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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第五回  やおいと「男」の距離(四)
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
では、ゆるゆると雑談をさせて戴きましょう。

男性のやおいショタ観と性愛観念とは切り離し
て考える事は出来ないのかと稿を進めつつ思う
昨今であります。
筆者も男ですから、気持ちは判らないでもない
です。が、性愛描写の無いやおいショタ作品に
一顧だにしない、若しくは性愛妄想を差し挟ま
ないと対峙する事が出来ない自称愛好家の姿を
見ると、どこかポイントがずれているのではな
いかな、と思う時があります。
彼等はやおいショタに一体何を求めているので
しょう。
お手軽な倒錯感覚?それなら男女ものの作品で
も得る事は出来ます。背徳感?それも又男女も
ので得る事は可能かと思われます。
性愛観の間に漂う何が彼等をひきつけるのでし
ょうね。創作に携わっている男性陣の気持ちは
想像できるのですが、年々増加する愛好家諸氏
の心理は時々見えなくなる時があります。

ゲイ感覚を嫌がる男性同志でも、時に愛情と見
間違えるような親密さで結びついている事があ
ります。例えば体育会系の人々によく見られる
擬似家族感覚ですとか。或いは濃厚なスキンシ
ップを伴う友情表現ですとかね。
やおいショタを愛好する自称『ノーマル』(註1)
な人々の感覚というのは、もしかすると伝聞上
の男子校校内の性欲発散に似通っているのやも
知れません。性欲は発散したいけど、然るべき
手段は取れないので同性間で擬似情交行為に及
んで鎮静化させる、という感覚でしょうか。
ただその同性の相手と言うのが三次元の存在で
はなく、二次元の偶像であったり電脳擬似生命
体であったりするだけなのでしょう。彼等は三
次元に対して異議を差し挟むような事も無いで
しょうし。

と、この稿で此処迄愚考した例というのは無論
極端なモデルケースです。恐らく大半の愛好家
と言うのは、やおいショタの物語の登場人物の
心情に惹かれ、つかの間でも彼等と時間を共有
したいと考える情緒豊かな人々なのでしょう。
一応実際に創作に携わっている人間から言わせ
て戴ければ、やおいショタで描かれる愛情と言
うのは男女間の愛情描写よりも懸命な部分もあ
り、又ドライな部分もあります。懸命なのは結
ばれた証を形として残せない為。ドライなのは
友情の延長である為と解しつつ描いております。
性愛が絡んでも、濃厚な部分もありますがドラ
イな部分の描写も欠かせないと思っております。
相手が居るといっても時には鏡に向かって自慰
をしている様なものですから。
又、愛情以前の未分化な感情を描く事も欠かせ
ません。その感情の全部が全部愛情に育つ訳で
はなく、時には友情や敬愛止まりになる事とて
もあるのです。いえ、ひょっとしたら単にじゃ
れあいに終わるだけと言う事も、時にはあるの
です。
やおいショタに性的描写が欠かせないのは、か
つて純文学と言われた文芸の一群が性描写を会
話代わりに描いていたのと同じ様な理由かも知
れません。千言を尽くすよりも一つの仕草が雄
弁な事は、良くある事でしょうから。

やおいショタをスナック菓子感覚で貪って戴く
のも観客の皆様の自由です。でも、時にはゆっ
くり味わってみて下さい。スナック菓子の味付
けとて、やっつけでやってる訳ではないのです。

では、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせ
て戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
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註1
便宜上『ノーマル』という語を用いたが、男女
の組み合わせ=ノーマルとする事は無知からく
る誤謬であると筆者は思っている。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第五回 2004.2.20発行

文責:葡萄瓜XQO
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