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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第三巻弐回  小説「黒の熱中」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

     黒の熱中
                XQO

 艶やかに黒い其れが熱い狭まりの中を前後に
往復し、時には上下に動いたりしている。其の
光景を観るだけで心騒いでしまうのが我乍ら情
けない。でももっと情けないのは相方を膝枕し
てやりつつ耳掃除をして妄想を抱くと言う自分
自身だ。綿棒の動きに淫らな妄想を重ねるなん
て、そんなに欲求不満なんだろうか、僕。
 或いは、其れは刷り込みなのかもしれない。
局部を表現する時に黒で塗り潰したり或いはそ
う言う塊を描く事に拠って代用としていた表現
方法の洗礼を自然と受けてきてしまったので、
未だに黒塗りと言うと在らぬはしたない想像に
連結してしまうのだろう。
 相方の反応だって良くない。
 出来上がった相手の膝枕に乗っているからと
言ってもたかが耳掻きなのだ。整容と言う作業
の中の一つでしかない。それなのに何故此処ま
で無防備に、しかも快不快を露に示すのか。呻
き声喘ぎ声だけなら兎に角として、時には頬ま
で紅潮させて。
 変則的とは言え団欒の一時なのだから、そう
言う誘いは無しにして欲しいと思ってしまう。
色恋盛りを少し過ぎた身にとっては、こう言う
誘いと言うのが一番手に余ってしまうから。
 「あのさ」
 「ん?」
 平静を装って生返事。
 「我慢しきれなくなったらとりあえず深呼吸
な?」
 ばれてたか。
 「この姿勢から雪崩れ込むって年でもないっ
しょ?」
 「そう言う問題かなぁ」
 「そう言う問題。今でも搾り取りたいって気
持があるなら別だけど?」
 「あっさり言ってくれるじゃない」
 そして、僕の膝の上で方向転換…って、顔を
内側に向けるなっての。
 「我慢を学習してもらう為に罰ゲーム」
 …お莫迦。
 「溝は充分に埋めてきたつもりだけど、足り
ない?」
 「心は満ち足りてると思う。体は…正直言う
と自信が無い」
 「ぼくもだけどね。味わい尽くしたつもりな
んだけど、それでも欲しくなるんだよな」
 「お互い、枯れる年でもないっしょ」
 「まーね」
 会話を交わしつつじっくり外耳を探っていく。
ふと感じるかすかな手応え。大物だ。恐らく今
までお目にかかった事の無い様な。綿棒を耳掻
きに持ち替えて改めて探る。この耳掻きの色も
丁寧にも黒い。使い込まれた漆の色だ。
 「じっとしてて」
 さっきまでの自身の惑いを棚上げして一点集
中。耳掻きの先に伝わる微かな振動さえも逃さ
ぬ様に。こう言う大物には滅多にお目にかかれ
ぬのだから出来るだけ完全な形で取り出したく
なる。
 「あの」
 「黙って」
 「引d」
 「うるさいな」
 言葉が止まったと思ったら微妙な身動ぎ。な
るべく上半身を動かさないようにと言う彼の努
力も空しく、彼の足が動けば当然ながら体も微
動する。
 「何したいの?」
 「粘着綿棒があるだろうが、とさっき言いか
けたんだがな」
 久々に拗ねた声。早目に対処しないと抉れる
よね、多分。とりあえず耳掻きを一端置いて物
差しを使って引き出しの中の粘着綿棒を引き寄
せる。勿論これも黒。耳垢の所在が判り易いし
ね。
 そして、改めて取り出し作業に掛かり…久々
の大物は外気の下漸く姿を現した。
 「出た?」
 「出たね。スッキリした?」
 「かなり。見せてくれなくて良いけど」
 確かに。残滓と言うものは観ていて好い気が
するとは限らないし。
 「たまには、良いな」
 「?」
 「こう言う日常の中に、誘い誘われを混ぜて
みるというのも」
 「確信犯?」
 「さてね」
 喉の奥で笑っている相方を見遣りながら綿棒
を抜き取る。この綿棒をさて、どうやって動か
せばこの鉄面皮は紅潮するだろうと考えながら。
                  (了)


○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。
では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第三巻弐回 2006.1.25発行

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