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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾巻四回　　小説「これでおしまい」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
（東北大震災）にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

　　　これでおしまい
                              ＸＱＯ
                              
　奴は卒業式を始まりにしたかったのかも知れない。
でも僕はあの頃から卒業式を終わりにするつもりでい
た。そもそもの馴れ初めが馴れ初めだ。僕にとって卒
業式とは最初から二重の意味で解放と言う意味合いを
持つ行事でしかなかった。
  
  学生服は色々と染み込んだものが多過ぎるので式の
後にその足で焼却処分しに行く予定。体操服やその他
一式の衣類と履物類も同様の手配をしてある。他人に
譲る？まさか！色々染み込んでしまったものだ。人の
障りになる可能性が限りなく大きいものをそう言う風
には扱えない。焼き払ってしまえば馬鹿馬鹿しい再利
用もされないだろうし心持ちの消毒にもなるので一石
二鳥だ。
  自身の処遇はもう決めてある。あくまでも前向きな
方向で。奴以外のとりあえずの未練やしがらみも一応
整理した。根回しと言う程のものではない。ただ予定
を可能な限り隙間なく構成しただけだ。
  で、こっちが水面下で彼是巡らしている間に奴は何
をしていたか。少なくとも表面上では何もしていない。
でも、今までの経験則から考えれば水面下で動いてい
る事もきっと無いだろう。そう言う奴だ。そう言う点
では御し易い相手だと言える。
  体を開く事と心を開く事は安易に等号では結ばれな
い。そうなる為の要素は上手く言語化出来ないがきち
んと存在していて、目敏い人はちゃんと見出して活用
している。その点で言えば奴の目は節穴だったと言う
事だ。もっともそう言う男を結果的にとは言え選んだ
僕の目の方がそれ以上の節穴なんだろうけど。まあ良
いや。その補填は多分これから少しずつでも出来るだ
ろう。僕に学習能力さえきちんと備わっていれば。正
直自分でも現時点では自信が無い。だからと言って現
状に甘んじる心算は無いけど。
  
  一方的な気持ちから恋愛が成立するなんて言うのは
思い込みも良い所の御伽噺だ。そう言う状況下でも成
立する恋愛は他の条件に補足されていると言う事を多
くの人は見過ごしている。
  毎度毎度伝わる体温の心地好さに紛れてついつい決
断を先送りにしてしまっていたけど、上手い具合に自
宅待機と言う冷却期間があったお蔭で感情の源泉を見
直す事が出来た。
  うん。奴と二人で過ごす、と言う未来予想図だけは
無い。断じて無い。卒業式で総て御破算と言う選択肢
に間違いは無い。
  絆されてしまったからここまで付き合ってきたけど、
元来僕は一途な人間ではない。どちらかと言えば尻軽
と言われる方な人間だ。そう言う人間が奴の泣き顔を
見るのを厭うが為にここまで付き合ってきたのだから
かなり上等な部類かも知れない。冷静になってみると
何故絆されたのかと言う決定打が全然思い出せない。
その事実に率直に愕然とした。なんてこった。決定打
が無いと言うのならば完全に惰性でかなりの時間を浪
費したと言う事になるじゃないか。泣き顔云々と言う
のはあくまでも結果論であってその解答を導き出す前
にさっさと撤退する事も可能だったと言う事か。これ
は大きな禍根でもあるが同時にこれから奴以外の人間
と他の関係を構築する為の留意点にもなる。損したが
元は取れたと言う事なのだろう。
  さて、内面の整理は完全に済んで気持ちの上でのリ
ハーサルも済んだ。後は実行本番を待つばかりだ。
  演出方法に暫し迷いはある。魅力的な手法をつい色
々考えついてしまって全部試したくなってしまうから。
ほぼ丸々と言って良い学園生活の時間を奴の為に消費
させられたのだ。その為の意趣返しはどうせなら効果
的なものにしたいと思うのが人情ってもんだろう。
  こう言う局面に至ってまで奴の事をあれこれ考える
僕に対して多分世間は言うだろう。矢張り愛していた
のかと。愛か。愛ね。だったらもう少し話は簡単だっ
たと思う。むしろこの感情は独占欲に近いかも知れな
い。手放す事に惜しむ気持ちは無いが他者に再利用さ
れる事に対しては愉快な気持ちになれない。手放して
も僕のものであったと言う事実を主張しておきたいと
言う感じだろうか。
  そう、僕のこれだって立派に一方的な感情だ。だか
ら愛情の基盤になんかなりっこない。それでも身も心
もやつしてしまう。執着には執着で返してけりをつけ
てやれと言うほくそ笑みとともに。
  さあ、もうすぐおしまいに出来る。おしまいにした
らようやく何かが見えるのだろう。おしまいにした上
で見えるものならば、もしかしたらもしかするのかも
知れない。あくまで仮定だけど。　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【了】

〇●○

此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。次
号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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以下喧伝です。

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筆者【ぶどううり・くすこ［葡萄瓜XQO］】の独り
体制になっての再開しております。

2月27日　第15回r「京山あつき」※記録欠番対応
3月6日〜 第27回「高将にぐん」より順次配信再開。

今後の配信時間：
毎週水曜日21:00（午後9時）頃〜

お時間が合いましたらお立ち寄りください。

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第拾巻四回　2013.2.25発行

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