手元の金、暫くそっちで管理してみて
よ」
 「つまり、小遣い制度にするって?」
 「ま、ね。人から歯止めを掛けて貰うのも情
けないけど、お前さんなら良いや」
 口調とは裏腹に憑物が落ちた様な照れ笑い。
 「じゃ、そうするけど。良いの?」
 「良い。心のメタボは二人で落とした方がき
っと上手く行くから」
 全くね。ドサクサ紛れにどう言う口説き文句
言ってんだか。お言葉に甘えて過去の分も含め
てきっちり締めさせて貰おうか。異存はないよ
ね?       
                  【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第七巻弐回 2010.1.25発行

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