★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 ☆ 第二巻拾六回 掴む言葉 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 御機嫌よう。葡萄瓜でございます。 ではゆるゆると綴らせて戴きましょうか。 今回の御題は、雑誌及びアンソロジーのキャッ チフレーズでございます。資料を追うと言うよ りもざっと観て来た感想の様なものですので何 卒お楽に。参照文献の提示もとりあえずしない 方向で進行しますので。 日頃は何気なく見過ごして居る言葉でございま すが、改めて着目しますと中々に興深いものが ございまして。 例えば流行したフレーズですとか言葉ですとか。 こちら方面の変遷を物語る鏡の役割を果たす事 もございますので。 やおいショタ方面の初期から中期に掛けて〈美 少年〉と言う語は非常に汎用的な語でございま した。兎に角男子青少年同士の恋愛が描写され ていれば〈美少年〉と冠して間違いなし、と思 われていた節さえございますね。 今にして思えば〈やおい〉〈YAOI〉と冠しても 良さそうなものですのに何故敢えて〈美少年〉 か。〈やおい〉と言う言葉の持つイメージが定 着するのを怖れていたと考えるのは少々難があ ります。〈美少年〉と冠されたメディアの表現 するものは、時に〈やおい〉よりも過激な方向 に走りましたから。 〈美少年〉と冠する事によって〈やおい〉の枠 から外れる事も出来ていたと言う面もあります。 ショタコンも現在で言うメンズラブも〈美少年〉 と言う言葉の下に収斂されていたと言う感がご ざいますから。 並行して〈ボーイズラブ〉と言う言葉も早々に 世に出ておりました【註1】。が、どうも定着率 が悪かった様です。初期の〈ボーイズラブ〉と 言う語は〈耽美〉の言い換えと目されていた感 があった様ですので。その感は言葉が遣われて 行く頻度に伴って徐々に修正され、現在の様な 形に変化して参りましたが。本格的に〈ボーイ ズラブ〉がやおいの中でも特にオリジナル作品 を指して言う言葉として認識され、キャッチフ レーズにも起用される様になるのはやおいショ タ方面の中期以降、90年代中盤の頃の事と思わ れます。〈ショタコン〉はそれより少し早く起 用され出して現在に至ります【註2】。 〈ショタコン〉は指し示す対象がほぼ明確であ った事も相まってフレーズとして割り合いに早 く定着致しましたが、〈ボーイズラブ〉は変に 広義解釈が可能であった分だけ定着するのが遅 かった様に思えます。各社各様にそれぞれ自ら の思い浮かべるものに相応しいフレーズを探そ うと迷走していたのが90年代初頭から中盤にか けての時期であったのやも知れません。〈ボー イズ〉と言うフレーズを見かける様になったの もこの時期かと。ラブではなく濃厚な友情物語 であるという含みのある語であると認識してお けば先ず間違いないかと。 只一つの括りに属する物語を指し示すのに濃淡 によって〈耽美〉〈やおい〉〈ボーイズ〉〈美 少年〉〈ボーイズラブ〉と言うフレーズが混在 し、場合に拠ってはそこに〈新感覚〉〈ロマン ス〉と言うフレーズも加わると言う、よく言え ば絢爛たる時代でした。それぞれの言葉の定義 が何処かしら曖昧な故に混在したと言う面もあ ったのでしょう。 〈ボーイズラブ>と言う言葉が収斂され、(恐ら くは)対外的な〈やおい〉の言換え語として積 極的にキャッチフレーズに導入される様になり 出したのは90年代も末になっての事。97年頃以 降であると確認出来ます。が、内部の状況とし ては〈ボーイズラブ〉はまだまだ馴染めない言 葉であったかと推測されます。この言葉の普及 浸透についてはインターネットの効用を抜きに 語る事は恐らく出来ないでしょう。2000年以降 頻出する様になったキャッチフレーズとしての 〈ボーイズラブ〉はインターネットから出てき た人達も後押ししていたのですから。 斯界の雑誌のフレーズとして〈ボーイズラブ〉 はここ数年で定着した、と確信して宜しいので は無いでしょうか。英文表記の際に〈BOYS LOV -E〉になったり〈BOY'S LOVE〉になったりと言 う事は未だに観られますが、其の指し示す所定 義は凡そにせよ浸透して現在に至っているので すから。 これからどの様なキャッチフレーズが登場する かも楽しみになって参りますね。 なお、筆者が収拾した雑誌及びアンソロジーの キャッチフレーズは連動BLOG「ショタやおい雑 記」に於いて四月中旬から五月初旬にかけて幾 つか記載しております。とりあえずの参照迄に。 これらも又いずれ纏めてみたいと思っておりま す。 さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて 戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 註1 『イマージュ』BOY'S LOVE COMIC すたんだっぷ:編/白夜書房/91.12.10初版 ISBN 4-89367-248-7 のキャッチフレーズ「BOY'S LOVE COMIC」が 現在の所、公的な初出と思われる。 註2 自由国民社発行『現代用語の基礎知識』91年版 以降02年版に至る迄〈ショタコン〉は登場。 独立項目としても適用されるのは97年版以降00年 版迄の事。但し、漫画用語として適用されたの ではなく、若者用語として適用されていた。 漫画用語としては〈やおい〉の構成要素扱いで あった。 ======================= 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 第二巻拾六回 2005.6.10発行 文責:葡萄瓜XQO website:『仇花の記憶』 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/ mail:xqo_gm@yahoo.co.jp このメールマガジンは melma! http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00090840/ メルマガ天国 http://melten.com/m/14637.html Mailux http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533 Macky! http://macky.nifty.com/cgi-bin/bndisp.cgi?M-ID=xqo メルカップ http://www.melcup.com/cgi-bin/magazine/magazine.cgi?mag_id=M000000737 マガジンすきやねん http://www.sukiya-nen.com/sys/m.cgi?id=xqo のシステムを利用して発行させて戴いています。 ご意見ご質問等はWebサイトBBS http://bbs.infoseek.co.jp/Board02?user=bxqo にて承ります。 又連動BLOG「ショタやおい雑記」も運営しております。 http://blog.melma.com/00090840/ こちらも宜しくお願い致します。 バックナンバーはサイト内にて公開しております。 再配信ご希望の場合はお手数ですがメール若しくは BBSにてご用命戴ければ幸いです。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆