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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾参巻拾八回  小説「まだ、一行目」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方、2016年4月14日に
発生しました平成28年熊本地震にて罹災した皆様方に
心からお見舞い申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤いに
繋がりますならば幸いです。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

〇●○

  まだ、一行目
                XQO
                                
 あれやこれやを済ませて久しい間柄ではあるが、僕
等が最初に出くわした場所は(当の本人達さえいまだ
に意外に感じているんだが)ビルの一隅で棚を広げて
いた商売っ気のまるでない古書店だった。
  と、この段階で結構言われるのがどうせ行間が艶っ
ぽい本でも探していたんだろうとか何とかその辺なん
だが、そう言う本を探すならわざわざそう言う辺鄙な
店で掘り出し物的に探さなくても一見の大型書店で目
星をつけておいてさっくり買った方が早い。余程の絶
版でなければ電子マネーで電子書籍購入と言う手も今
日日はある。ネット書店で電子媒体以外を買うと言う
手段は…支払いと配達の為とは言えリアルな個人情報
を出す必要があるので最初から範疇外ね。
  …そうか、そう言う本が出会いのきっかけだったの
ならもう少し違う展開も期待出来たろうにと言う事か。
でもなぁ…この二人にそう言う本を与えても豚に真珠
でしかないと思うけどな。艶っぽさが欲しいなら即物
的な手段の方がお互い好きだし。
  閑話休題。
  僕等が銘々に捜していた本は、そう言う世俗的な視
点から見れば艶っぽさの欠片もない本だった。みそひ
ともじの方の歌集だったもの。それも門外漢からでさ
えも知られている様なレベルのそれではなく、何処に
愛読者が生息していたのかと好事家からも揶揄されて
しまいそうなそう言うレベルの一冊。そう言うレベル
であるから著者自身が思い切って電子化作業に踏み切
らなければ電子書籍が存在する筈がない。故に数少な
い情報を頼りに紙媒体を探す羽目になる。視点を変え
ればそう言うマニアからすれば正に稀少価値の高いお
宝と言う事が出来るかも知れない。
  今思うと何故その存在を探すのに其処まで嵌ったの
か、些か曖昧な部分がある。相方もどうやら御同様ら
しい。と言うのも探しに探してやっと二人で手に入れ
た一冊であるにも拘らず、僕等はその歌集の一行目、
一首目を読み合わせたきり先に進んでいないのだ。加
えて銘々個々なら読み進めているのかと言うとそうで
もない。共有の本棚の目立つ場所に麗々しく置いてあ
るにもかかわらず。これは本読みとしては余りよろし
くない状況だと思う。正直恥かしい。
  そんなに大事な本ならいっそ貸金庫でも借りてそこ
に収めてしまおうか、と二人して冗談で言う事もある
が多分問題点はそこではない。そこに光を当てなくて
も二人でいる事に支障がないからそれで余計に後回し
にしてるんだろうと言う自覚は、ある。
  これで他の本を読む気にならないと言う事なら倦怠
期の一種だろうと言う事で割合簡単に片が付くんだが、
生憎二人とも活字に対する探求心は旺盛だし、むしろ
弄せる手段を駆使して領域を広げ気味になっているの
で抑えが欲しくなる程だ。吾が事ながら実に理解に苦
しむ。
  
  「読んだ?」
  「どうにもね…。そっちは?」
  「問いの時点で判るでしょ?」
  …だから、そこで溜息の呼吸を合わせてどうする。
  「なんだか申し訳ないよね」
  「現状を考えると更にね」
  「…アレ、注文する?」
  「いや、もう少し待って」
  「自信、ある訳ね」
  「実は希望が四割」
  「駄目じゃん、それ」
  「かな?」
  「意地張らずにさ、楽しようよ」
  「二度目」
  「へ?」
  「最初にその台詞言ったタイミング、覚えてる?」
  「…忘れてたら同棲してないよ」
  「ですよね」
  「…目星はつけてたから、注文するわ」
  「そうして」
  腹芸合戦からそうなってもね。
  
  斯くして僕等の元に届いたのは眼鏡式の拡大鏡。二
人とも活字の世界にログインしてしまったら帰れなく
なると言う理由で共有式にした訳だけど…正直とても
楽だった。好きな活字でストレスを覚える事が無いと
言うのは、実に素晴らしい。
  さあ、これでようやく積年の諸々を晴らす事が出来
る。五センチ角の空間に詰め込まれた十首×百頁との
静かな対峙…。さあ、二人がかりでいつ決着がつくん
だろう。愉しみが一番大きいからとても気楽ではある
のだけど。
                   【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。
では次号まで、御機嫌宜しゅう。

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BoysLoveみそひともじ朗詠 
http://com.nicovideo.jp/community/co1421231
定例配信:毎月第一月曜日・21:00(午後9時)頃〜

雑談枠:「合切袋のプチ整理」
毎月第三月曜日・21:00(午後9時)頃〜

お時間がありましたらよろしくお付き合いください。

2016年1月より『BL夜伽ラヂオ』第四期を配信致して
おります。

BL作家紹介放送「BL夜伽ラヂオ」
基本的に毎月第二第四水曜日・午後9時(21:00)頃開始。
概ね30分ひと枠配信
http://com.nicovideo.jp/community/co1391827
第20回は9月28日(第四水曜日)配信。
第16回から第19回を振り返る小回顧枠その4です。

併せてご愛顧戴ければ幸いです。

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以下、商業媒体告知です。
2015年8月20日に玄光社から刊行されました
『はじめての人のためのBLガイド』【表紙:宝井理人】
http://www.genkosha.co.jp/gmook/?p=8721 
http://www.amazon.co.jp/dp/4768306462/  
の企画・「私が選ぶ○○BLベスト5」の選者の一人と
して参加させて戴きました。
ご高覧戴けましたら幸いです。

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商業媒体告知、2件目です。
2015年11月25日より集英社より電子書籍配信されている
ブリンクコミックスデジタル・ことり野デス子先生
「フダンシ革命」第2巻巻末企画にて、ことり野先生と
腐男子として対談させて戴いております。
http://www.amazon.co.jp/dp/B0177H72ZO/
http://books.rakuten.co.jp/rk/42718e40b81938e788ce1e4a32558366/
ご高覧戴けましたら幸いです。

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商業媒体告知、3件目です。
宙出版・刊『このBLがやばい! 2016年度版』(2015年12月12日刊) 
http://www.amazon.co.jp/dp/4776796627/ 
にて、当方はBL通の末席で「あなたのBL BEST5」(コミック
・小説)選者で参加しました。
更に「2014〜2015 BLニュースこの1年!!」(BL重大ニュ〜ス!!)
を書かせて戴き、加えてランキング発表後のBL座談会で
評論サークル・ガール社のユーホさん、BLの取り扱いもある
インターネットカフェ・和style.cafe AKIBA店スタッ腐さんと
鼎談させて戴いております。御高覧ください。

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なお、配信スタンドの内、merumoは2016年9月30日を
もってサービス停止との事です。
他配信スタンドへの移行をよろしくお願い致します。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾参巻拾八回 2016.9.25発行

文責:葡萄瓜XQO(ぶどううり・くすこ)
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また独自配信も開始しております。
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