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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第九巻拾四回  小説「夏の駆け引き」
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**第七巻弐拾号より横幅を
         若干拡げて配信しております**

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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に
出来ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の
潤いに繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

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  夏の駆け引き
                XQO
 
  枕草子の削り氷のくだりを読んでときめかなかった
のはどうも僕だけではなかったらしい、と判ったのは
つい先日の事。
  二人用には手狭になった冷蔵庫を買い換え、自動製
氷皿に出てきた氷を二人して眺めつつ(何しろお互い
そう言う便利さとは無縁の一人暮らしが長かったし、
変に物持ちも良かったから。)しみじみと哲が吐き出
した一言がきっかけだった。
  「これだったら貼りつかねぇよな」
  「へ?」
  「へ?って…氷作った事無いんかよ」
  「そこまでズボラだと思うか?」
  「思う」
  「即答するなよ」
  「否定出来るんなら即答しないよ?」
  「蒟蒻問答かよ」
  「あの蒟蒻はなぁ、冬向けだよな」
  「いやそう言う問題じゃないだろ?」
  「そう言う問題だよ。こう言う氷で刺身蒟蒻冷やし
たら美味いだろうなと思ってさ」
  「うん。たしかにそう思う…じゃなくって!」
  「んだよ?」
  「氷が貼りつくって、どう言う事よ?」
  「だからァ…氷舐めると舌に貼りつかないか、って」
  「あー、あるねー」
  「製氷皿もたまに貼りついたりしてさー」
  「はい?」
  「え?貼りつかない?製氷皿」
  「イヤイヤイヤ、それはないでしょうよそれは」
  「イヤイヤイヤイヤ、貼りつくって」
  以下イヤイヤだけで会話する事およそ三分。しかし
聞いた事も体感した事も無い状況に対して肯定の意な
んぞ示す事は出来ないよなと思いふと閃いた。
  「その製氷皿ってさ、どんなのを想定してる?」
  「そりゃあんた、アルミのレバー付き」
  それだ!
  「アルミのレバー付きって何時の時代の製氷皿よ?
今時売ってないでしょ?」
  「そうだっけ?うちには有ったけど」
  どうやら哲の物持ちの良さは遺伝で受け継がれたも
のらしい。確かにあのご家族の環境ならその辺のもの
が現役で利用されていても何ら不思議はない。相当上
手に使ってたんだろうな。
  あ、そうか、だからか。
  「何ひとり合点してんの?」
  「いや、僕が製氷皿買ってきた時のあんたの反応思
い出した」
  「なんかしたっけ?」
  「いや、なんか随分不思議そうに撫で回した後で合
点してたからさ。ああ、そう言う事だったのかと」
  「うん、まあそういう事」
  「やっと話が繋がった」
  「あー。まあ良いけどな」
  そして氷を一欠片含む。
  「ふん、ひひはんひ」
  「味気ないんじゃない?」
  「蜜でもあるの?」
  「ホットケーキシロップなら」
  「そこはメイプルシロップにしようよ」
  「んー、なんかね、やだ」
  「なにかあった?」
  「他愛もない早合点だよ。同じ植物の蜜だからあま
づらの代用になるかと思ったら肩透かし食らった感じ
でさ」
  「ああ、削り氷ね」
  「うん」
  「俺はあの新しき金鋺ってのがなんとなく苦手だっ
た」
  「製氷皿のせい?」
  「多分ね」
  「じゃ、玻璃の器ならどう?」
  「良いかもね」
  「あまづらは…流石に無理か」
  「人海戦術が使えればね」
  「じゃ、キシリトールで」
  「…ツッコミは入れないよ?」
  「うん、入れないで」
  哲ってこんな可愛気も持ち合わせてたんだ。新発見
だな。
  「ま、ね、かき氷器を買いますか」
  「手動で良いからな」
  「家庭用なら電動もそんなに変わらないよ?」
  「まあなんとなく、な」
  そして緩やかに凭れあう。外気温よりお互いの人肌
の方が涼しく感じるってのも変な話だけど、自然だか
ら仕方ない。
  とりあえず一眠りしたら一揃い買い揃えて楽しみに
備えてみよう。一つの思い込みから開放された事でも
あるし。さて、新しい扉は開くのかな。
                    【了】

○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

○●○

以下喧伝です。

ニコニコ生放送「BL夜伽ラヂオ」
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
2012年1月5日(木)21時(午後9時)より開始。
毎週水曜日19時開始の30分から1時間の枠で毎週一人の
作家さんについてあれこれ思い出語りをさせて戴きま
す。通年で50人を取り上げる予定です。
詳細は上記ニコニコミュニティまで。
出演:黒猫ゆーすけ+ぶどううり・くすこ(筆者)
5/23配信時より配信予定が毎週木曜21時開始から毎週
水曜19時開始に変更されております。
過去放送に関しては大方記録動画として再録しており
ます。何かのお肴にして戴ければ幸いです。

お時間があれば、よろしくお願い致します。

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以下2011年6月10日配信号より継続の事務連絡にて。

配信スタンドが5箇所から4箇所となりました。
これは1箇所の運営形状変更に伴うものです。

また、website『仇花の記憶』が移転致しました。
これはCOOLサーバ運営終了に伴うものです。

以上、奥付の通りよろしくお願い致します。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第九巻拾四回 2012.7.25発行

文責:葡萄瓜XQO(ぶどううり・くすこ)
http://xqo.ooh.jp/mag/
mail:xqo_gm@yahoo.co.jp
連動BLOG「ショタやおい雑記」
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このメールマガジンは
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http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533

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http://www.marine.ne.jp/mm/user.asp?id=75297

まぐまぐ
http://www.mag2.com/m/0000270330.html

のシステムを利用して発行させて戴いています。

ご意見ご質問等は上掲メール宛、若しくはサイト内
設置メールフォームよりよろしくお願い致します。
http://xqo.ooh.jp/mag/form/

バックナンバーはサイト内及び各配信スタンドにて
公開しております。
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