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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾壱巻弐拾回  小説「嫌いじゃなくて」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

****

御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

   嫌いじゃなくて
                    XQO
                                
 その一瞬の躊躇いに気付いたのは、偶然じゃなかっ
たと思う。少なくとも予兆はあった。
  「…駄目、かな?」
  「…多分ね」
  「そか。仕方ない、ね」
  「残念ながらね」
  バツが悪そうな笑顔になんだか申し訳なくなる。元
はと言えばこっちの我儘で始まった話だと言うのにそ
う言う顔をされた日にはどうすりゃ良いと言うのか。
  「どうすんの?」
  「そりゃ、対処するしかないでしょ」
  「だよね」
  「お付き合い願える?」
  「もちろん」
  「じゃ、とりあえず舞阿見倶楽部ね」
  「へ?」
  「あそこなら大抵あるでしょ」
  「チョイ待ち!サイズを把握した上で言ってる?」
  「はい?」
  あかん。この顔は本気で判ってないわ。
  斯くて僕はさりげなく揃いの軽いマグカップを買う
には何処が良いだろうかと考える羽目になるのである。
普段遣いの品だからこそ一寸だけ良いものを心掛けな
いとたまに心が折れる。それにデザインの良さも加わ
っていれば千人力なんだけど。
  
  二人暮らしを始めた頃はマグカップにそうそう気を
回す事なんて無かった。気を回す程の選択肢が無かっ
たと言うべきか。マグカップのデザイン自体大量生産
向けの画一的なものしか無かったから、その中でもこ
れならOKと言うもので納得するしかなかったと言う
のもある。そう言う状態だからさり気なく揃いにする
なんて事も出来る筈が無く、何時しか無地の色違いで
行くと言う暗黙の了解が出来ていた。それでもまあ取
り違えはあったけど、そこまでの潔癖症でも無かった
ので特に荒ぶる事も無く過ぎた。
  そしてもう一つの今との大きな違い。二人とも若か
った。本当に若かった。同棲始めたのが諸事情により
高校在学中だったから金が無いと言うのが前提にあっ
たし。だからマグカップは色々重宝した。そう、たと
えクソ重くても。重さと値段を天秤にかけて値段を選
んだ事なんて数えきれない。遣い回せるものは幾らあ
っても損にはならない。一方で再利用したらとんでも
ない事になるものだってあるのだから遣えるものはし
っかり遣い回して往生させないと。
  と、若さに任せて色々突っ走った頃を遥か彼方に感
じる様になってン年近く。気持ちはそれなりに若いが
如何せん筋肉もそうかと言うとそうではない。それな
りにしゃっきり暮らすにはある程度譲らなければいけ
ない部分だって出てくる訳だ。幸い世間も進歩したか
ら小銭の遣い回しの自由度も結構上がっている。手間
さえ惜しまなければそれなりに程好いものがそこそこ
の御値段で手に入る様にはなっている。
  と言う事を二人して遣ってると一寸ばかし気が滅入
るからと思って一人で引き受けて来たものの…今から
でもそう言う部分を一寸教えておいた方が良いのかも
なぁ。任意の別れは今更心配しなくて良いが強制的な
何とやらでいきなりどっちがどっちを置いてけぼりな
んて状況もあり得る訳だし。こっちが置いていかれる
分にはまだ何とかなりそうだけど彼奴を置いて行くの
はかなり心配だ。確実に化けて出る方法なんてのがあ
れば気休めにもなるんだが。
  ま、杞憂だ杞憂。さっさと軽めのカップを買いに行
くかね。あの店ならそれなりに揃いに見える奴があっ
た筈だし。
  
  「なんてェ裏話がさ、このカップにゃある訳だよ」
  「そう言う念が籠ってりゃ随分長持ちする筈だぁね」
  確かに自分でもビックリだ。変な所へ想いが着地し
た後に買いに行ったマグカップが干支一巡り近く持つ
なんざ誰が想像出来ると言うのか。で、そう言う話を
聞かせたい相手と言うのは結局長年一緒に居るこの与
太郎な訳で。
  「ま、おかげさんでかなり楽をさせて貰ったよ」
  「過去形で言うなよ縁起でもない」
  「いやいや、これは一区切りだよ。次の干支に向け
てね」
  「で、そこが終わったら?」
  「二巡り目でも目指すかね」
  そう言ってのける所に惚れてしまってる以上こっち
も負けず劣らずの与太郎なんだろうな、と思いつつ茶
を入れてやる。
                      【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号まで、御機嫌宜しゅう。

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定例配信:毎月第一月曜日・21:00(午後9時)頃〜

雑談枠:「合切袋のプチ整理」
毎月第三月曜日・21:00(午後9時)頃〜

お時間がありましたらよろしくお付き合いください。

また、2014年1月より『BL夜伽ラヂオ』第二期を配信
致しております。

BL作家紹介放送「BL夜伽ラヂオ」
毎月第二第四水曜日・午後9時(21:00)頃開始。
【1月は第三第五、4・7・10月は第一第三第五水曜日】
基本は30分ひと枠配信
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第二期第23回放送は10月29日(第5水曜日)配信予定
です。お題は『坂本ミキ』。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾壱巻弐拾回 2014.10.25発行

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