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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第九巻四回  小説「晩春」
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**第七巻弐拾号より横幅を
         若干拡げて配信しております**

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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に
出来ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の
潤いに繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

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   晩春
                XQO
                                
 「羨ましい?」
  不意に耳元で囁かれて背筋を硬くする。常日頃人
目が世間体がと今のご時世に似合わない程煩い奴が
珍しい事をするもんだ、と心の隅で思いつつ返事を
する。
  「ん?何が?」
  つねり上げた手の甲の痛みを微笑みながら堪えて
いる様子は賛嘆してやろう。しかしだ。不意の囁き
で背筋に走ってしまったこの感覚の落とし前はどう
してくれる?
  「お二人様を見守るオヒトリサマとはこれいかに、
ってね」
  更に深くなった微笑に対し、何も言い返せなくな
る。読まれちまったか。
  「ユニット売りなんてあるのかな?」
  「あるにしても前提がいるんじゃない?」
  「だよねえ」
  「第一、逆に多すぎるよ」
  「人数?」
  「年齢」
  「………悪い。その発想はなかったわ」
  「そう?」
  言い返すべき言葉が……駄目だ探せない。
  「お一人様をうちのと組み合わせてってのも座り
が悪いしねぇ」
  「まだ言うか。つかうちのって実家?」
  「各種サイズありってんだからヤになるね」
  「マトリョーシカでしたなんてオチは?」
  「だったらまだ洒落っ気もあるんだけどねぇ。な
んか入れ代わり立ち代わり贈られて来ちゃったみた
いで」
  「小金持ちだね」
  「解体収納出来なきゃ大型ゴミと紙一重だって」
  「そんなもん?」
  「種明かしするとだな」
  「うん」
  「姉貴の雛飾り、普段は箪笥だ」
  「……よく纏まったな」
  「屋根裏用の階段利用という手も考えたけどな…
…って何処まで話がずれるんだ?」
 ずれたままにしておいた方が、平和だと思わない
か?
  
  昔程ではないにせよ頃合いになると節句人形の宣
伝というのはまあ盛んになる。時々に応じた特設売
り場が完全に無くなるという状況は今の所僕らの周
辺にはまだ訪れていない。
  で。僕らと便宜的に言ったがこの二人、つがいで
はない。同類項の腐れ縁という奴だ。ただしN極同
士の。だから二人で居てもお一人様同士という訳だ。
  間違いが起こらないかと問われれば全面否定はで
きない。正直理性抜きで対峙して一線を超えそうに
なった瞬間は幾度かある。でもいざとなると理性と
何かが二人を押し留めると言う事もまた繰り返され
ている。
  僕はと言えば一線を越える事に対して実は抵抗が
ない。彼の人となりは友人としてよく承知している
のでパートナーとしてもそこそこ相性は保てるだろ
うと踏んでいる。彼が本心ではどう思っているかま
ではまだ察知出来ていないが一応は憎からず思われ
ているという確信もある。
  いっそ間違いが起こる様に積極的に企んでみよう
か。そうすれば…結果はどうあれとりあえずの進展
はあるかも知れない。
  ……餓えてる訳じゃない筈なんだけどな。お互い
過去にはそう言う相手も居たし、心まで必要としな
い相手なら今とりあえずは探せる。にもかかわらず
隣にいる奴に食指を動かしているというのは自分で
も正直解せない。さっきのからかいの所為か?
  
  「さっきは、ごめん」
  腹拵えにと寄ったラーメン屋でつけ麺と格闘して
いると、いきなり頭を下げられる。
  「はい?」
  「隣に人がいる気配につい浮かれてね。出来れば
忘れて」
  「ああ、さっきのあれね」
  「そう、あれ」
  「季の迷い?」
  「だと、思いたい。そっちの為にも」
  「へ?」
  もう後は言葉にならない様で耳を赤くしながらお
しぼりの袋を矢鱈と弄っている。え、一寸待って。
つまりそのなんだという事?我田引水な解釈で良い
んだろうね?
  「とりあえずさぁ」
  出来るだけ世間話をする調子で初めての芝居をし
てみる。
  「ホームセンターに後で行かない?鍵の予備、作
っておきたいんよ」
  さあ、裏を読んでみやがれ。
  「あ………良い、よ?」
  明後日の方向から、小さな返事。
                    【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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以下喧伝です。

ニコニコ生放送「BL夜伽ラヂオ」
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
2012年1月5日(木)より開始・現在進行形
毎週木曜日21時開始の30分ひと枠+αで毎週一人の
作家さんについてあれこれ思い出語りをさせて戴き
ます。通年で50人を取り上げる予定です。
詳細は上記ニコニコミュニティまで。
出演:黒猫ゆうすけ+ぶどううり・くすこ(筆者)

お時間があれば、よろしくお願い致します。

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以下2011年6月10日配信号より継続の事務連絡にて。

配信スタンドが5箇所から4箇所となりました。
これは1箇所の運営形状変更に伴うものです。

また、website『仇花の記憶』が移転致しました。
これはCOOLサーバ運営終了に伴うものです。

以上、奥付の通りよろしくお願い致します。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第九巻四回 2012.2.25発行

文責:葡萄瓜XQO(ぶどううり・くすこ)
http://xqo.ooh.jp/mag/
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http://www.marine.ne.jp/mm/user.asp?id=75297

まぐまぐ
http://www.mag2.com/m/0000270330.html

のシステムを利用して発行させて戴いています。

ご意見ご質問等は上掲メール宛、若しくはサイト内
設置メールフォームよりよろしくお願い致します。
http://xqo.ooh.jp/mag/form/

バックナンバーはサイト内及び各配信スタンドにて
公開しております。
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