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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第八巻弐拾回  小説「十三里の末」
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**第七巻弐拾号より横幅を
         若干拡げて配信しております**

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3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震(東北
大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い申し
上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出
来ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の
潤いに繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

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  十三里の末
                XQO
                                
 秋になると吾ながら呆れる程に焼芋が恋しくなる。
自分だけかと思っていたら連れ合いもそうであるら
しく、子供時分は学校帰りに八百屋に寄ってそれか
ら焚火をしている所を探して紛れ込ませて貰ったと
言う。うちの方では焚火を探すよりは焼芋屋台を待
つ方が早かったと言うとそいつは楽で良いじゃない
かと言われた。
  いやいや他人が思う程待つのは実は楽じゃない。
蒸気笛が聞こえてから屋台を捉まえるタイミングを
一瞬逃すと実はその日は買えなかったりする。焼芋
を買う為にわざわざ自転車に乗って屋台を追いかけ
ると言うのも滑稽な話だし。
  と返すと確かに最近は楽になったねぇ、と満悦顔
で返される。うん、仰せの通り。コンビニでも程好
い焼き加減の芋を買えるのは実に良い。気持ちがさ
さくれ立ちそうに疲れた時なんて特に。連れ合いの
挙動よりも芋の甘味の方が遥かに癒し効果が高い場
面だってあるのだし。それを真正面から言うと連れ
合いは俺は焼芋以下かよと盛大に拗ねる。だからこ
のセリフは口喧嘩の後少し距離を置きたい時に発動
させる事にしている。
  「さて、どうしようね」
  「どうしようもこうしようも…食えない?」
  「詰め込む事は多分可能、かな。後の事を考えな
ければ」
  「ああ、そう言う事ね。…微妙だな」
  「美意識では許せる?」
  あかん、撃沈してしまう。美意識を持ち出される
と一切反論出来ない。
  それにしても見事にかち合ったものだと思う。二
人して二本ずつ焼芋を買って帰るなんてね。まあ、
互いに珍しい焼芋を見つけてしまったんだから仕方
なかったのかも。片や紫芋。片や安納芋。いずれも
八百屋には並んでも焼芋としては珍しいと思う。せ
めて一本ずつなら健康な証だから思い切って食べよ
うと言う事になるのだけど…だってほら秋の夜長は
永いから。
  「おめざに回すとしても半分が限界かなぁ」
  「まあ、ねぇ」
  但ししっかりと焼いた焼芋には利点がある。それ
は冷めても美味いと言う事だ。芋の種類にも因るけ
ど電子レンジ単独利用の加熱ではそうはいかない。
あれはあくまでもその場で食べる為か下拵えの為の
加熱だ。
  「ここまで綺麗に焼けてるとそのまま食べないと
失礼な気がする」
  「同感」
  焼芋を眼前にして溜息を吐く野郎二人。これが男
子と言える程度の器量持ちなら絵になるんだろうけ
ど世の中そうは甘くない。第一当人達が困る。少な
くともオレは連れ合いの現在のバランスを好ましく
思っているから。連れ合いもそうだと確認した事は
ないがそう思ってくれているのだと言う希望的観測
は持つ様にしている。些細な好みの違いは互いにあ
るのだけど価値観の大同小異があるから飽きる事無
く寄り添えているのだろう。正直連れ合いだけしか
見ていなかったと言えばそれは嘘になる。連れ合い
だけ見る事が出来る様になったのはしっかり自覚し
て以降の話だ。
  と、しょうもない事に頭を痛めつつ連れ合いを見
ると何故か表情が柔らかい。
  「何よ?」
  「ん?平和だなぁ、と」
  「こう言う事で悩めるのが?」
  「三年前じゃ悩めないネタなのは確かだね」
  ああ、確かにね。本格的に付き合い始めた頃はこ
う言うネタで悩む余裕が無かった。自分達の中の砦
を護る事だけ考えて自分達で修羅場を作ってしまっ
ていた。互いの価値観の良い所を見出す余裕も無か
ったし。そこを超えてきたから今日の甘みもあるの
かねと思い直すと少し救われる思いはある。
  「不埒をしなけりゃ許容範囲、かな?」
  「自信は?」
  「正直心許無いけど、多分大丈夫じゃない?」
  「微妙ではあるね」
  「内面から健康を整えるのも一歩だと思うけど?」
  我田引水な遣り取りなのはお互い承知の上。こう
言う駆け引きを楽しめる様になったのも時間の作用
なんだろう。
  「それにだな」
  「ん?」
  「冷めても美味い器量とは言え、熱い内に喰わな
いと折角焼けてくれた芋に失礼かな、と」
  「ふむ」
  ああ、そうか。焼芋と恋心は似た様なものか、と
突然に思う。熱くなくては歯が立たず、冷めれば味
わいが落ちる。でもそこを上手に過ぎる事が出来れ
ば…などと考えつつさてと一口。        
                    【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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以下6月10日配信号より継続の事務連絡にて。

配信スタンドが5箇所から4箇所となりました。
これは1箇所の運営形状変更に伴うものです。

また、website『仇花の記憶』が移転致しました。
これはCOOLサーバ運営終了に伴うものです。

以上、奥付の通りよろしくお願い致します。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第八巻弐拾回 2011.10.25発行

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