仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
☆
増刊第九回  

男達にとっての『やおい・ショタ』(2)
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ごきげんよう。葡萄瓜でございます。
では、筆を少々進めてみると致しましょ
う。

殿方がやおい・ショタを鑑賞する時に先
立つ感情は、果たして何か。
徘徊して見聞きした結果から判じますに、
殿方と言えどもどうも萌えよりも批評的
な視点が先立ってしまっている様な気が
してなりません。それも萌え云々と言う
よりは重箱の隅突付きの様な評者の意に
副わぬ事で物言いをなされている様に思
えます。
愚考しますに、殿方の多くは恐らくやお
い・ショタを『感じて萌える』前に『読
み解いて理解してしま』おうとしている
のではありますまいか?
もしもやおい・ショタを読み解こうとな
さっている方が居るのならば僭越ながら
申し上げます。せめて参考図書の1冊なり
とお読み戴いた上で臨まれよと。
私自身が今苦吟しておりますが、やおい・
ショタを本当に読み解こうとするならば
参考図書の数はそれこそ浜の真砂の如く
必要となります。参考図書のつながりを
手繰れば手繰るほど範囲は広くなりまし
ょう。
生半可な知識で読み解いた振りをして悦
に入るよりは素直に感じて萌える事をお
薦めします。

殿方が自らの萌えを素直に受け入れられ
ないのは男性同性愛者(以下ゲイ)諸氏
と同列に見られたくないという拒否反応
に起因するのでしょうが、これは傾向を
ご存知無き故の短絡かと思われます。
ゲイ諸氏の雑誌にもコミック作品は掲載
されておりますが、その傾向の中心はあ
くまでも筋肉隆々としたやおい用語で言
う『筋肉萌え』中心の世界であって、や
おいとは似て異なるものでございます。
かつてそれらの雑誌に作品を発表されて
いた女流作家(本編第七回傍注2参照)
でさえも作品傾向は筋肉萌えと呼ばれる
ものでした。
その傾向の違いを考えた上で躊躇っても
遅くは無いと思われます。
ゲイ諸氏にやおいが受け入れられ始めた
のは極々最近の事なのです。過去には、
筆者も寡聞にして存じ上げませんでした
が「やおい論争」(※1)なるものが勃発
し論戦が繰り広げられていたと言います。
自分が身を置いている世界ながら、やお
いというものの奥深さに溜息が出そうで
す。甘くもあり苦くもある溜息ですが。

ここまで綴ってみて改めて思うのですが。
殿方が『男のまま』でやおいを愉しもう
となさっているのはどうしても無理があ
るのではないでしょうか。
男である事を捨てきれぬが故に上記二点
の様な齟齬が生まれる様な気がしてなら
ないのです。ゲイの方への拒否反応の場
合は男である事を意識するが故の自意識
過剰とも思えますしね。
殿方増加の影には抑圧からの解放を求め
る男性増加の影響が有ったのかと漠然と
思っていただけに、この考えに至ったの
は我ながら意外でした。
かく言う私かやおい作品を愉しむ時はど
うかといえば、男でもなく女でもなく、
強いていえば腐女子という存在になって
いる様な気が致しますね。
性差に拠るものを考えるのは愉しみから
少し醒めた時であって、瞬間は只妄想の
世界に遊んでいる様な心地、と申し上げ
れば良いでしょうか。
妄想の世界にまでしがらみを持ち込むの
って、嫌ですしね。

以降は次回講釈にて。

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※1
1992年以降勃発したらしい。
やおい=フェミニズムの発露と考える方々と
ゲイの方との論争であったらしいが、
WEB上での関係記述までしか今の所筆者は確認
していない。
やおいの事を考えるのに重要と思われるので
今後関係資料をみて置く様に心掛けたいと思う。

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仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
増刊第九回  2003.9.7発行

文責:葡萄瓜XQO
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