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仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
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本編第十四回  電脳の罠
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
回想もそろそろ終わりが見えて来た様子。
昔語りに今少しお付き合い戴ければ幸い
です。

さて、やおいBL雑誌の供給が安定し、ショ
タコンもブームではなく一区画として認知
され出した頃、同人作品の発表の場は又一
つ増える事となりました。
電脳の世界、インターネット上でのサイト
繚乱時代が始まったのです。

それは実際の所、画期的な手法であったと
言えるでしょう。
作家と読者の間を阻む時間と距離の壁が回
線1本で容易に取り除かれ、又一読者が一
夜明ければ作家にもなれる世界。ともすれ
ば拡散しかねないジャンル内の結束もネッ
トを通じて強固にする事が可能となりまし
た。
私がネット経由で同人に参入した頃(00年
初頭)以降は更に参画しやすい条件が揃い
出したと思います。
無料レンタルのサーバスペース・掲示板・
チャット…中には必要と思われる設備を
全て込みで借りる事のできるフリ−スペー
スもありました。メールアドレスもフリー
でドメインにさえ不満を言わなければ自由
にアカウントの指定できるものが揃い出し
て来ましたし。
そう言う状況下、サイト運営をメインに活
動する『電脳同人』ともいえる人々が増え
たとしても不思議ではなかったかと思いま
す。プロ作家の方も公式サイトを持つ状況
になってきていましたし。
その頃から言い習わされてきた言葉に『オ
ン(ライン)』『オフ(ライン)』と言うのが
あります。
これは電脳世界に回線を繋いでいるか否か
という状況を示す言葉ではなく、『電脳上
での活動=オン』と『従来の紙媒体による
同人活動=オフ』として膾炙される様にな
っています。
其れ程までに浸透した電脳は、いわば同人
界の福音とも言うべきものだったでしょう。

然しながら、物事順風満帆に見えても何処
か落とし穴はあるものです。
電脳の場合、即時性双方向性という特性が
諸刃の剣となったのやも知れません。
生の侭ぶつけ合わされる言葉は、時に拳よ
りも手酷い傷を残す事があります。まして
やそれが仮初にも活字ならどれ程の痛みを
残す事か。
電脳上の同人世界に於いて、そう言う生々
しい言葉をぶつけた結果のトラブルがあっ
たと聞く度に、活字化された言葉の重みを
考えてしまいます。
又、これはごく稀な例なのですがサイトの
毀誉褒貶=自分の価値観と短絡して他者作
品の剽窃改竄無断転載で上辺を取り繕う、
という悲しい人々が現れる様になった、と
いう事も言い添えておかねばなりません。
そう言う中で私もミステリ小説ジャンルの
サイト様経由で自ら二次創作に手を染める
事となり、00年の晩秋からサイトの運営者
として活動する様になっていました。
まさかその当時は、自らメールマガジン発
行にまで手を染めるとは露とも思っていま
せんでしたが。

では今回はこれにて。
次回は年の瀬も押し迫っておりますが予定
通り大晦日にてお目にかかりたく。
御機嫌宜しゅう。

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仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
本編第十四回 2003.12.15発行

文責:葡萄瓜XQO
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