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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾弐巻弐回  小説「軽重自在」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

****

御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
2015年度小説配信回、お楽しみ戴ければ
幸いです。

〇●○

    軽重自在
                    XQO
                                
 「ヤッh」
  「ヲイ待てそれはどう言う反応だよ」
  「いや、まあ、良く響きそうだよなと思って」
  「確かにね。でも。もう良いだろ?」
  「そうね。そろそろね」
  何だかんだでこう言う空間を良く維持していたもん
だ、と自分達の事でありながら改めて呆れてしまって
いる。
  
  お互いいい歳なんだから早目だけど断捨離に踏み切
らないかと言う声掛かりについ首を縦に振ってしまっ
て一週間。思い出と言うよりはその残滓がしみこんだ
品を思い切って処分してきてみると随分精神的な着ぶ
くれをお互いしてきたもんだと苦笑する。シンプルに
生きてきたつもりだったんだがそれなりに執着はあっ
たんだな。結構かっ飛んだ方向に。
  それが如実に表れてたのがクローゼットと称した一
間な訳で…今の住まいに三十年近く落ち着いていた理
由はひとえにこの一間の作用だったと言っても過言で
はない。何しろ捨てられないものをほぼ全部放り込ん
で封印してきた一種の魔境だったのだから。
  が、その魔境も今や風通しの良い空間に劇的な変化
を遂げた。色々積み上げて内側から閉ざす形になって
いた窓も今は開け放たれ、少し冷たいが心地好い風が
抜けて行っている。
 「ここを和室に改装しても良いなぁ」
  「……うなされないか?」
  「寝る訳じゃないから、平気だろうさ」
  「俺達はな。客でも来た時にはどうするよ」
  「まずいかね?」
  「祓えるもんは祓ったから大丈夫な筈だけどな」
  そう願いたい。正式に付き合う様になる前のものま
で放り込んだ覚えはないがその代り、若気の至りがし
みこんだものがかなり封印されていたのでその辺が気
掛かりと言えば気掛かりだ。うん、まあ体力もそれな
りにあってそれで余計に暴走したから残留思念がある
と言われても否定はできないな。そう言う理由でリサ
イクルに回す事ができなかった物が実は相当数ある。
そう言うものを詰め込んだ部屋なのだから何かが遺っ
てしまっていると言われても残念ながら否定できない。
清め塩以上の民間手法があるなら知りたい程だ。
  何しろ、だ。これまでもここを片付けている最中に
ついその気になって目が覚めたら太陽が黄色く見えて
いた、なんて事は数えきれない程あった。自発的にそ
う言う気持ちが芽生えるのではなく、ついふらふらと
陥ってしまうのだ。気力体力それに伴う欲が充実して
いる内ならまだ良いが流石にこの先ついふらふらとは
まずい。一日で回復できるかどうかがまず不安になる。
だから思い切る事にした。もう実物が無くともそれな
りに思いだせると言う自信もあるし。だが、なぁ…。
  「むしろ俺達の部屋をこっちにするかね」
  「……大丈夫か?」
  「さすがにもう大丈夫。だろ?」
  「とは思うんだが…少し自信が無い」
  「そうなりゃ醒ましてやるさ」
  それなりの歳とは言え灰になっている訳じゃない。
それなりのきっかけがあればそれなりに進む事はある。
少なくとも暴走を止めると言う意思表示は実際有難い。
  「まあ、客と言っても蛇の道は何とやら、だからな」
  否定できずに釣られて苦笑する。しかも年齢層の上
下幅が不思議と広いからな。不埒じゃない話で繋がっ
てる方が多いんだけど。
  こうなっている段階で部屋を分けると言う選択肢が
出てこないのは吾が事ながら不思議だ。四六時中べっ
たり寄り添っている訳ではないからそう言う所に思い
至らなかったのかも知れない。第一ベッドが一つだっ
たのは二つ買うのが面倒だったからだし、どうせ時間
差で寝ているのだからそう言う面でも二つでは効率が
悪かったからだ。斯様に俺達はそう言う色気に今一つ
欠けている。なのに時々火がついてそう言う時に限っ
て燃え方が激しいのだから始末が悪い。
  「どう転んでも悩ましい、かな」
  「なんでこの歳になってもこうなるんだかね」
  「こっちに振るなよ」
  「他の人間にゃ振れんだろ?」
  「振ったら怒る」
  「その歳でその拗ね加減はやめれ」
  こう言う他愛もない話を繰り返しつつ長続きして来
た訳だ。こう言うのを多分幸せと言う風に呼ぶんだろ
う。この気持ちは断捨離に回せないな。
  とりあえずこの部屋にもう一回内側から風を通そう。
話はそれからだ。
                     【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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BoysLoveみそひともじ朗詠 
http://com.nicovideo.jp/community/co1421231
定例配信:毎月第一月曜日・21:00(午後9時)頃〜

雑談枠:「合切袋のプチ整理」
毎月第三月曜日・21:00(午後9時)頃〜

お時間がありましたらよろしくお付き合いください。

2015年1月より『BL夜伽ラヂオ』第3期を配信致します。

BL作家紹介放送「BL夜伽ラヂオ」
毎月第二第四水曜日・午後9時(21:00)頃開始。
基本は30分ひと枠配信
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
第3期第2回放送は1月28日(第4水曜日)配信予定
です。お題は「タカハシマコ」でお送りします。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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当方はBL通の末席でコミック・小説のアンケート回答
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今回は更にウェブBLコミック特集・「2013〜2014 BLニュース
この1年!!」(BL重大ニュ〜ス!!)の2記事を書かせて
戴きました。加えてランキング発表後のBL座談会で
評論サークル・ガール社のユーホさん、BLコミックカフェ・
カフェ801【cafe801/カフェハチマルイチ】のまこさんと
鼎談させて戴いております。御高覧ください。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾弐巻弐回 2015.1.25発行

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