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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第二巻拾七回  未知の知己
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
ではゆるゆると綴らせて戴きましょうか。

ボーイズラブと言う事象について知らないと言
う方は、このメールマガジンを読んでいる方の
中では少数派であろうかと思われます。
『現代用語の基礎知識2005』(通称『現基知』)
1110頁でも解説され、又ネット上でも解説され
たり揶揄されたり。そして出版業界(殊に雑誌
部門)に於いては新規参入も撤退も多いジャン
ルでもあります。
が、言葉がこれ程流布しているにも拘らずその
定義はと言うと途端に心許無くなるのです。其
れも其の筈、明快に定義をした文献が提示され
ていないのですから。語の発祥もほぼ確定して
いるにも拘らず、です。
今回はその辺りについて、少しお話させて戴こ
うかと思っております。

〈BOY'S LOVE〉と言うフレーズが最初に確認出
来たアンソロジー『イマージュ』の奥付には編
集子の言葉として〈男の子同士のラブミステリ
ー〉と言う一文があります。また、カバー表と
背には〈アブない恋はミステリー〉と言う一文
も。内容も推理ものに絡めてありますね。それ
を鑑みて改めて編集子よりの一文を読み返すと、
この言葉の意味深長さが窺えます。
因みにこの本の前身である『Boy Beans』のカバ
ーには、

 ・女のコによる女のコのための男のコの本
          (表タイトル横及び両袖)
 ・男のコどうしだっていいじゃない(表斜め)
 ・あなたにあげる秘密の恋です(表袖ロゴ下)
 ・男の子どうしだっていいじゃない
               (裏袖ロゴ下)

と言う言葉が踊っており、此れ等もまた何とな
く意味深さを窺わせているのです。
この二冊に関わっているのが有限会社すたんだ
っぷと言う編集集団であり、その代表者(編集
子)であるあらきりつこ(荒木立子)女史です。
漫画家・河内実加女史の回想に拠りますと、こ
の荒木女史が〈BOY'S LOVE〉と言う言葉の産み
の親でありますとか。が、詳細については荒木
女史自身が現在黙している様子なのでこれ以上
確認は望めぬかと思われます。【註1】
では、現在に至って用いられている一応の定義
がきちんと文字化されたのは、一体何時の事な
のでしょう。
其れが如何にも取り留めが無いようです。大ま
かな定義のイメージのみが囁かれていた中、き
ちんと定文化して提示したのは2001年末に発行
された『b.p.m.』の用語集が最初ではないか、
と思われます。それ以前に発行された文献を折
あらば観ては居るのですが、どうも曖昧模糊と
言いますか、前提だから説明不要と思われてい
ると言いますか。

この『ボーイズラブ』と言う言葉【註2】、対外
的には現在『少年同士の恋愛を描くオリジナル
創作』として了解されて居る様ですが、言葉の
発生当初はかなり曖昧な言葉であった事が窺え
ます。
イマージュの版元の白夜書房では〈ボーイズラ
ブ〉と〈耽美〉とが混用されていた様ですし、
二見書房の雑誌『Charade』でも〈やおい〉の
対堅気用語として認識されていた様な節が見受
けられます。
改めて思い返すとやおいと言う世界で正面切っ
て言語化された概念と言うのは実際少ないので
はないかと思えます。在籍するジャンルが違っ
ていても凡そはツーカー感覚で通じております
し。商業展開が盛んでありながら(ある意味で)
閉じた世界であるという感覚は独特のものかも
知れません。
〈JUNE〉が〈耽美〉の言換え語として長く適用
されていたのもその辺の感覚に拠るものではあ
るまいか、と。桜桃書房周辺では一時期オリジ
ナルジャンルの呼称として〈YAOI〉を適用して
いた様ですが今一つ定着しなかった様です。
〈ボーイズラブ〉の明瞭な様な不明瞭な出自は、
もしかしたらショタやおい界隈のイメージその
ものなのかも知れません。
〈ボーイズラブ〉の出典については、これから
も折に触れて確認して参ります。続報は随時、
と言う事で。

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
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書誌データ

『イマージュ』 vol.1
すたんだっぷ:編/白夜書房/91.12.10初版
ISBN 4-89367-248-7

『Boy Beans』  SPRING 1
すたんだっぷ:編/すたんだっぷ編集部/91.4.20初版
ISBN 4-89367-248-7

『b.p.m. Boys Paradise Magazine』#1
工学社/Studio R;編/01.11.25初版
ISBN 4-87593-251-0

『Charade』創刊号
二見書房/94.3.1発行/雑誌04453-03
キャッチフレーズ“BOY'S LOVE for GIRLS”

『ECLiPSE』 Volume-4 1994 OCT.
GUST増刊10月号 GUST9月号増刊
桜桃書房/94.10.1発行/雑誌02546-10

『GUST』 vol.1
YAOI COMIC
桜桃書房/90.8.1初版/ISBN 4-87183-299-6

『GUST』 vol.2
YAOI COMIC
桜桃書房/91.1.10初版/ISBN 4-87183-365-8

○●○

註1
http://blog.melma.com/00090840/20050514154942
ショタやおい雑記『BL書誌を観る』参照

註2
英文表記では〈Boy's love〉〈Boys love〉の2つ
が今も混在する。どちらが正解とも提示されない
ままで。片仮名表記ではどちらも包括される。

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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第二巻拾七回 2005.6.20発行

文責:葡萄瓜XQO
website:『仇花の記憶』
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