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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第八回  たどり着いたらそこは現実 
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
では、ゆるゆると雑談をさせて戴きましょう。

今暫くやおいショタのオーディオビジュアル媒
体についての雑感をお話させて戴きたく。見当
違いな処もあろうかと思いますがお付き合いし
てやって下さいませ。

やおいショタというのはほぼ周知されている様
に一種の空想譚であります。が、空想譚だから
といって現実にある問題から目を叛けて語り続
ければ良いかというとそういう訳にも行かない
のです。時には人間関係の闇の部分も描かねば
なりませんし、性的な部分の暗部もまた描かね
ばなりません。やおいと呼ばれる前のやおい…
多く耽美と言われていた頃の物語に於いては同
性間の恋愛に対するジレンマが通奏低音の様に
付き纏っており、やおいの通称成立以降もその
暗部と言うのは拭い去られずに残っております。
ボーイズラブ成立以降はその重く付き纏った部
分から解放された(やおい耽美に比べれば)爽
やかな恋愛模様が描かれておりますが。
これは私事ですが、ボーイズラブが成立したの
はやおい愛好家が現実の同性間の『関係』に付
き纏う澱んだ部分を排除したかったからではな
いか、と思っていたのですね。
でもそれは少し見当違いだった様です。何故な
らオーディオビジュアル媒体の成立によって、
ボーイズラブと現実は図らずもリンクする機会
が増えてしまっているのですから。
そして、一部では奇妙な逆転現象すら起こって
いる感があります。紛れも無く重い現実を描い
た筈の作品が、ボーイズラブ若しくはやおいの
延長線上に認識されていると言う現象が。
ボーイズラブ映画・やおい映画・やおいビデオ
…これらの呼称によって極一部で指されている
媒体は皆三次元の男性同士が性的な部分を演じ
たりしている物語です。但しそれらはあくまで
も登場する人々が美形であるが故にこう呼ばれ
ていると言うのが現実なのですね。
名称借用による混乱なのか、それとも敢えて混
同させたのかは定かではありますまい。只一つ
言える事はその現象がゲイセクシュアルの方々
とボーイズラブとの間に浅からぬ溝を刻み込ん
でいると言う事だけです。ゲイセクシュアルの
方々には楽しくも苦しくも現実であるにも拘ら
ず一部のやおい愛好家が勝手な幻想の物差しを
以って詮索し否定して行くでは良い心持がする
筈はありません。
そう言う物の見方を許して下さる寛容なゲイセ
クシュアルの方も極々僅かですが居るでしょう。
然しながら、こう言う呼称叉それを受け入れる
土壌が極一部とはいえ存在すると言う事は、や
おいが現実を糧としながらも一面では現実を否
定している矛盾した空間の中に存在する文化で
ある事を表す一事例だ、とも思えるのです。
美を追求するのに二次元で飽き足りなくなった
からと言って、現実を粘度細工の様に歪ませて
良い、筈はありませんものね。
筆者とてやおい世界の住人です。
でも、現実に生きている人間でもあります。
どうせ幻想を味わうなら、後味良く味わいたい
のですよ。この現象は生ものやおい(註1)とは
一線を画した物と感じておりますし。

では、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせ
て戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
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註1
実在する芸能人・スポーツ選手などメディアに
登場して活躍する人物を登場人物としたやおい
創作。当然の事ながら当人非公認の事が多く、
アンソロジーが成立する事などもっての他と言
う分野である。にも拘らず、人物名を仮名扱い
にした同分野アンソロジーが過去に二冊ふゅー
じょんぷろだくとから発行されている。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第八回 2004.3.20発行

文責:葡萄瓜XQO
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