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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第拾七巻壱回  小説「あーるいー」
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2011年3月11日に発生しました東北地方太平洋沖地震
(東北大震災)にて罹災した皆様方、2016年4月14日に
発生しました平成28年熊本地震にて罹災した皆様方に
心からお見舞い申し上げます。
居住地の差異の為たまたま罹災しなかった筆者に出来
ます行動は限られておりますが、幾許かが皆様の潤いに
繋がりますならば幸いです。

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2020年1月末日で配信スタンドの一つであるmelma!が
サービス終了になるとの事。

http://melma.com/contents/service.html

今後も購読を希望して戴けるならば、下記に記載の
まぐまぐ若しくはMailuxへの再登録をよろしくお願い
致します。

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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。

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     あーるいー
                 XQO
                                  
 不意に切符を渡された。
  「旅、しようか」
  「何処へ?」
  「二人にとっての、巡礼に」

 歳月をある程度重ねてきて、それらしく悟った事が
ある。
  独りでいる事が寂しいのではない。独りで居ると言
う事実を受け入れられない事が、多分淋しいのだと。
  ふたりの寂しさを味わった今、しみじみ思う。そう。
一番穏やかで一番寂しい夜を味わった者同士が寄り添
って過ごした日々は、ほんの少し暖かい。
  
  最初の一夜が紅茶の飲み明かしで終始したなんて、
実は今でも信じられないでいる。多分お互いにそうだ
ろうと踏んでいる。
  初対面の時点でお互いそれなりに欲もあるのは承知
していたし、肚を探り合う内に経験値もそこそこある
と察知出来ていた。だから一歩踏み込みさえすれば何
らかの始まりはあった筈だった。
  それが蓋を開けてみれば徹夜の利き紅茶だったのだ
からなんと言えば好いのか判らない気分だ。そしてそ
れは正にお互い様と言う始末だった次第で、似た者同
士だから寄り添うには程好いかという妥協案が生まれ
て今日に至っている。全くの聖人君子じゃないからそ
れなりに一戦交える事もあるが、それでも程々に収ま
った上で緩やかに朝を迎えている。
  こうなった今だから言える。
  多分、あの夜に別の展開が始まっていたら、二人の
縁はとっくに終わっていた。その程度の関係で終わら
せる前提が正直こちらにはあったし。
  でも今も縁は続いている。半ば不可解だが、それを
受け入れている自分もいる。
  そう。実に不可解だ。寄り添っている相手は、最愛
の相手ではないと言うのに。
  
  一度繋いだ手を離す事に対して、名状し難い怖さが
自分の中で生まれてしまった事を否定するつもりはな
い。説明ならば多分出来る。ただその説明で全てを言
い表す自信が無いと言うだけの話だ。
  そう言うものを抱えて動こうとしたものだから正直
自分が鬱陶しかった。
  あの晩もそう言う気分だった。にも拘らず、何かを
始めなければきちんと終われないよ、と唆されて久々
にあの店に出向いた。ああ言う気分で無ければそう言
う言葉はきっと一蹴していただろう。
  その結果として出会ってしまった。遭遇してしまっ
たと言う方が適切なのかも知れない。これについては
きっかけを作った輩の関知する所ではあるまい。誰か
の気紛れと言う奴だ。
  傷を舐め合いながら癒されるなんて性には合わない。
だから相性だけ確認したらあっさり終わって二度と会
わないつもりで挑んだ。その筈だった。
  そのつもりが今こうして何となくならんで、それな
りの事も一通りしているのだからおかしな話だ。
  これも癒しの一環である、などと考えるのは、都合
の好い話だろうか。
  
  「何故、と聞いていいか?」
  「聞きたくなるだろうな」
  「当事者だしね」
  はじまりの場所から始まった二人にとっての聖地巡
礼。そうは言っても半分ずつはお互いにとっては未知
の場所。傍から見ればある意味悪趣味だと言われかね
ない様な道行だ。
  「純粋に知っておきたかったんだ」
  「今更?」
  「遅まきながら、だけどね。知らなくても差し支え
ないからとも思いかけたけど」
  赤く染まる耳朶が語る気持ちに共感出来てしまうか
ら厄介だ。染まってこうなったのなら棄ててしまえそ
うなものだが、生憎とそうじゃない。
  「割と嬉しい、と返せばきっと適切かな」
  「……オッサンを照れさせてどうするよ」
  「変わらんだろ、今更。その他にも大概な事はある
し」
  「それもそうか」
  「まあ、一つは変えておくと楽は楽かもな」
  「この流れでそれを言うか?」
  「丁度好い感じの勢いだしな」
  「じゃあ、乗った」
  お互い、もういい加減二度目のお試し期間と言う事
もあるまい。それなりに肚を据える時間はあったのだ
から。
  「じゃ、よろしく」
  「こちらこそ」
  繋いだ小指が、とても熱い。
                    【了】

〇●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて戴きます。
なお、2月度及び3月度・前半(10日)の配信は配信者都合に
より休止させて戴きます。
では次号・2月の小説配信回(25日)まで、御機嫌宜しゅう。

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BoysLoveみそひともじ朗詠 
http://com.nicovideo.jp/community/co1421231
定例配信:毎月第一月曜日・21:00(午後9時)頃〜

雑談枠:「合切袋のプチ整理」
毎月第三月曜日・21:00(午後9時)頃〜

お時間がありましたらよろしくお付き合いください。
暫し休止中ですが、再開の折にはご愛顧戴ければ
幸いです。

2020年度「BL夜伽ラヂオ」配信も暫し休止と
させて戴きます。

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以下、商業媒体告知です。

2017年11月10日ぶんか社より刊行された
たかはし志貴先生
「アラサー腐女子が初めて付き合ったのは、高校生の腐男子でした。」
巻末企画にて、たかはし先生のパートナーさんを
含んだ面々で腐男子座談会を展開させて戴いて
おります。
https://www.amazon.co.jp/dp/4821144719/
https://books.rakuten.co.jp/rb/15204144/
ご高覧戴けましたら幸いです。
電子書籍展開もあります。

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商業媒体告知、2件目です。
2015年11月25日より集英社より電子書籍配信されている
ブリンクコミックスデジタル・ことり野デス子先生
「フダンシ革命」第2巻巻末企画にて、ことり野先生と
腐男子として対談させて戴いております。
http://www.amazon.co.jp/dp/B0177H72ZO/
http://books.rakuten.co.jp/rk/42718e40b81938e788ce1e4a32558366/
ご高覧戴けましたら幸いです。

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商業媒体告知、3件目です。
2015年8月20日に玄光社から刊行されました
『はじめての人のためのBLガイド』【表紙:宝井理人】
http://www.genkosha.co.jp/gmook/?p=8721 
http://www.amazon.co.jp/dp/4768306462/  
の企画・「私が選ぶ○○BLベスト5」の選者の一人と
して参加させて戴きました。
ご高覧戴けましたら幸いです。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第拾七巻壱回 2020.1.25発行

文責:葡萄瓜XQO(ぶどううり・くすこ)
http://xqo.ooh.jp/mag/
mail:xqo_gm@yahoo.co.jp
  :xqosy@aol.com(メールマガジン専用アドレス)
連動BLOG「ショタやおい雑記」
http://xqosy.seesaa.net/

このメールマガジンは
melma! 
http://www.melma.com/backnumber_90840/

Mailux
http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533

まぐまぐ
http://www.mag2.com/m/0000270330.html

のシステムを利用して発行させて戴いています。

ご意見ご質問等は上掲メール宛、若しくはサイト内
設置メールフォームよりよろしくお願い致します。
http://xqo.ooh.jp/mag/form/

バックナンバーはサイト内及び各配信スタンド、
「ショタやおい雑記」にて公開しております。

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