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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾弐巻拾回　　小説「そして同行二人なる」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
（東北大震災）にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤い
に繋がりますならば幸いです。

＊＊＊＊

御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
2015年度小説配信回、お楽しみ戴ければ
幸いです。

〇●○

　　　そして同行二人なる
          　　　　　　　　　　　ＸＱＯ
                                
　ふとした拍子に重ねてきた歳月を感じる機会がまた
増えている。
  一番最初に何で感じたんだっけと思い返して、そし
てついついそこを撫で回す。そうだよ、もみあげが妙
に白いと思ってしまって気付いたんだよ。そりゃあ永
遠に若く在るなんてお伽話を信じている訳じゃないが、
地味な所で確かな証明を見つけてしまうと結構ダメー
ジは大きい。
  そして今日また一つ増えてしまった証明。
  夜中に目覚めてそのまま奴さんの寝顔を見守ってい
る自分自身と言うね…一昔前までは見守る為には徹夜
が前提だった筈なんだがな…。あと五年もしたら夜中
に二人で起きて一局指しながら夜明けを待つ様になる
んだろうかね。今の奴さんからはまだまだ想像できな
い話だけど。
  さてそれにしても困ったもんだ。こう言う時に限っ
て気の利いた軽食の買い置きもなければお湿りの買い
置きもない。コンビニまで近いと言えば近いんだが身
支度をするにはちょいと億劫だ、と言う加減でまこと
に始末が悪い。直ぐ隣に、とは言わないがせめて向か
いがコンビニならと早まりかけていやどうせソレなら
ソレで文句を言うだろうと思い直す。
  …疲れ果てるにも体力が要るけど、きちんと寝る為
にもそれなりの体力は要るもんだな。我が身の上に置
かれてみるとしみじみ体感してしまう。いっそ逆療法
で疲れ果てる様に仕向けてしまえば熟睡出来るんだろ
うか。それこそ他の事を一切考えなくても良い様な感
じで。
  こう言う詮無い事を考えている内に自然に眠れたら
とても楽なんだろうな。それが出来ないからこうして
堂々巡りをしている訳だが。隣で聞こえるスヤスヤ寝
息にこう言う形で黒い感情を抱く日が来るなんて想像
もしていなかったが、案外そう言うスイッチは人間の
身近に存在してしまっているらしい。知りたくなかっ
た事実と言う奴なんだろうな。
  まさかこの歳でこう言う形で一人寝の空っぽさを味
わう事になるとは思わなかった。いっそ最初が独りだ
ったら耐久性も出来たんだろう。幸か不幸か気がつい
たら二人だったしなし崩しに誰を挿む事もなくこう言
う関係になった。だから余計に始末が悪い。状況さえ
許せば終の棲家のその先まで共有するという暗黙の了
解が出来上がってしまっていたし。
  そりゃ二人共いい歳なんだからそれぞれの都合で外
泊する事だってある。でもそれを独りが云々とは言え
まい。用事を済ませればまた二人の日常が在ると言う
前提付きのお一人様だ。精々が気分転換と言うべきも
のだろう。
  この状況も気分転換だ、と言い切れてしまったなら
本当に楽だろう。でも、これは違う。了解があった上
での一人寝じゃないから。……俺は一体幾つのお子様
ですか。こんなのを指して少年の心云々と言える程厚
かましくはなれませんよ、と。
  
  偶然起きたという感じを装って白湯の一杯にでも付
き合った方が健全なんだろうか、と逡巡しつつ狸寝入
り。
  ある程度それなりに歳を喰ったから昔感じていた歳
の差の壁を感じずに済む様になったと思っていたんだ
けど、このタイミングがあると言うのを忘れていたの
は正直不覚だった。
  うん、まあ、ね。子供は成長して大人になって、そ
して老いてゆくと言うのが順当な法則である以上僕ら
が老いると言う事にも異論はない。ただ少し不本意な
だけで。
  七歳の差ってのは子供にとってかなり大きなものだ
ったから、それが気にならなくなった瞬間はほんと嬉
しかったな。で、今はそれが多分逆の形で大きな壁に
なりつつあるって事なのかもな。
  二人でいるのにお互いに置いてけぼりにされる様な
感覚。こう言うのがじわじわ来る日々の割合がこれか
ら増えて来るって事か。僕は、それをどこまできちん
と飲み込む事が出来るんだろう。最後の最後で駄々を
こねそうな自覚はあるので自信はない。
  今が幸せならそれで良いと割り切れてれば良いんだ
けどね。生憎とそれじゃ足りないなんて不届きに思っ
てるお馬鹿だからさ。
  まあ、ここからゆっくりそれなりの支度をして行く
しか無いかもね。終わりに向けて前向きに。長期戦の
終活か………もう少し無縁で居たかったけど、こう言
う関係だから出来る限り自分達で整えておいた方が無
難なのかもね。
  じゃ、まああと30分してから奴さんが起きてればそ
の時に起きたって言う事にしておこうかな。一緒のタ
イミングで老いていきたいと言う気持ちもあるけど、
こっちが老けこんだらそれはそれで奴さんが複雑な気
持ちになるだろうから。
  　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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BoysLoveみそひともじ朗詠　
http://com.nicovideo.jp/community/co1421231
定例配信：毎月第一月曜日・21:00（午後9時）頃〜

雑談枠：「合切袋のプチ整理」
毎月第三月曜日・21:00（午後9時）頃〜

お時間がありましたらよろしくお付き合いください。

2015年1月より『BL夜伽ラヂオ』第3期を配信しており
ます。

BL作家紹介放送「BL夜伽ラヂオ」
毎月第二第四水曜日・午後9時(21:00)頃開始。
基本は30分ひと枠配信
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
第3期第11回放送は5月27日（第4水曜日）配信予定
です。お題は「星逢ひろ」でお送りします。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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以下も告知です。
宙出版・刊『このBLがやばい! 2015年度版』 
http://amazon.co.jp/dp/477679649X にて、
当方はBL通の末席でコミック・小説のアンケート回答
（レビュー）に参加しました。
今回は更にウェブBLコミック特集・「2013〜2014 BLニュース
この1年!!」（BL重大ニュ〜ス!!）の2記事を書かせて
戴きました。加えてランキング発表後のBL座談会で
評論サークル・ガール社のユーホさん、BLコミックカフェ・
カフェ801【cafe801/カフェハチマルイチ】のまこさんと
鼎談させて戴いております。御高覧ください。

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第拾弐巻拾回　2015.5.25発行

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