仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
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本編第七回  依存か妄想か
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ごきげんよう。葡萄瓜でございます。
それでは頼りない記憶を何とか紡いでみる事に
致します。

私の記憶からオリジナルアンソロジーの一群に
関する記憶がすっぽりと抜け落ちているのは、
いまだパロディー方面の勢いが強かった所為も
あるのでしょう。
それに加え、激しい性的描写を追求する為には
オリジナルアンソロジーという舞台はまだ上品
に過ぎたのではあるまいか、と。
その辺りを追求する為にはレディースコミック
(※1)誌上の作品群に紛れるか若しくは男性
同性愛者向け雑誌『さぶ』に男性名義で作品を
発表する(※2)必要が在った様です。
そして大きなポイントとして。
やおいと縁の無い日常からやおいにのめり込む
世界に一時的に移住する為にはパロディー作品
という媒体は不可欠だったのではないでしょう
か。

オリジナル作品から世界にのめり込もうとした
場合、作品世界のお約束が理解出来ていればス
ムースにのめり込める筈です。
ですが、当時商業上で発表されていたオリジナ
ル作品はお約束を把握するにはページ数が短す
ぎ(しかも多くは単発)たり、それまで同人誌
で展開されていた世界をそのまま引き写してき
たりとあくまでも同人誌が資金を得て商業誌に
なったと言う感じだったのですね。
余程の愛読者では無いと最初からのめり込む事
は少し難しかったのではないでしょうか。
そこでのめり込む事の媒体としてパロディーが
用いられたのでは無いか、と。
当時はまだ原作を観てからパロディーを知ると
言う図式(※3)が何とか成立しておりました
から。
もっともそれには放映枠という大きな壁が存在
しておりました。現在でもそうですが、一つの
作品が全国一斉に放映されるという事は却って
稀なのですね。
その放映枠の壁を越えて多くの視聴者を勝ち得
た作品がブームの主流となるジャンルになって
行ったのです。まだTVアニメシリーズのビデオ
化が商法として成立していない時代の事です。
録画ビデオの相互融通やアニメ情報誌の相互融
通が盛んに行われていた、と風聞では聞いてお
ります。
知らない作品には同人で決して手を出さない。
そう言う不文律もしっかり守られていたような
記憶もあるのです。その代わりどんなマイナー
な作品の同人化でもどんどん呑み込むと言う貪
欲さもこの世界には存在しました。
ジャンル(※4)の大きさ=アンソロジーの冊数
という時代でもありませんでした。が、一つの
目安ではあったのでしょう。
又その当時、主流ジャンルがサムライトルーパ
ーや天空戦記シュラト、新世紀GPXサイバーフォ
ーミュラーだった頃の話ですが、同人アンソロ
ジーとは別の枠組みで単行本として同人作家に
拠る作品が商業流通に乗った事もありました。
流石にこれらの作品に関しては原作側からのお
墨付きが付いた様です。その代わり非常に健全
な内容でしたが。一種の漫画化作業ですね。
そしてこの辺りから同人アンソロジーは短い秋
の時代を迎えた様です。サイバーフォーミュラ
ー以降のスラムダンク・幽遊白書の2作品は同
人的にも人気を誇りながら、アンソロジーの冊
数はトルーパーに比べて控え目でした。
平行して同人アンソロジーの出版基準は緩んだ
様で、新興の出版社から今まで大手とは言い難
かったジャンルのアンソロジーが出版される傾
向が出てきました。機甲警察メタルジャックが
その好例です。
秋といえば秋の時代でしょう。内容的に健全を
選ばざるを得ず、同人誌の現場とアンソロジー
の温度差が広がった時代なのですから。

ただし、如何な同人アンソロジーでもその当時
手を付けようとしなかった分野はあります。
現在生存している人物から想を得た同人作品群、
専門用語で言う『生もの』と小説(主にミステ
リ)を題材にした同人作品群がそれです。
今でこそ小説同人アンソロジーも生ものアンソ
ロジーも存在はしますが(※5)、当時はまだ
まだ壁が厚かった様です。

さて、そう言う時代がありましていよいよ雑誌
の時代となってくる訳でございますが、今回は
ここまで。
次回本編は間違いなく9月15日発行の予定でござ
います。
号外や増刊はどうしたというお叱りも多数有るか
と思います。其れ等もこの盆休みにて養った鋭気
で鋭意こなして行くつもりですので、何卒温かく
見守ってやって下さいませ。
では、次回本編第八回にてお会いしましょう。

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※1
本当にさりげなく男性同士の性描写のある作品が
紛れ込んでいた。
レディースコミックをメイン発表の場にしている
作家も少なくないのでは無いか。

※2
神崎竜乙(別名義にて)や村野犬彦等が代表的か。

※3
現在の様にアンソロジーが月間平均10冊出るとい
う時代ではなかったのでまだこの図式が成立して
いたと思う。古書店での同人誌及びアンソロジー
の扱いが少なかったからと言う事もあったのだろ
う。

※4
漫画同人誌の世界では分野という以外にパロディ
ー作品の一群を原作毎で分類したものを総称して
ジャンルと呼称する。

※5
生ものアンソロジーで筆者が確認済みなのは2冊。
ふゅーじょん・ぷろだくとからシリーズ物として
刊行されていた。

*今回、ジャンルの基幹となる作品関連の註は省略
しました。
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仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
本編第七回  2003.8.31発行

文責:葡萄瓜XQO
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