仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜
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第一回 やおいに会う前
ごきげんよう。葡萄瓜でございます。
では、記憶を紐解いてゆく事に致しましょう。
私が同人誌と言うものに出会いましたのは高校生の
時でございました。西暦で言いますと1980年代半ば
頃ですね(以降西暦は1980→80と言う形で標記します)
在籍していた高校の漫画研究部発行の冊子に触れた
のが最初でした。無論、健全な内容ですよ。
ですが今にして思うと僅かながらやおいの影は忍び
寄って居た様です。OBOG編纂による冊子には『六
神合体ゴッドマーズ』(※1)の内容示唆があったり、
又、下の学年の人達の描く物には『キャプテン翼』
(※2)に影響されたような物が有ったりと。
無論、高校の部活動の範疇ですから至極健全な物で
す。やおいと言う感覚ではなく、あくまでもアニメ
や漫画のパロディと言うものですね。
その当時辺りから珍しく私はある漫画雑誌を購入し
ていました。漫画雑誌と言うと色んな場所の待合に
置いてあるものを只で読んで済ませる人間が珍しく
雑誌を買う。しかもほぼ定期購読に近い頻度でです。
その雑誌とは、『アニパロコミックス』。みのり書
房を版元とするアニメ情報誌『OUT』の増刊にして
(当時恐らく)唯一公的にアニメ・漫画パロディー
内容を扱う雑誌でありました。
公的にパロディーを認められている、と言う事は下
手な暴走は出来ない訳です。男同士の恋愛描写なん
てそれこそ神をも恐れぬ暴挙な訳ですね。
ですから万が一にもやおい的な描写があったりする
と編集部の人がツッコミを入れていたのです。
『やおい禁止!』と。
皮肉な事に私は其の禁止ツッコミを良く見かける事
によって『やおい』なる分野の存在を知り、興味を
抱いてしまったのです。軽い目の紹介(※3)なら
読者ページに飛び交ってた記憶がありますし。
そして、月日は一応平穏無事に過ぎて受検シーズン
に至ります。
そこで起きてしまった平穏無事でない出会い。
私は、『耽美』と遭遇し、そして『やおい』と遭遇
したのです。
以下次号にて。
次号予定内容は『Tの恐怖』です。
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※1
横山光輝原作によるTVアニメーション。
81年10月〜82年12月/NTV系で放映。
映画版 82年12月公開/配給・東宝東和
88年にOVA『十七歳の伝説』が発売された。
主人公である明神タケル(マーズ)を
受(うけ:やおい展開上で女性役に相当)
と設定したやおい同人誌が多くでた。
少なくとも筆者の知る限りでは明神タケルが
受以外を演じたやおい同人誌は見た事が無い。
※2
高橋陽一原作によるTVアニメーション
83年10月〜86年3月/TV東京系で放映。
当時4作の映画オリジナル作品が公開されていた。
89年7月〜90年7月にかけてOVA『新・キャプテン
翼』発売(後テレビ東京系にて放映)
94年10月〜95年12月?にフジTV系列にてリメイク
作品『J』が放映(筆者半ばまでしか観ておらず)
更に01年10月〜02年10月TV東京系にて新たに
リメイク補完作品として放映される。
原作は当初週刊少年ジャンプ誌上にて連載され、
一旦幕を引いたものの断続的に再登場し、最終的に
系列青年誌『週刊ヤングジャンプ』誌上連載と言う
運びになっていた。
やおい同人誌界に於いても影響は大きく、
中学生になったキャラクター達の設定を転用して
様々なヴァリエーションの『関係』が描かれた。
後日配刊予定分にてやおいに於けるこの作品の
影響関連の注を掲載。
*『アニパロコミックス』『OUT』については
詳細割愛。アニメ雑誌に歴史を見た方が早い
かも知れません。参考になりそうな資料が
見つかりましたら追々ご紹介します。
※3
言葉としての紹介でした。
世間によく流布している『やま無し、おち無し、
意味無し』の頭文字説ですね。
そのバリエーションの『やめて、お願い、いや』
や『やらし、おぞまし、いかがわし』も
同じく読者頁で見かけた様な気がします。