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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾壱巻拾弐回  小説「白涼の行方」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

   白涼の行方
                XQO
                                
 「あれ?無いなぁ…」
  台所から聞こえる呟きにソラおいでなすったと苦笑
する。だから毎度毎度言っとろうが。自分で消費した
分は自分で補充しておけよと。
  とは言え放置し続ける程悪趣味でもないので一通り
探し終えたなと言う頃合いを見計らって声をかける。
  「流しの下のストック、見てみ?」
  「んあ?ああ、ありがと」
  集中力があり過ぎるのか天然ボケなんだか。いずれ
にしてもその一点を可愛げと認識して受け容れてるこ
っちにも責任の一端はあるよな。
  「確保、いつも悪いね」
  のそのそと定位置に座りつつ不意打ちの言葉を投げ
るってさ、おい勘弁しろよいきなり雷雨なんて布団干
してる時に余りに殺生だぞ?やっとチャンスが到来し
たんで匂い抜きも兼ねて干してるんだかんな?
  「まあ、ついでだし?」
  「ついでであそこまで見事におつとめ品で埋め尽く
すかね」
  「そりゃ、趣味だから」
  確かに定価でも良いんだけどね。でも必需品の域を
少し超える物なら同じ予算でなるべく多目に確保出来
ると嬉しい訳で。
  「いっそ、仕込む?」
  「品質が維持出来るならね。そこはプロ任せが良い
でしょ」
  「それもそうか」
  実際有難い世の中になったと思う。夏でも甘酒が飲
める環境が整ったのだから。品質的にも、流通的にも。
  そしてなし崩しに色々あったよなと回想して…つい
思い出してしまった馴れ初めの諸々。そうかあの時も
甘酒絡みかよと思うと流石に因縁じみてげんなりして
しまう。そりゃ季節は違ったさ。でもこうも色々続く
とね。
  
  二人で、と意識して夏を過ごす様になってから数え
上げてみればもう八年だ。それ以前はお互いが風景の
様なものだったけど、そこから数えると更に長い。
  二人の夏の風景に甘酒が登場したのは多分二年目辺
りからだ。世間で言われている様な健康上の効果狙い
じゃなくて、本当に偶然。甘酒が夏の季語だなんて事
も後付けで知った。
 それが今では欠かせない習慣になっているのだから
本当に判らない。僕等の関係性よりある意味不透明な
事柄かも知れない。
 実のところを吐露すると、二人で居る事を自然に受
け入れてはいるがじゃあこれが恋愛の類なのかと問わ
れると返事に詰まる。彼奴にしても多分同じ様なもの
だろう。
  なんだかんだと発散を伴ったスキンシップは実際あ
る。でもそこからなぁなぁグダグダになるかと言うと
不思議にならない。余韻を味わわない訳ではなく、引
き摺らないと言う感じなのだろうか。大波が来てから
さらっと日常に戻ってまた次の波を待って…と言うの
が正確な所かも知れない。こう言うのも恋愛関係なん
だろうか。
  少なくとも、他の相手とこう言う事はきっと出来な
いだろうと自覚している時点でそうなのかも知れない
な…ととりあえず自分を納得させてみる。言葉と関係
性に酔って何もかも放り出せないから。白い液体で消
耗した体を白い液体で癒していく日々が続くとしても。
  
  買い置きされた甘酒の紙パックを眺めつつ思いを巡
らせる。
  そう言えば二人で初めて飲んだ甘酒はカップ酒スタ
イルの奴だった。そう、まだ季節限定の雰囲気が濃厚
だった頃だ。そこから何となく流れで色々…とかなり
ありきたりなアレだと思うけど、なんだろう、空気に
酔いながらどこか素面になって空想の手順をお浚いし
てる感じ。
  あっちはどうか確認した事はないけどこっちは物心
ついた時点で多分こうなる事を予測していた。少なく
とも隣にずっといる様になるだろうと言う辺りまでは
ほぼ確信していた。
  だからなんだろう。貪りつくさないと安心出来ない
と言う感覚にとんと無縁なのは。浸っているけど酔っ
てはいない。惰性とも多分違う。その辺は多分体の相
性が良いアクセントになっているのかも知れない。
  こう言う風に緩やかに続けて来れたのもきっと相性
の為せる業なんだろう。そして気持ちの句読点の一つ
として甘酒があったからかも知れない。
  来週辺り一緒に買い物に行こうかな。過剰に増殖さ
せるつもりもないけど、たまには二人で彼是と新しい
切り口を探すのも刺激になって良いかも知れない。そ
う言う句読点だって、きっと必要だ。
                    【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号まで、御機嫌宜しゅう。

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また、2014年1月より『BL夜伽ラヂオ』第二期を配信
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第二期第13回放送は本日6月25日(第4水曜日)配信予
定です。お題は『柳沢ゆきお』。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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第拾壱巻拾弐回 2014.6.25発行

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