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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾弐巻拾四回  小説「すぎてなおふそく」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方に心からお見舞い
申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤いに
繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

   すぎてなおふそく
                XQO

 あ、と思った瞬間には既に彼の姿は視界から消えて
いた。予測していたとは言え、一寸このタイミングは
想定外だ。否…これでも良くぞ、と考えるべきか。
  などと考えていると手許の電話が震えた。相手はも
う判っているので確認せずに出る。
  「あいよ」
  「…悪い」
  「構わんさ。今日はこのまま帰る?」
  「いや、ここで待機してるから」
  「じゃ決定。今日はここで撤退」
  「いやこっちは」
  「どうしても、という訳じゃないからな」
  「その…色々すまん」
  「じゃ、そっち行くから」
  何より一番しんどいのは本人だからと思えば色々飲
み込める。それも込で何年付き合ってきたかと思えば
こういうのも楽しいものだ。
  
  一翔が過剰なものに酔う様になって人生の半分以上
が過ぎている筈だ。僕との関係もほぼ同じ程度になる。
その少し前にお友達期間があるがその頃は一翔の内面
に深入りしてなかったから除外しておいて差支えない
だろう。
  で、まあ一応社会の一員なので一翔も僕も必要に応
じて外出はする。一翔の場合はほぼ完璧にと言って良
い程必要最低限に抑えた上で。僕にしてもなるべく回
数を抑える様にはしている。
  そういう二人でもこういう仲である以上デートに対
する欲求はある訳で。だから場所を厳選した上でトラ
イする訳だが、どうしたって乗り越えられない場合は
ある。今日みたいに想定外の人出と環境の密度加減が
重なってしまったりとか。
 あいにく一翔は守られてばっかのお姫様じゃないか
らこっちが止めても大概立ち向かっている。そういう
強気が功を奏してるんだろう。初期に比べるとデート
できる環境の条件はほぼ三倍近く緩和された。経験値
から色々応用している部分もあるし。
  で、デートの締めに二人きりになるかといえばそう
いう訳でもない。二人でいる事が慰めになる事も確か
にあるんだろうけど、それはあくまで体力気力が充実
してこその事。二人でしかできない事をする時にはそ
の為だけの予定を別に組んでるし。
  …なんて、割に気軽に言えてしまうのは多分僕等が
物心ついた頃から携帯電話と馴染んだ生活をしていた
世代だからかもね。いざとなれば手軽に色々確認でき
る手段があるから安心しきっている部分があるのは否
定しない。実際、今日も一翔と連絡が取れるという確
証があったから慌てなかった訳だし。
  もしこれが逆の立場だったら、僕は一翔と同じ様に
相手の負担になるまいと振る舞えるだろうか。そう思
うと、一翔の存在自体に有り難みをしみじみ感じてし
まう。
  ただ、時には無条件で甘えて欲しいという気持ちも
あるにはある。そういう展開にならないのは結局自分
の不甲斐なさなんだよなと苦笑してしまうのがいつも
のオチだけど。
  「こっちこっち」
  随分まあ緩んだ口元してくれちゃって。それとは裏
腹に目許がかなり怪しい。くまが出来るまでは行かな
いけど、憔悴してたんだろうなとは察する事ができる。
  「休めた?」
  「ま、それなりに」
  「帰れそう?」
  「ホットコーヒーを飲んだら大丈夫かな」
  「じゃ、一寸歩くよ」
  「あいよ」
  以外にしゃんとして…ないか。きちんと踏みしめて
おこうと意識してるのが判ってしまう感じなら。心当
たりの店まで徒歩三分と見込んで一押してみたのは計
算ミスだったかも知れない。
  「過保護で倒れてくれるなよ?」
  「へ?」
  「お前さん、心配過剰になると無意識に指モールス
打ってるからな。…こっちだって昨日今日の素人じゃ
ないっての」
  「…あ、悪い」
  やれやれ、逆に心配かけてちゃ世話ァ無い。
  「二人でゆっくり歩けば大丈夫でしょ」
  「手、繋ぐ?」
  「折角だし」
  じゃあ遠慮無くと手をつなぐ。掌が軽く汗ばんでい
るのがなんとなく嬉しい、なんて思ってしまうのは変
なんだろうな。
  「今度からね」
  「ん」
  「移動中可能な限り手を繋ごっか。こっちが気分的
に楽だし」
  ならこっちも助かります。色々以上に。
                       【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。

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BoysLoveみそひともじ朗詠 
http://com.nicovideo.jp/community/co1421231
定例配信:毎月第一月曜日・21:00(午後9時)頃〜

雑談枠:「合切袋のプチ整理」
毎月第三月曜日・21:00(午後9時)頃〜

お時間がありましたらよろしくお付き合いください。

2015年1月より『BL夜伽ラヂオ』第3期を配信しており
ます。

BL作家紹介放送「BL夜伽ラヂオ」
毎月第二第四水曜日・午後9時(21:00)頃開始。
基本は30分ひと枠配信
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
第3期第16回放送は7月29日(第5水曜日)配信予定です。
お題は「藤たまき」でお送りします。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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以下も告知です。
宙出版・刊『このBLがやばい! 2015年度版』 
http://amazon.co.jp/dp/477679649X にて、
当方はBL通の末席でコミック・小説のアンケート回答
(レビュー)に参加しました。
今回は更にウェブBLコミック特集・「2013〜2014 BL
ニュースこの1年!!」(BL重大ニュ〜ス!!)の2記事を
書かせて戴きました。加えてランキング発表後のBL座
談会で評論サークル・ガール社のユーホさん、BLコミ
ックカフェ・カフェ801【cafe801/カフェハチマルイチ】
のまこさんと鼎談させて戴いております。御高覧ください。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾弐巻拾四回 2015.7.25発行

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