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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
☆
第九巻拾弐回　　小説「累積厚情」
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＊＊第七巻弐拾号より横幅を
　　　　　　　　　若干拡げて配信しております＊＊

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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
（東北大震災）にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に
出来ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の
潤いに繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

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　　累積厚情
    　　　　　　　　　　　　　　ＸＱＯ
                                
　ごくごく自然な動作で伝票をひったくられつい思考
停止してしまう。情報処理が追いついたのは会計が済
んだ後のレシートを見たその瞬間だ。
  「ずりぃぞ」
  「はん？」
  「とぼけんなよ！ほら！ここ！」
  「……ああ、それね」
  「それねじゃねぇだろうが、ったくヨォ」
  「まあまあ」
  俺が咎め立てたのはレシートの末尾に示された個人
情報プラスアルファ。まあ、俺の言い分が難癖に近い
のは自覚してるから認める。実害らしい実害はないし。
  ただ、ただだな、ポイント大量獲得のチャンスを横
から鳶に油揚げよろしくかっさらわれるというのが正
直面白くないだけで。
  「次回借りを返すと言うので、どう？」
  「そう言う貸し借りなら無しな？」
  「じゃなくってね…実は今ので丁度プランＢまで到
達したんだわ」
  「ああ、そう言う事」
  「焦る余りに一寸姑息になった。悪い」
  「……プランＢは狙ってた訳ね？」
  そっぽを向きながらも耳を真っ赤にして頷く佑を見
てそれなら良いかと溜飲を下げる。
  「もうすぐ十年だから良い頃合いではあるよな？」
  豆鉄砲食らった顔に笑いかけながらしっかり恋人繋
ぎ。
  「不安がるなよ。もう不安じゃないから」
  「あ、そ」
  あくまでもそっぽは向く訳ね。まあ良いけど。繋い
だ手の加減で機嫌が読み取れる程度にはこっちも慣れ
てるし。
  「プランＢならまあ気軽かな」
  「そうかもね」
  「十個揃えてうんたらかんたらって、ねぇ」
  「そうそう、始末に困る」
  身一つでも自信持って寄り添える関係になったから
ここまでサバサバしてるのかも知れない。何かの約束
を担保にしてなんとか安心していた頃ならなにか縋る
目に見える印が欲しかったかも知れない。
  それに正直な所残り時間の配分だってある。
  世間的に見ればお互い未来よりは過去の方が多くな
っている層にそろそろ近い身だ。そういう身だから薄
ぼんやりとではあるけれど墓の向こうに何を持って行
けるのか現実的に考える。
  で、いつも行き着く答えとしては心ひとつしかない
だろうって事になる訳だ。川を渡る舟代だって自分で
持って行ける訳ではないだろうし。
  どっちが残るかという話は却って不毛だからしない。
残るにしても行くにしても心の何処かが閉じる事に変
わりはないから。
  だから心を満たす・潤す様な事には敏感でありたい
と思っている。
  件のポイント景品・プランＢは移動手段も選択式の
一泊旅行だよな。ツアーバス形式なら自腹を切った方
が早いから眼の色をそうそう変える事はないが一から
旅行を組み立てると言うのも気分の余裕がないとしん
どくなってきた。だからそう言うある程度お任せに出
来ると言うのはかなり有難い。
  そう言う事なら思い切るか。
  「ああ、そうだ。ちょいとクロユースに寄り道」
  「珍しいな」
  「ポイント溜まってるからな。パンツとシャツ二組
分程度は」
  「ほうほう」
  「無論、選択肢付きだ」
  余録は愉しめる時に愉しんで置くとしよう。止むを
得ず堆積するものを効率良く御破算にする為にも。
  共犯者めいて笑い合える愉しみだって発生する。遣
うタイミングは、とても大事だ。
  
  「どうしたえ？」
  「何が？」
  「目尻の皺。いつもより随分増えてると思って」
  「ああ、思い出し笑いだ」
  「どの件だえ？」
  「プランＢの件」
  「ああ、あれか」
  そう返す顔も随分皺だらけになって、とまぜ返して
もスルーされるので止めておく。なんだかんだ言って
二人の仲もアルミの関係から銀の関係を経て真珠の関
係まで進化した訳だから当然といえば当然だろう。
  あの頃感じた一抹の不安も今は愉しみに出来る。二
人で過ごす時間を何処まで愉しく更新できるか。これ
は時間がくれたポイントの様なものだろう。悪くない。　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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以下喧伝です。

ニコニコ生放送「BL夜伽ラヂオ」
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
2012年1月5日（木）21時（午後9時）より開始。
毎週水曜日19時開始の30分から1時間の枠で毎週一人
の作家さんについてあれこれ思い出語りをさせて戴き
ます。
通年で50人を取り上げる予定です。
詳細は上記ニコニコミュニティまで。
出演：黒猫ゆーすけ＋ぶどううり・くすこ（筆者）
3月度以降は暫しお休みを戴いておりましたが、4月度
より再開致しました。過去放送は記録動画として再録
させて戴いております。
また5/23配信時より配信予定が毎週木曜21時開始から
毎週水曜19時開始に変更されております。
何かのお肴にして戴ければ幸いです。

お時間があれば、よろしくお願い致します。

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以下2011年6月10日配信号より継続の事務連絡にて。

配信スタンドが5箇所から4箇所となりました。
これは１箇所の運営形状変更に伴うものです。

また、website『仇花の記憶』が移転致しました。
これはCOOLサーバ運営終了に伴うものです。

以上、奥付の通りよろしくお願い致します。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第九巻拾弐回　2012.6.25発行

文責：葡萄瓜XQO（ぶどううり・くすこ）
http://xqo.ooh.jp/mag/
mail：xqo_gm@yahoo.co.jp
連動BLOG「ショタやおい雑記」
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まぐまぐ
http://www.mag2.com/m/0000270330.html

のシステムを利用して発行させて戴いています。

ご意見ご質問等は上掲メール宛、若しくはサイト内
設置メールフォームよりよろしくお願い致します。
http://xqo.ooh.jp/mag/form/

バックナンバーはサイト内及び各配信スタンドにて
公開しております。
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