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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第七巻拾八回  小説「どっとはらい」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

  どっとはらい
                  XQO

 暗黙の了解と押し付けとは違うよな、と最近
しみじみ思う。まあこれが仕事の上ならなんと
か飲み込みもするんだ。相手は俺じゃないし俺
も相手じゃない。分身じゃない以上感覚が完全
に共有される訳も無い。
 しかしだな。仮初にも人生の半分は一緒に歩
いてきた奴に同じ様な態度をとられたら流石に
カチンと来る。即座には切れないけど、燻るも
のは確かに残る。
 せめて一言でも良い。アクションでも良い。
何かあったらそれで総てOKに出来るんだ。つ
まり俺がバトンを確かに受け取ったよって事に
なるんだから。受け取ったバトンは落っことさ
ない自信はあるしさ。
 でも、バトンをこっちと思しき方向に放り投
げた後でニュアンスで了解しろってのは流石に
無理。血の繋がった家族でもそれをやれたらカ
ミホトケの領域なんじゃないの?
 まあ、良いや。足を止めてても事態は好転し
ないから。停滞で気分最悪を待つ程なら循環さ
せて好機を待つ方が遥かにましだし。
 とは言うものの、何も意思表示しないっての
も癪だからと言う事でここ暫く奴さんとは必要
最低限の遣り取りしかしない事にしている。あ
とは返事を求めらない限りひたすら沈黙。世間
で求められる男のイメージとは相当に違った態
度だろうという自覚は充分過ぎる程ある。静か
なストレスが溜まる行動でもあるんだけど、も
う少しで気が済みそうだから継続はする。爆発
前に気が済むのかどうか、自分に幾らか掛けた
くなってくると言う訳判らん楽しみも生まれて
きたし。

 どうやら気がつかない内に相方の地雷を全く
の力加減無しに踏んでしまっていたらしい。で
も多分何を言ったとしても今の段階じゃ言い訳
にしか聞こえないんだろうな。一言に込められ
た意味を曲解される恐れもあるし。
 何も自分の事を丸ごと受け容れて理解してく
れと言っている訳じゃない。十中八九認識した
上であとは察してくれと言うつもりだったんだ
けど、それはNGなんだろうか?今までそれで
通じたのに今更目くじらを立てられてもなと言
う怒りならこっちにもあるぞ?
 良いんだけどね。彼がそう言う理解不能な所
に地雷を発生させるのは何も今回に始まった事
では無い。思い返せば馴れ初めの頃にもかなり
の地雷があった筈だ。それを無かった事に出来
たのは肉弾戦を解決策に用いていたからだろう。
じゃあ今でも肉弾戦を解決策に用いれば良いじ
ゃないかと短絡したいけどそうも行かない。刺
激になるから解決策の代用に用いられるんであ
って、日常の延長ならばむしろ余計な心理戦を
生み出す因になるだろう。全くもって厄介だと
思う。
 ……折れるかな?今回も。膠着状態を解き解
すのは今までこっちの役割だったし、相方を疲
れさせてまでこの状態を続けるのは正直趣味じ
ゃない。
 男同士だからこそ微妙な間合いが必要な時も
あるんだと今更ながらに思い知る。相方との衝
突を繰り返す中で会得した感覚だ。面倒臭くは
あるけれど、でもそう言うのもひっくるめて相
方相手じゃないと恋心が作動しないのだからど
うしようもない。恋抜きでの肉弾戦による発散
なら他の相手とも出来なくは無いけど、後がし
んどいから。心身ともに。
 相方との関係に慣れてしまっている以上、そ
れ以上の冒険をやろうとは思えないしね。

 目の前にそっと見慣れない上書きをした封筒
が置かれる。俺達の日常にはとんと縁の無い…
でも世間には何かと縁のありそうな…。
 「えーと…何のつもり?」
 仕方が無いから敢えて訊く。訊いてから再び
制限付無言行を続けても良いだろうし。
 「何と言うか、夢の共有?」
 「はァ?」
 「つまり…二人の間にだな…変な形の象徴は
残したくないと言うか…その、なんだ…」
 言葉に詰まりまくっている様子が面白くて相
槌は敢えて打たないけど言いたい事は多分判る。
つまり即物的な解決策は避けてくれた訳ね。そ
う言う事を考えてくれる程度には想ってくれて
るのか。そうか。
 で、言葉をどうしても探せなくて終いにはパ
ントマイム始めそうな奴さんの手を柔らかく握
る。
 「う?」
 「中古の型落ちなら、即決で良いからさ」
 「ちょ…それならリフォームの方が」
 「それは一日掛けて掃除してくれたら何とか
なるんじゃない?」
 「そうか?」
 また考え込んでしまった奴さんに苦笑しつつ、
宝くじ50枚入りの袋を撫で回す。外れろと念
じつつ。        
                 【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。
ここで二件喧伝を。
以下の枠組みで人前で喋らせて戴く仕儀と相成
りました。

「腐男子なう@CAFE801」
2010年10月2日(土曜日)開催
会場:CAFE801【カフェハチマルイチ】
料金:2000円(ワンドリンク付)
タイムスケジュール
開場:16時・開演:17時・終演:19時
終演後22時まで店内貸切の自由時間
出演者:吉本たいまつ / 黒猫ゆうすけ 
ぶどううり・くすこ
お時間頂戴出来れば幸いです。

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CAFE801(カフェハチマルイチ)

〒170-0013
東京都豊島区東池袋3-10-6
加藤第6ビル2階

http://cafe801.org/

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また筆者インタビュー掲載同人誌「腐男子にき
く。2」及び「腐男子にきく。」の通販が編著者
・吉本たいまつさんのサイトを中心に展開され
ております。こちらもよろしくお願い致します。

Re-Ionisation http://www.picnic.to/~taimatsu/

では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第七巻拾八回 2010.9.25発行

文責:葡萄瓜XQO
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