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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾壱巻六回　　小説「怠惰は甘く」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
（東北大震災）にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

　　　怠惰は甘く
　　　　　　　　　　　　　　　　ＸＱＯ
                                
　久々の寝坊に慌てて台所に行ってみると、一仕事終
えた風情で聖がマグカップを抱えていた。
  「おはようさん」
  「悪い。寝過ごした」
  「ああ、まあいいやね。今日に限っては」
  何時になく優しいもんだと思っていたら視線の先に
はカレンダー。ああ、日曜日か、なんだ…ってぇ！
  「慌てなさんなって」
  「日曜だから慌ててるんだって！」
  「ご心配の件なら二分前にメールが来たよ。中止だ
そうな」
  溜息ひとつ。そして珈琲一口。
  「ま、たまには何も考えずに珈琲を飲む朝ってのも
良いんでないか？で、何にする？」
  「クッキー。思い切り甘い奴」
  「あいよ」
  どうせなら思い切り怠惰に過ごしてやろうと腹を据
える。フレンチトーストにブルーベリージャム山盛り
ってのも悪くなさそうだ。
  「そう来ると珈琲はブラックの方が良い訳ね」
  「いや、甘くしたいかな」
  「おやお珍しい」
  「ま、たまにはね」
  「確かにね。たまにはね」
  定期健診まではまだ間があるからね、と胸の内で呟
いて怠惰の為のガソリンを補給する事にする。
  珍しい事は重なるもので何時もはインスタント珈琲
を寄越す聖が今日は何処から引っ張り出したのやら手
廻しミルで豆を挽いている。いや、このミルはあれか。
部屋の飾り用にと言う事でたまたま貰った奴だったか。
まさかこう言う時に役立つとはね。
  「ほんとたまたま珈琲豆を買ってさ」
  「偶然？」
  「だね。保管を考えてないのに買う予定なんて立て
られないし」
  「それもそうか」
  「折角炒った豆を冷凍庫に大量に放り込むのは、許
せる？」
  「あー、勘弁してほしいね」
　「御馳走は美味しい内に、ってね」
  そう言う事なら甘くするのも野暮ったいかなと思っ
たが早いか何時も遣いでは無い小さなカップが差し出
される。
  「ブラックをどっちで飲むかはお好みで」
  その後何も言わないでくれるのは、結構助かる。
  
  珈琲をじっくり舌から喉で味わいつつ爪先を伸ばす。
どうやら随分凝り固まっていたらしい。そんなに忙し
かったかなと思い返してみると静かに一言。
  「急がなくて良い朝は、多分半年振りかな」
  「そんなになる？」
  「少なくとも二人の生活パターンが変わってからは
ね」
  「そっちは今早急無し？」
  「ないね。納期はあるけど珈琲を淹れる程度の余裕
はある」
  「さり気なく大変じゃない？それ」
  「スケジュール管理をすると言うスキルはきっと必
要だね」
  しれっと言いつつボウルを引き寄せる。どうやらこ
こでフレンチトーストの下拵えをするつもりらしい。
  「これも甘めだったっけ？」
  「しっかりね」
  「黒糖遣ってみようかな」
  そう言いつつ黒糖もテーブルの上にあるのだから用
意周到と言うしかない。
  「そこはプロの味に頼るのもありじゃない？」
  「その為に出て行くのがめんどくさい」
  へろりと言ってぺろりと舌を出す。
  「自分の怠惰なんだから好きな様に取り扱って過ご
して良いんでない？」
  お説ごもっとも。
  「それにだな」
  「？」
  「二人きりで過ごすのが何時振りだと思ってる？」
  言われてあらっと額を押さえてしまう。そう言えば
最近夜もすれ違いがちで同居しているにも拘らずひと
月まともに二人で過ごしてないわ。
  「だから一秒たりと無駄にしない為にずぼらします」
  はい、文句はありません。
  ま、二人きりなら脳内花吹雪だろうが何だろうが甘
ったるく過ごしてれば良い訳で。そう言う事ならテー
ブルの上にある品だけでとりあえずもう少し粘ってみ
るか。多分口直しも潜んでいる筈だから。
　　　　　　  　　　　　　　　　　　　　　【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号まで、御機嫌宜しゅう。

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また、2014年1月より『BL夜伽ラヂオ』第二期を配信
致します。

BL作家紹介放送「BL夜伽ラヂオ」
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第二期第6回放送は3月26日（第四水曜日）配信予定です。
お題は『吉田秋生』。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾壱巻六回　2014.3.25発行

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