★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
☆
第拾弐巻六回  小説「春先の攻防戦」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

****

御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
2015年度小説配信回、お楽しみ戴ければ
幸いです。

〇●○

    春先の攻防戦
                    XQO
                                
 伸びをして力瘤を作るポーズをして気合を入れる。
まさにチャンス到来って奴だ。
  「本当に、やるの?」
  「約束、したよね?」
  「………早まったな…」
  篤の舌打ちを聞かなかった事にして予定通り外堀を
埋めてゆく。
  「こりゃあ砦だね」
  「再構築するのが面倒く」
  「綺麗な再構築の為に虫干しも必要だ!よな?」
  未練がましい反論をさっさと却下しておく。だから
と言って恨みがましい目で見るなよ。男に二言はない
筈だろ?
  「で、移動して欲しい訳だが?」
  何時の間にか頭ひとつ追い越した体躯が気怠げに横
を過ぎてゆく。近々何かで埋め合わせするからとその
背に向かって心の中で囁いておく。
  
  台所に続くフローリングにそれなりの炬燵を置くと
賛成した事については俺も同罪だから篤に責任を押し
付けるつもりはない。ただ、その運用に関して言えば
篤の意向反映が大きいのだから当然篤の責任大という
判断になる。
  冬の間なら許せる風情は確かにある。しかしそれが
他の季節でも通用するかと言えば決してそうではない。
  ましてや完全な二人暮らしになってからと言うもの、
炬燵は今や篤の出張個室みたいなものになっている。
  で、この炬燵が独立した空間なら俺も普通に放置す
るんだが元はと言えば共用空間だ。その上来客でもあ
ろうものなら、客間のない家だから外交の場にも成り
得る。
  そう言う場所をだらだら占拠され続けると、正直情
にも細かくひびが入る。更にそこで不埒な真似をしで
かされた日には…椿事なら刺激として許容範囲だが日
常なら勘弁と言う褪めた気持ちになる。
  ……以上、我ながら細かすぎるとは思う。でも、環
境管理をなし崩しに担当する様になった立場だからこ
の程度は言わせて欲しくなる。
  
  喫茶店の禁煙席でスマホを弄ってみてもなんだかん
だですぐ飽きてしまう。これも皆哲のせいだと責任転
嫁して思考停止したくなるがいやいやと思い直してな
にかないかと探してみる。
  大本はおれが炬燵に篭もる時間が長かったせいと言
う自覚はある。炬燵から抜け出したくないから、と手
の届く範囲で全部済ませようとしたんだから流石に許
容範囲も超えるわな。二人暮らしの中に炬燵を導入し
てから五年間。その間に積もったものもあるだろうし。
  そう言う矢先に桜の開花宣言のニュースを二人して
見ていたというのは運命なんだろう。
  開花宣言がこっちに南下してきたらひとまず炬燵撤
収!と宣言した哲に反論なんて出来なかった。それこ
そ昨日の今日と言う事情があったから。
  かなり甘やかされている自覚はある。それもまた開
き直って我儘になれない理由の一つ。この仲だって元
はおれの我儘と甘えから始まったものだしな。そう言
う負い目があるから逆らえない。
  こう言う仲になる前に一度堪忍袋の緒を切ってしま
った哲を見てるし、そうなった経緯も図らずも知って
いる。おれはそうさせないと心に決めて一歩踏み出し
たのにな。肝心な所で甘えてしまう自分が悔しい。
  
  布団も発熱装置も取り外された元炬燵現リビングテ
ーブルに突っ伏して寝ていた哲が肩に掛けられたタオ
ルケットに気付いたのはそろそろ陽も翳りだした頃の
事だった。
  「ん、…ああ、そっか。サンキュ」
  「どういたしまして」
  鍋の火加減を調整した篤が背中越しに返す。
  「ちょっと早いし生じゃないけど、枝豆なんてどう
かなと」
  「ああ、いいね」
  久々に風を通したので少しこっちもスッキリしたか
な。次の季節はここまでなってしまう前に平和的に風
を通そう。篤と二人で気分転換するために。
  「こっちこそ、ありがと」
  「は?何?」
  「砦」
  「ああ、まとめて入れ替えただけだし」
  横のものを縦にしてしまえば収まりが良くなる事も
あるってね。
  そうしてまたひとつの節目が過ぎてゆく。二人でで
きるだけ多くの節目を過ごしたいよね、と心の中で囁
きかける。
                       【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

BoysLoveみそひともじ朗詠 
http://com.nicovideo.jp/community/co1421231
定例配信:毎月第一月曜日・21:00(午後9時)頃〜

雑談枠:「合切袋のプチ整理」
毎月第三月曜日・21:00(午後9時)頃〜

お時間がありましたらよろしくお付き合いください。

2015年1月より『BL夜伽ラヂオ』第3期を配信致します。

BL作家紹介放送「BL夜伽ラヂオ」
毎月第二第四水曜日・午後9時(21:00)頃開始。
基本は30分ひと枠配信
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
第3期第6回放送は本日3月25日(第4水曜日)配信予定
です。お題は「真柄うしろ」でお送りします。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

以下も告知です。
宙出版・刊『このBLがやばい! 2015年度版』 
http://amazon.co.jp/dp/477679649X にて、
当方はBL通の末席でコミック・小説のアンケート回答
(レビュー)に参加しました。
今回は更にウェブBLコミック特集・「2013〜2014 BLニュース
この1年!!」(BL重大ニュ〜ス!!)の2記事を書かせて
戴きました。加えてランキング発表後のBL座談会で
評論サークル・ガール社のユーホさん、BLコミックカフェ・
カフェ801【cafe801/カフェハチマルイチ】のまこさんと
鼎談させて戴いております。御高覧ください。

=========================

仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾弐巻六回 2015.3.25発行

文責:葡萄瓜XQO(ぶどううり・くすこ)
http://xqo.ooh.jp/mag/
mail:xqo_gm@yahoo.co.jp
  :xqosy@aol.com(メールマガジン専用アドレス)
連動BLOG「ショタやおい雑記」
http://xqosy.seesaa.net/

このメールマガジンは
melma! 
http://www.melma.com/backnumber_90840/

Mailux
http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533

まぐまぐ
http://www.mag2.com/m/0000270330.html

merumo
http://merumo.ne.jp/00609565.html

のシステムを利用して発行させて戴いています。

また独自配信も開始しております。
http://xqo.ooh.jp/mag/d-send.html

ご意見ご質問等は上掲メール宛、若しくはサイト内
設置メールフォームよりよろしくお願い致します。
http://xqo.ooh.jp/mag/form/

バックナンバーはサイト内及び各配信スタンドにて
公開しております。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
back   配信済top   次回配信分