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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第十二回  保存版の是非
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
では、ゆるゆると雑談をさせて戴きましょう。

皆様、愛読している雑誌の保管、如何なさって
おられますか?雑誌は本ではないという事であ
っさりと捨て去り、連載記事が単行本化される
のをじっと我慢の子でお待ちになりますか?
一般誌や普通のコミック雑誌については其れで
安心できるのです。大手出版社が版元ならば尚
更。
しかし、やおいBLショタ雑誌となると事情が少
々変わって参ります。これらのジャンルでは余
程の実績が無い限りは作品が纏められて単行本
化されるという保障は無いのですから。それ以
前に何時雑誌が廃刊になるかという言い知れぬ
不安感もあるのですが。
その不安の現れもあってでしょうか。新規アン
ソロジーシリーズはよくよく創刊されても新規
雑誌が創刊され難いのは。アンソロジー形態な
らば保管にも充分耐えるので単行本が出難い時
の保障にもなりましょうし。
今回はその風潮の中で珍しく、出版社サイドか
ら雑誌のバックナンバーが保存版として再販さ
れた例を題材としてお話ししたく。

かつて、光彩書房(往時一水社)から出版され
ていた雑誌、『manga純一』の好敵手的な存在と
してひかり出版(後ヒカリコーポレーション)
から出版された『ブレス』と言う雑誌がござい
ました。創刊は『ブレス』の方がやや早く、そ
して廃刊もまた『ブレス』の方が早かったので
すが。(註1)
『ブレス』誌の保存版は96年9月25日創刊号分
を皮切りに96年12月5日『Specialロリショタ特
集』まで14冊にわたり発行された訳ですが、こ
の発行された事情というのは未だに今一つ腑に
落ちないのですね。今にして思えば版元再建の
資金源として企画されたものだったのかも知れ
ません。
ともあれ、この保存版シリーズは散逸しがちな
雑誌収録作品を保管する手段として有効であっ
たと思われます。少なくとも、雑誌よりは良好
な状態で作品が市場に流通するのですから。

ただ、問題が今から見返せば二点あります。
一つはサイズの問題。文庫版であるので作品に
よっては印刷の加減で細部の繊細な描写が潰れ
がちになるのですね。しかも無理やりA5版を
文庫版に収めようとするものですからページの
余白もヘッタクレも無いのです。結果として、
作品の凡そは判りますが完全な再録ではなく、
一部を破損した再録であると判断せざるを得な
いものになってしまいました。
もう一点は作品採録のみを優先に考えた為、文
献として役立つ部分がばっさりと切り捨てられ
てしまったのですね。
広告欄と読者投稿欄が再録されていないのは致
し方ないと思います。投稿欄も一種の著作物で
す。再録にあたっては意思確認を取る必要は御
座いましょう。同人誌紹介欄の割愛も仕方がな
いと容認致しましょう。情報は新鮮さが命です
から。
しかしながら、作品とほぼ同等の重みがある筈
のコラム・エッセイが再録されていなかったり
すると言うのは少々戴けないと思うのです。
以上を鑑みると、A5版での保存版が何故出来
なかったのかと今更ながらに疑問に思ってしま
います。初期およびSPECIALの形態(カバー付
アンソロジー形態)ならば再版と言う形で対応
出来た筈です。作品の隅が切れた状態での再版
も無かった事でしょう。価格にしても文庫であ
るメリットの無い価格設定(註2)でしたし。
これはあくまでも私見ですが、以降シリーズア
ンソロジーが雑誌と並行して流通し続けたのは
『ブレス』保存版のデメリットを鑑みた上での
各社の戦略だったのかも知れません。
やおいBLショタの連載作品が単行本に纏まると
言う事は、今以て尚至難の技なのです。余程安
定した連載基盤が無い限り。
ましてやコラムやエッセイに至っては…埋もれ
た資料は、其れこそ幾つあった事やら。
保存に適したアンソロジーの存在というのはそ
ういう点で貴重です。しかしながら、読者の立
場にしてみればその価格は経済的に大きな負担
となります。これがオリジナルアンソロジーだ
けならまだ良いにしても、同人アンソロジーも
並行して購入している方の負担は如何ばかりに
なる事か…。
良い方法を見つけるには、まだまだ試行錯誤が
必要なのでしょう。アンソロジーの存在を知っ
ていても買わないという選択肢も確かに御座い
ますが…筆者は恐らくアンソロジーの誘惑に勝
つ事は出来ますまい。読む愉しみと知る愉しみ、
保管する愉しみを満たす為に、誘惑に乗ってし
まうでしょう。

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
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註1
*『ブレス』94.5.30創刊〜97.1.17最終号発行
*『manga純一』95.8.25創刊
(創刊準備号:95.6.20発行)
2001.3.16雑誌としての最終号発行
後に『純一REAL(アンソロジー)』リニューアル
2001.5.30〜2002.11.30

註2
往時の雑誌形態定価:880円/保存版定価:680円
200円の差は何処から生まれたのだろう。  
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第十二回 2004.4.30発行

文責:葡萄瓜XQO
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