★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 ☆ 第三巻拾六回 小説「昆布と唐黍」 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 御機嫌よう。葡萄瓜でございます。 小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。 ○●○ 昆布と唐黍 XQO たたたたた。 ざざざざざ。 たたッ。 ざざッ。 ばたばたばたばたばた。 「只今!祖母ちゃん」 「元気だった?」 「マァ、ほんなこつこん子らは騒がしかねぇ。 どうして仲良く大人しいに入ってこれんと?」 呆れ顔の祖母ちゃんにアカンベをし合う僕等。 ここ十年そう言う光景を毎年繰り返してたらそ りゃ言われるよね。 「ま、おあがり。西瓜の冷えてごたる」 「へーい」 多分わざとぶっきらぼうに返事をしたジョン の腕がきらっと光ったんで一寸ぎょっとして眼 をこする。…なんだ、腕の毛か。遺伝子の御利 益とは言え一寸成長早くないか? 僕と従兄弟のジョンが盆前後以降の夏休みを 祖母ちゃんの家で過ごす様になってから十年。 思えばこいつに半分外国の血が流れているなん て忘れている事が多かった。少なくとも生活習 慣の大半は同じ様なものだったし。 最初にそう言う違いを意識したあの時だって、 外国云々よりも自分と違う考えにぶつかったの が面白かったんだと思う。 と、回想に浸りかけてふと気付けばジョンが 僕の足を枕にしようとしてやがった。 「熱いって」 「30分!明日マックおごるから」 「ビッグマックにシェイクL2つな」 「1つにしろよ」 「2つで手を打っとけって」 首筋を肩に向かってすっと撫でてやる。ああ、 まだビンゴな訳か。 「こう言う訳?」 「そう言う訳。想定外?」 「んな訳ないっしょ」 ふっと息を吐くと仰向けになって僕の手を握 り、そして呟く様に歌う。 ♪こびっちょの男の子は なんでつくる、なんでつくる。 こびっちょの男の子は なんでつくる。 かわずとででむしと こいぬのしっぽでつくられた。 それそれ、こびっちょの 男の子がつくられた。♪ 「マザーグース歌ってたら、祖母ちゃんがこ れ教えてくれたんだっけか」 「んだな。それで二人して盥で行水してさ。 覚えてる?」 「そらもーしっかり。匡のって歌の通りにで でむしッぽかったし」 「んにゃろぅ。ジョンのだってチワワの尻尾 だったじゃんか」 そして再び顔を見合わせて笑う。 「なんかあれで色々気が楽になった気がする」 「そうかぁ?」 「うん。結構ね」 そういいながら自分の髪を弄っている。ああ、 そう言う部分ね。確かにそう言う部分でもなき ゃ、ジョンがそう言う従兄弟だとは意識しない しな。 その行水を止めたきっかけも、実はきちんと 覚えている。僕の構成要素に昆布が、そしてジ ョンの構成要素に玉蜀黍のひげがちらほらと加 わる様になってからだ。それが3年前。それから 僕等は別々に行水する様になっていた。そして、 その反動でかどうか一寸親密過ぎるスキンシッ プが深まって今日に至る。 「皿饂飩上がったで、食べぇや」 「はぁい」 3人で祖母ちゃんの作ってくれたトマト入冷製 皿饂飩を黙々と啜る。ホームシックに掛かりそ うになった幼いジョンを慰めようと祖母ちゃん が工夫に工夫を重ねて作り上げた逸品だ。その 味の懐かしさと今の自分達の不埒さをつき合わ せると何とも言えない気分になる。 「二人とも、庭の隅観いや」 「何?」 「何か増えているのが判らんか?」 何か増えて…って、煉瓦の囲いがあって…こ れって? 「水溜め場作って貰ったで、久々に二人で行 水でもしいや」 「祖母ちゃん…」 「ああ、行水だけしいや?後は部屋でゆっく りな」 祖母ちゃん…どこまで知ってるんだよ。 冷や汗苦笑いの僕等を見ながら、祖母ちゃん は澄まして皿饂飩を啜っていた。 (了) ※文中のマザーグースは北原白秋訳『まざあ・ ぐうす』「こびっちょの子供は」より引用。 ※青空文庫所収「まざあ・ぐうす」 http://www.aozora.gr.jp/cards/000000/card546.html ○●○ さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて 戴きます。 では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。 ======================= 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 第三巻拾六回 2006.8.25発行 文責:葡萄瓜XQO website:『仇花の記憶』 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/ mail:xqo_gm@yahoo.co.jp このメールマガジンは melma! http://www.melma.com/backnumber_90840/ メルマガ天国 http://melten.com/m/14637.html Mailux http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533 メルカップ http://www.melcup.com/cgi-bin/magazine/magazine.cgi?mag_id=M000000737 のシステムを利用して発行させて戴いています。 ご意見ご質問等はWebサイトBBS http://otd11.jbbs.livedoor.jp/adabana/bbs_tree にて承ります。 又連動BLOG「ショタやおい雑記」も運営しております。 http://xqosy.seesaa.net/ こちらも宜しくお願い致します。 バックナンバーはサイト内にて公開しております。 再配信ご希望の場合はお手数ですがメール若しくは BBSにてご用命戴ければ幸いです。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆