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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
☆
第拾壱巻弐拾弐回　　小説「ささやかに煌めく」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
（東北大震災）にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

＊＊＊＊

御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

　　　ささやかに煌めく
　　　　　　　　　　　　　　　ＸＱＯ
                              
　いつかのクリスマスに街が青一色に染まってしまっ
た事があった。と言っても怪奇現象ではない。空想科
学の範疇ではあるだろうけど。
  ところが佳昭にはそう言う記憶が一切ないと言う。
色々話をすり合わせてみた結果地域の差異だと言う事
で落ち着いたんだけど実際どうなんだろう。関心が無
いから視界に入らなかったと言う事もあり得るんじゃ
なかろうか。そもそもがクリスマス自体に関心が薄い
奴だし。
  そう言うこいつがふっとクリスマスのイルミネーシ
ョンの話なぞ振って来るもんだからこっちとしては対
処に困る訳だ。ツッコむべきか驚くべきかという割に
基本的な所で。
  「ねえ、一寸」
  「ん？」
  「クリスマスの照明の話をしただけだよ、俺」
  「だよな」
  「そんなに固まられる筋合いはないと思うんだけど？」
  「固まってたっけ？」
  「多分二十秒程は」
  「…率直に言えば佳昭が悪い。柄にでもない話をす
るから」
  「そこ俺のせい？」
  「少なくとも半分は」
  「…ま、良いけどさ…。で、どうすんの？」
  「あって困るもんじゃないんだけど…、その発想が
何処から生まれたのか聞きたい」
  「あー…、まあ…」
  そこで口ごもるのは判る。佳昭の考える時の癖だか
ら。
  「…上手く言えないし、言えても恥ずかしいんだけ
どさ」
  「うん」
  「なんてんだろ…夜の豆球みたいな…って言って、
通じる？」
  「何となくは」
  「それで納得してって言うのは、無理？」
  納得と言うか、感じる事は出来る。だから却って
返事に困る。そこで、
  「…ちょ、おい」
  「…」
  「ま…ｔ、くｒ…」
  「あ、悪い」
  「色々嬉しいけど力の加減はしようよ、な？」
  …どうやら色々通じたらしい。
  目に見える形みたいなものが欲しいのはお互い様。
気持ちの余裕が出来た今、そう言うものがなんとなく
欲しくなったのも判る。佳昭は今まで関心が無かった
分余計にそうなのかも知れないな。
  「あ、控え目で良いからな？」
  「えー？」
  「ついでにプラズマボールを買って来られても置き
場所に困るっての！」
  「じゃあプラネタリウム」
  「それはあんたの誕生日の時のデート先！ああ言う
のはデカいから楽しいんだよ」
  とか何とか馬鹿を言いつつ品定めをするのも愉しい。
あれ？今さらっと凄い事を言われた様な気がするけど
…まあ、後で良いか。
  そんな訳で炬燵の上に載せても邪魔にならないサイ
ズのイルミネーションツリーを用意する事になり、一
寸浮き足立っている。
  今までも充分愉しかった訳だけど、なんか良いな、
こう言うの。
  
  あの青一色に染まったクリスマスを覚えていない訳
じゃない。むしろ鮮明に覚えている。だからこそ忘れ
たい、封印したいという気持ちが強いと言うのは朗に
は内緒だ。
　ま、ね。色々自覚しちゃった頃に出会ってしまった
光景だしね。その頃、朗に出会えていたなら多分俺は
その光景について楽しく話していただろう。でも結局
色々あって独りで眺めた光景だから思い出すのがしん
どい。そう言う事だ。
  それをとりあえず横に措いて前向きな方法をとろう
と思えたのは、朗の脳天気の効能なんだろう。色々な
自覚でさえ一寸した笑い話に出来てしまう奴だし。正
直、そこに救われたから今ここに居るのかも知れない。
  うん。幸せだよ。こっちの抱いた第一印象こそ最悪
だったけど。そう言う感情が阿呆らしくなるような包
容力を魅せられちゃったら、包まれてしまいたくなる
しね。
  
  「いいね」
  「ん、可愛い」
  本当にささやかな灯りだけど、それを二人で眺めて
いる事自体が嬉しい。
  「これからも、よろしく」
  期せずしてハモる。きっとお互い耳朶が真っ赤にな
ってるんだろうな。
  　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きま
す。次号まで、御機嫌宜しゅう。

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第二期第25回放送は11月26日（第4水曜日）配信予定
です。回顧枠第5回を送りします。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾壱巻弐拾弐回　2014.11.25発行

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