仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
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本編第六回　　手探り弄り
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ごきげんよう。葡萄瓜でございます。
今回は若干発行させて戴きました。
では黎明期であり混乱期でも在った頃の
記憶を紐解いてみたいと思います。
此度はオリジナルアンソロジー編です。

とは言っても、実は私の記憶も当時のオ
リジナルアンソロジーに関してはパロデ
ィに関する記憶に輪をかけて曖昧模糊と
しています。
手元にある資料の中で恐らく最古のオリ
ジナルアンソロジーであろうと思えるの
は桜桃書房刊行の『BOY'S＆BOY'S』の様
です。90年7月10日発行となってますね。
この時点で既に連載の可能性を持った作
品は収録されていません。内容的な面か
ら言うと、最初から結構濃厚ではある様
です。
ここでふと気になる一言が。
編集後記をみるとこの本は後発誌らしい
のですが…実際の所この時代にやおいの
オリジナルアンソロジーが他に在っただ
ろうかと考え込んでしまいましたね。
健全な方向でのアンソロジーならあった
覚えが無いでは無いですが、きちんとし
たやおいとなるとどうにもまだまだパロ
ディ方面に負う部分が大きかった様です。

では、パロディに飽きた人達はどんな作
品を読んでいたのか。
その回答の一つの形が88年10月5日創刊さ
れた月刊JUNE増刊『ロマンJUNE』(サン出
版刊行)です。同じ版元から出版された男
性同性愛雑誌『さぶ』に掲載された比較的
やおいに近い世界を持つ作品を多数収録し
たこの増刊シリーズの編集方針は、現在で
もマガジンマガジン社（サン出版グループ
のボーイズラブ部門的位置付け）刊行の
『Boy'sピアス』（※1）シリーズや『コミ
ックJUNE』（※2）誕生の礎ともなりました。

映画の世界からの思わぬ影響も在った様で
すね。87年公開の映画『モーリス』のヒッ
トが良い例かも知れません。
二次元上でしか存在しないと思われていた
美形男性同士の恋愛が（架空の物語とは言
え三次元で展開される…それは一種カルチ
ャーショックだったと思われます。
JUNEのグラビアページで演じられた映画の
様な場面でさえ霞んでしまった事でしょう。
日本でも『1999年の夏休み』（※3）という
映画が製作されましたが、これは少女達の
演技に声優が声を当てたというもの。言わ
ば三次元のアニメーションです。
アニメーションといえば竹宮惠子作『風と
木の詩』がビデオアニメ化されたのもこの
頃です（87年）。
こうしてデータを思い出しつつ拾って観る
と商業に於けるオリジナルやおいの時代と
言うのは、紙媒体先行ではなく他の媒体か
らジワジワ外堀が埋まって行った様な気が
します。私の気の所為かもしれませんが。

では、そう大して進行はしておりませんが
此度はこれにて。
8月15日発行予定の本編はお盆と言う時期
ですのでお休みさせて戴きます。
8月末までに号外若しくは増刊を発行する
かも知れませんが、とりあえずそれまで暫
しのお別れで御座います。

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※1
97年3月1日創刊のJUNEのイメージを一変した
作風満載のコミック雑誌。
扇情的なBLコミック時代の中心を担う雑誌で
ある。

※2
92年7月5日付で同名のJUNE増刊が発行されて
いるが、全くの別物と考えた方が良い。
97年8月5日創刊の『Boy'sピアス』シリーズの
延長線上にあるものと考えるべきだろう。

※3
88年松竹配給。現在DVD化されている。
『トーマの心臓』（萩尾望都作/74年初出/小
学館文庫）をモチーフにした作品であるとの事。

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仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
本編第六回　　2003.7.30発行

文責：葡萄瓜XQO
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