仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
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本編第五回 混迷黎明
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ごきげんよう。葡萄瓜でございます。
予告からタイトルが変更になりました事、深く
お詫び致します。あのタイトルの様な状況を描
けるには今少し時間が掛かりそうです。
では、黎明期であり混乱期でも在ったあの頃の
記憶を紐解いてみたいと思います。
キャプテン翼、聖闘士星矢の後に続いた(アン
ソロジーを巻き込んだ)大きな波は天空戦記シ
ュラト(※1)と鎧伝サムライトルーパー(※2)
でした。
思えばここからアンソロジー迷走曲、なるもの
が始まっていたのかも知れません。
実際、キャプテン翼にせよ聖闘士星矢にせよア
ンソロジーに掲載されるのはあくまでも同人誌
作成現場の反映であり、原作及びアニメーショ
ン製作側の事情は原作掲載誌及びアニメ情報誌
から入手する、と言うのが原則だったと思うの
です。
同人は同人、原典は原典。原典で出来ない遊び
は同人で補完する。それが暗黙の了解だった様
に思います。
一部アニメ情報誌で「声優さんとデート」(※3)
なる暴走企画も出てましたが、あくまでもそこ
まで。双方共に敢えてコンタクトは取っていな
かった筈です。
それが崩れ出したのがこの頃…と言ってもキャ
プテン翼で起こった波からそんなに経ってなか
ったんですね。
実際、シュラトアンソロジー辺りから製作側と
同人側との出版上でのコンタクトが始まった様
に思います。アンソロジーにアニメ情報誌的な
要素が少し混じりだしたと言う感じですね。
それでもまだ同人は同人でしたし原典は原典で
した。アンソロジー発行者にムービック(※4)
辺りが参戦しだした程度で、青磁ビブロス及び
ふゅーじょんぷろだくとの二社市場寡占状態は
続いてましたし。
それがサムライトルーパーの登場でかなり様変
わりしました。
サムライトルーパーは見事に同人と商業の壁を
壊しましたね。良い意味でも悪い意味でも。
商業誌上で展開される同人手法(他作家による
ファンアート【※5】掲載等)や同人誌アンソロ
ジーに出演声優陣のインタヴューが掲載される、
同人誌的内容が前面に押し出されたファンムッ
ク(※6)の乱立等。
アンソロジー出版に参戦する会社も又若干増え
てきました。が、青磁ビブロスの様にアンソロ
ジーを専門に発行する会社が創設された訳では
なく、今まで製作側の近くにいた会社がノウハ
ウを活かして副業的に参戦した、と言うのが実
態だったのでしょう。例えばラポート(※7)
の様に。
そして、この時期やおいは同人誌アンソロジー
から一時的に消えるのです。シュラトでは一応
やおい作品存在の確認はできますが、サムライ
トルーパーでは殆どと言って良い程やおい作品
は再録されていません。微かに匂わせてはある
様ですが。
原典と馴れ合った弊害、というべきなのでしょ
う。尤もアンソロジーに再録されなくなったと
言うだけで各ジャンルのやおい作品が消滅した
訳ではありません。寧ろアンソロジーの制約が
無い分だけ同人誌上の展開はかなり暴走気味だ
ったのではないでしょうか。ショタコン展開
(※8)もありましたしね。
そして、平行してオリジナル作品隆盛の波も又
徐々に起こるのですが、その辺は又追々に。此
度は此処迄にさせて戴きます。
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※1
89年4月〜90年1月放映。
インド神話をモチーフにした戦隊物的アニメ。
サムライトルーパー程では無いが同人と商業の梯にな
ったと思われる作品。
※2
88年4月〜89年3月本放送、後91年にかけてオリジナル
ビデオ作品製作のSF伝奇活劇アニメ。
同人視界に与えた影響が大きいとされるが、それ以上
にこの作品によって商業と同人の往来・一種の癒着が
拡大した感も否めない一里塚的作品。
声優各位による各種ユニット結成もこの作品がきっか
けではなかったか?
※3
掲載誌は定かに覚えていないが、聖闘士星矢出演の主
役クラス五人との読者参加デート企画と言うのは記憶
の隅に残っている。
※4
アニメーション・コミック関連商品取扱会社、(株)ア
ニメイトのグループ企業。自社アニメーション製作・
グッズ製作・プロモーション展開等を手がける。
アンソロジー等に関っているのはその内の出版課。
83年10月設立との事。
※5
仕事として持ち込まれたものも多かったのだと思う。
只、同人を知らない人間にしてみれば原典以外のそう
言うイラストはファンアートと認識してしまうのでは
あるまいか。
*ファンアート:FanArt
(非公認の)ファンによるイラストを指す。
※6
アンソロジーよりも多くの情報掲載を狙ったものだろ
う。
しかしその旬は短く、サムライトルーパーアンソロジ
ーの減少と共に姿を消していった様だ。
※7
ラポート株式会社。現ラポート出版?
公式にはふぁんろ〜ど誌(ショタコンの語源発祥地と
なったアニメ情報誌。現ファンロード)の版元として
知られる。又、出版するアンソロジーの傾向は比較的
健全。
本稿脱稿現在までネット上を検索するも詳細不明。
こんな註で申し訳ありません。
※8
増刊号第六回参照。主人公グループのマスコット的
存在であった山野純少年を受身に設定した作品が存在
した。
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仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
本編第五回 2003.7.15発行
文責:葡萄瓜XQO
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