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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第八巻弐拾四回  小説「鬼の穿きもの」
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**第七巻弐拾号より横幅を
         若干拡げて配信しております**

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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に
出来ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の
潤いに繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
第八巻最終配信であり小説配信回、お楽しみ戴ければ
幸いです。

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 鬼の穿きもの   
                   XQO
                                
 無駄に五月蝿い人の口を全部塞ぐ事が出来れば一
番楽なんだろうけど、そうもいかないのが俗世と言
うもので。だから自覚して以降諸々を割り切れる様
になるまでさほど時間を掛けずに順応する事が出来
た。その反面、悩んで停滞してる時間さえ勿体無い
と思う程に逆上せていた一面もあったと言う事は認
める。
  だから総ての精算の為に君を鬼に見立てて豆撒き
をするのは俺にとって整合性のある行動なのだと言
う事を認識して欲しい。そしてそうさせたのは誰な
のかと言う事も。
  
  「……脱がなきゃ、ダメ?」
  「でないとアウトじゃない?」
  「それならせめて室温設定の改訂を希望したい!」
  「それはダメ。条件を緩くする事は不可」
  哲の口調は静かであったが揺らぐ気配はない。実
に涼やかなものだ。それに対して篤史の背負う空気
はかなり重たい。哲の駄目押しにはからずも瞳を潤
ませ…四捨五入して三十路の男子としてはアンバラ
ンスな様子になっている。
  「そもそもさ」
  哲が淡々と畳み掛ける。
  「君はこの始末の方法を提示したのは誰だったか
を忘れてはいないよね?」
  「……俺です」
  「それを聞いた上で渋った僕をしつこく説得した
のは誰だっけ?」
  「それも、俺」
  「まあ、君は最初から自分の有利さを信じて疑わ
なかった様だけどさ」
  親指に載せたコインを軽やかに跳ね上げて受け止
め、哲は人の悪い微笑を浮かべる。
  「こう言う単純なギャンブル程、使い慣れた道具
でやらないと大火傷するんだよね」
  「……お前、慣れてたの?」
  抵抗する気も失せたのか、篤史が今まで出した事
も無い様な薄暗い声で問いかける。
  「舞台に立とうとは思わなかったけどね。まあ一
通りは覚えた」
  「理論は万全、ってか」
  「経験則からの確率論だけどね」
  「じゃ、負けても仕方ないか」
  わざとらしく割り切った様子を見せた篤史と先程
の余裕とはうって変わって気まずそうな空気を纏っ
た哲。でもお互い、それを一瞬の事として賭けの始
末を付けている。付ける事にする。
  
  まあ、八つ当たりからの発案なんだから上手く運
ぶ筈はないわな。
  篤史は哲に聞こえない様に独りごちて、躊躇なし
に一糸まとわぬ姿になる。哲の視線は感じない。何
時もの如くで巧妙に視線を逸らしているのだろう。
でも、そう言う如才のなさが腹立たしくなる事だっ
てある。例えば哲の男のそういう扱い方、とか。
  だからさっきみたいなささやかな反撃を折ある毎
にしてみる訳だが、正直後味は悪い。篤史が回答と
して欲しいのはどう言う事であれ事実の証言であっ
て、哲の困惑顔ではないから。
  でもそれはある意味仕方のない事でもある。哲と
篤史ではこう言う方面の恋愛において明らかにキャ
リアの差があるのだから。
  いっそ自分にも某かの過去があったなら、とは折
にふれ思う所。でも実際そうなっていたなら哲と穏
やかに過ごす日々は成立したのだろうか、とも考え
てしまう。
  「……もう少し冷静に選ぶべきだったな、うん」
  特注でないのが不思議だと我ながら思ってしまっ
た虎の毛皮模様のボクサーブリーフを前に篤史は今
更ながらに苦る。哲に穿かせる事だけ想定しただけ
に余計に。
  想い余っての戯言と押し切るだけの強引さがこう
言う時に欲しい。プレイと言う言葉で片付けられる
程醒めてもいないので。
  尤もそう思っているのは篤史だけでなく哲も同様。
哲の場合意識して滅多に口に出さない様にしている
から余計濃厚になる。そこはそれ篤史の気にする年
季の差と言う奴だ。経験が優越感に繋がる事もあれ
ば足枷めいたものに感じてしまう事だってある。で
も経験に因って想いに曇りが生ずる訳でもない。
  まあ今年判らずとも来年にはきっと判っているに
違いない。鬼が笑う様な憶測を今日と言う日にする
のも皮肉なものだが、そう言う風に縁も歳月も深ま
ってゆくものなのだろう。
  とりあえず今の問題はこのボクサーブリーフの穿
き心地だ。サイズ的には多分問題ないのだが布地的
に若干の不安がある。少なくとも耐久性は考慮に入
っていないだろう。次は自分の運も折り込んで考え
よう、と篤史はしみじみ思い、鬼パンツを履いた。
                  【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。年明けて第九巻壱号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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以下喧伝です。

ニコニコ生放送「BL夜伽ラヂオ」
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
2012年1月5日(木)21時(午後9時)開始
毎週木曜日21時開始の30分ひと枠で毎週一人の作家
さんについてあれこれ思い出語りをさせて戴きます。
通年で50人を取り上げる予定です。
詳細は上記ニコニコミュニティまで。
出演:黒猫ゆうすけ+ぶどううり・くすこ(筆者)

お時間があれば、よろしくお願い致します。

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以下2011年6月10日配信号より継続の事務連絡にて。

配信スタンドが5箇所から4箇所となりました。
これは1箇所の運営形状変更に伴うものです。

また、website『仇花の記憶』が移転致しました。
これはCOOLサーバ運営終了に伴うものです。

以上、奥付の通りよろしくお願い致します。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第八巻弐拾四回 2011.12.25発行

文責:葡萄瓜XQO(ぶどううり・くすこ)
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のシステムを利用して発行させて戴いています。

ご意見ご質問等は上掲メール宛、若しくはサイト内
設置メールフォームよりよろしくお願い致します。
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公開しております。
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