仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜

増刊第一回  アニパロコミックスとその周辺

ごきげんよう。葡萄瓜でございます。
早くも臨時増刊号発行と言う運びになりました。
私が『やおい』と言う言葉を知るきっかけになった
『アニパロコミックス』とその周辺について手持ち
の情報を継ぎ合わせて補足説明を試みてみます。

私が購入を始めた頃のアニパロコミックス…通称
APCは丁度安定期だった、と言うべきでしょうか。
OUT増刊と言う色彩よりも単独雑誌としてのAPC
色が前にで出した頃です。作家さんの顔ぶれも
安定していたし。
ひょっとしたら私は異端の読者だったのかも知れ
ません。本紙である筈の『月刊OUT』には殆どと
言って良い程関心が行かず、只管パロディー掲載
のAPCにのみ関心を向けてましたし。
そう、APCは好調であるかに見えました。投稿
部門が独立して『アニパロコミックスJUNIOR』と
言う雑誌になり、オリジナル作品の発表の場とし
て『PALLE』と言う雑誌が創刊され…(そうそう。
APCもJUNIORもPALLEもA5判でした)。
APCといえばゆうきまさみ(※1)・JET(※2)等
(敬称略)を輩出したと言う情報もありましたね。
93年に三誌とも御破算に為ってしまった様です。
一時『and now』と言う準備号らしき雑誌を見か
けましたが以降はどうなっているのでしょうか。

APCでやおいが禁じられていた背景については
『編集長の方針』と言う事で大抵説明が終ってい
る様ですが、一つだけ会社ぐるみの原因を勘繰
る事は出来ます。
それは『ALLAN』と言う雑誌の存在です。1980年
にみのり書房からJUNE(※3)の対抗誌として?
発行されたと言うその伝説の耽美雑誌はみのり
書房からあっという間に姿を消し、誌名・版元を
変更しながらも復刊休刊を繰り返していると言い
ます。『月光』『月の光』『牧歌メロン』『ラッ
キーホラーショー(LHS)』『月光文化』等。
もはや耽美と言う域を超えてカルトと言う域に達
しているのでは、と思えるのです。
(見て来た様な嘘をついているのなら洒落になる
のですが、『牧歌メロン』の頃に実は目にしている
のです。…確かに、濃いです)
恐らく、その轍は踏むまいと言う社内通達があっ
たのかも知れません。
ですが、やおい禁止の封印は後年あっさりと破ら
れる事になります。竹書房から刊行されたショタ
コン(※4)アンソロジー『テディボーイ』にはAPC
の主力作家が結構参加してましたから(苦笑)
変名にしたとは言え…其の変名が余りにも判り
易くてしかも絵柄に変化が無ければ変名の意味
が無いでしょう!
やおい禁止と言う建前はひょっとしたらやおいの
隠れたアピール方法だったのかな、とも今勘繰
ってみたりします。
では、此度はこれにて。又月末の本編二号にて
お会いしましょう。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

※1
『究極超人あ〜る』『機動警察パトレイバー』の作者と
して有名なマンガ家。
APC周辺に居た頃のオリジナル作品は『ヤマトタケル
の冒険』だったかと。
公式サイトあり。リンクは貼りませんが。

※2
横溝正史作の金田一耕助ものを始めとしたミステリの
コミック化について定評のあるマンガ家。
現在角川スニーカー文庫で復刻されている横溝作品の
カバー絵はこの人の手によるものだったかと。
同じく角川書店あすかコミックスより横溝作品のコミック
化及びエラリー=クイーン作品のコミック化作品等が出
ている。

※3
78年10月に『ComicJun』として創刊された作品発表を
基とした少年愛雑誌。79年2月発行第3号にて『JUNE』と
誌名変更。実在するJUNと言う洋品店からクレームがあっ
た為に『作家ジャン=ジュネに倣い』と言う理由の下の改
称だった模様。
以後一旦休刊するものの81年に復刊し、耽美方面の情報
誌・作品発表の場としての王座を守り続けるも本誌は95年
に休刊。小説専用誌『小説JUNE』は継続。コミック専門誌
『コミックJUNE』も成立し、ブランド名に揺るぎは無いか?
版元は当初株式会社サン出版。後に系列の株式会社マガジン
マガジンに移行。サン出版は男性向け同性愛雑誌『さぶ』の
版元でもあった。其の関係かどうか、『さぶ』からの再録作
品を中心にした増刊『ロマンJUNE』を88年から刊行。これが
現在の『ピアス』誌系統の源流になった模様。
又、同誌から『JUNE』と言う分野分けも成立している。
意味する所は『耽美』とほぼ同一(後日詳細)

※4
ロリコン(ロリータ・コンプレックス;少女偏愛の状態を示す
心理学用語:のサブカルチャー的短縮形)の対抗語、(半
ズボンを着用する様な年齢の)少年偏愛を指す語として
81年5月アニメ情報誌『ふぁんろーど』誌上にて考案発表
されたもの。SF活劇アニメ『鉄人28号』の主人公金田正
太郎少年を語源とする。正式には『正太郎コンプレックス』。
『ショートアイズコンプレックス』の略称であるとの説が『現
代用語の基礎知識』99年版・00年版に掲載されたが、これ
は75年アメリカで発表された戯曲『ShortEyes』(刑務所内
俗語で『児童暴行犯』)からヒントを得た造語では無いかと
思われる。後日補足予定。

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