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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
☆
第十七回  あこがれ
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
では、ゆるゆると雑談をさせて戴きましょう。

やおいショタの世界と言うのは結構不思議な世
界で、プロ作家が商業活動をしつつ同人誌活動
をしていても特に違和感が無い、むしろそれが
当たり前と認識される世界であります。
アンソロジーの成立過程がそもそも同人誌の再
録から始まり、古参新参渾然一体となってやお
いからボーイズラブ、及びショタへの流れを形
成していったのです。往時この方面でプロであ
ると断言できたのは、JUNE周辺に居た一握りの
方だけだったのではありますまいか。その方々
にした所で『JUNE』という枠組故にやおいの人
という認識ではなく耽美の人という認識が強か
った訳ですが。
同人誌出身の作家さんをプロの世界に取り込も
うと言う試みが皆無だった、とは言いません。
私見ですが青磁ビブロス社(現BIBLOS)は早期
から同人発プロ行きへのレールを引いていた様
に思います。他の各社もオリジナルアンソロジ
ー若しくは雑誌を発行しておりましたが、同人
誌の延長に観えたと言う印象は否めません。プ
ロ作家製作の同人誌と言う印象を持った本さえ
ありましたし。
プロ作家による商業出版ルートで流通する「同
人」の存在は、少なくとも90年代前半までは許
されたでしょう。やおいが単にやおいであり、
ボーイズラブに変化して一般漫画・小説の一部
に食い込むまで。やおいが仇花的な同人誌の中
での波の一つではなく、一つの確固としたジャ
ンルとして認識され、定着するまでは。
商業ルートに乗っていようと「同人」と言う認
識の範疇であるならやおいという括りの中でパ
ロディ作品とオリジナル作品を地続きに存在さ
せる事は辛うじて可能であったと思います。
わざわざパロディからの派生作品をオリジナル
として不完全に昇華させる必要は無かった筈で
す。
ある種やおいと原典の蜜月期間であった、とも
言えましょう。読者も陸続きである事を許容し
ている部分はありましたし。あくまで筆者から
の視点ですが、プロに昇格した「同志」を素直
に称えている感もありました。
その時点でのやおいとは商品製品と言う認識で
はなく、交流の為に存在するものだったでしょ
うから。そこに流行に目をつけた一部商業出版
が新天地開拓とばかりに中途半端に割り込んで
きたので話が少しややこしくなります。

商業出版が介入して、その結果としてボーイズ
ラブというジャンルが確固たるものになり書籍
が安定流通する様になったのは、その世界の人
間にとっては確かに有難い話です。
ただ、素人発言を承知で言わせて戴くならばノ
ベルズ文庫レーベル・出版点数増加に伴い、売
らんかなを優先する余りに作家さん及び作品を
育てる努力を放棄した出版社が増えたのではな
いか、と思える時があるのです。
デビューしたは良いけれど雑誌掲載が続かない
・単行本が出ないと言う事で埋もれた作家さん
も相当数居ます。その存在に対して、商業出版
側からフォローがあったという話は寡聞にして
聞きません。作家さん側にも無論プロとしての
矜持は求められたのでしょうが、その矜持を共
に育てようとする出版社側のフォローも大事で
あったろうに、と今更ながらに思うのです。作
家という存在に勘違いな憧れを抱いていた方も
いらっしゃったでしょう。作家になれば自分の
好きな作品だけを自分の好きな様に書けて、そ
して収入を得る事が出来る、と夢想した方々が。
確かにそう言う憧れも作家になろうとする原動
力になり得ますから否定は致しません。が、煌
びやかな面だけに憧れて創作の苦しみや締め切
りの重圧を無視して良いという話にはなりませ
ん。そういうマイナス面をあえて伝えるのも出
版社の責任ではありますまいか?

商業出版ルートでやおいショタを流通させよう
とするには良くも悪くも「読者」の存在がハー
ドルになります。同人誌の世界であれば縁故や
友誼的な部分からの販路確保が見込めますが、
商業出版においては誰もが殆どの人が無名の状
態から出発するのです。
その状態で作品の販路を開くには未知の読者の
購買欲をそそる作品を創造しなければどうしよ
うもありません。読者のタイプだって同人誌の
世界以上に多種多様になってきています。
だからこそ作家も出版形態も多数揃える必要が
あった…と言うのは判ります。が、多ければ良
いと言うものではありません。
選択肢が多くなれば相応のレベル分けをしたく
なるというのが読者の性。読者として言えばレ
ベルの低いと思われる本をわざわざ買うよりは
その代金で他の良い本を買いたいのが人情です
から。

商業作家として活動する方々はやおいショタボ
ーイズラブへの愛情を持ちつつ世間の注文に応
える努力をし、作品を商品として成立させる様
一定のレベルを保つ鍛錬を重ね、そして、出版
流通を円滑にする為の決まり事を遵守しつつよ
り良い作品を生み出そうと心を砕く職人なので
す。同人作家の方の場合、多少制限はゆるくは
なりますが、売れる事に油断して慢心してレベ
ルを下げた暁には支持者が背を向けるのは商業
出版より厳しいと思っておいた方が良いでしょ
う。
そう言う重いものを背負ってでもなお作品を生
み出し続ける方々が「作家」でありたいと思う
のは、ひとえにやおい・ショタ・ボーイズラブ
に対する愛情故にであろうと愚考します。読者
もその愛にきちんと向き合い応える必要がある
のではないでしょうか?愛のない「書評」が最
近多すぎる気がして少し気にかかります。
書評にこそ、作家さんが作品に対して注ぐ愛情
の倍量の愛情をもった読み取りが必要ですのに。
作家に憧れる時代が一段落して今度は書評子に
対して憧れる時代到来、でしょうか。

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第十七回 2004.6.20発行

文責:葡萄瓜XQO
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