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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第三十二回  小説「ゴッゴル物語」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
月末の小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。
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    ゴッゴル物語     XQO

 私、グーグリェンドゥとゴッゴル=デ・ラ=
イオアイの一日と言うのは十中八九の割合で私
の腰痛に拠るうめきで始まる。
 「痛々…もう年だな」
 起き抜けに腰を襲う鈍痛…それが房事に起因
するものであった事は実の所少ない。大体は横
に居る寝汚い若い友人の余りに健やかな寝相の
所為だ。
 この寝相に付き合う根気がにあったからこそ
ゴッゴルとこうして暮らしていられると思えば、
苦笑いが浮かびこそすれそうそう悪くは無い定
めだと言えるだろう。
 冬がまだ遠い季節で良かった。これが冬なら
ば腰の痛みとともにイェスパ風邪に襲われて、
幸せを噛み締める所では無くなっていただろう。
 当のゴッゴルはと言うと、枕を抱きしめて健
やかな寝息を立てている。
 全くもって、無邪気なものだ。

 この一見奇妙だが実に覚え易い名の若い友人
は、祖を遠き東方の島国に求める血筋であり、
『デ・ラ=イオアイ』と言うのは彼の地に伝わ
る慣わしから由来するのだという。
 が、その慣わしのあった事は本邦でも知られ
ているのだが、事の次第を細やかに伝える文書
は伝わっていない。伝わっているのは細切れの
木簡竹簡と石版の欠片だけ。紙に書かれた記録
は存在しない。事に拠れば焼き捨てられたのや
も知れぬ。
 その知識の断片故に、であろうか。ゴッゴル
を知る者は意味ありげな微笑を以って彼を見つ
めるのである。だが実際の所ゴッゴル自身は誰
からも彼の地の風習の手解きを受けていない。
彼の生活に彼の地の習慣が入り込んでいると言
われれば、それは彼が自然に会得したものであ
って、血脈から押し付けられたものではないだ
ろう。恐らくは、そうだ。
 又、彼の名である「ゴッゴル」はこの地の言
葉でもないし、彼の地の言葉でもない。  
 極々偶にある冗句の様な話であるが、実は誤
読の為この名は生まれたのである。本来なら彼
の名は「Gogjour」となる筈であった。が、彼の
出生書類を受理した役人も彼に最初の祝福を授
ける神官も「j」の文字を「g」と読み違えたの
である。
 故に彼の名は「Goggour」ゴッゴルとなった。
その間違いが彼にとって幸福なのか不幸なのか
は一口には言えない。万人に親しまれる名前で
あると言う点ではこれ以上はない幸福であろう
が、その親しまれ易い名前の効果で老若男子に
懸想され続けるのだとしたら、ある面不幸であ
ろう。
 ゴッゴル=デ・ラ=イオアイが老若問わぬ男
から懸想されるのは、青年期を迎えた今に始ま
った事ではない。幼少の頃から可愛い少女が傍
にいようとどう言う訳か彼の方に男が自然とな
びくのだ。
 愛し愛される技術を持つまではその懸想の重
みに潰されそうになっていた彼だが、手ほどき
を受けてその技術を開花させた今ではその重み
をかわす術も身につける事が出来ている。彼自
身は幼き者若き者達に対し手ほどきを行わない。
手ほどきを示唆するだけだ。ゴッゴル自身が手
ほどきをしてしまうと、された者がゴッゴルに
身も心も捧げ尽くし、本当に愛すべき者愛され
るべき者の所へ往けなくなってしまうからだ。

 実際の所、私がゴッゴルに惹かれたのは房事
やその類の所ではなく、また別の所である。
 ゴッゴルの時々演じる失態が余りに微笑まし
く、又目が離せぬからこそこうして盟友として
あり続けているのだ。二人とも房事には些か食
傷を覚えている事もあったし。
 寝台にしても、実は一つの寝台で寝ている訳
ではない。二つの寝台を横に並べてその上で寝
ているのだ。その方が色々と寝る間際に物を拡
げるのに便利であるから。無論、時に記が向け
ば房事に至る事もある。が、そう言う機会は今
の所、十日に一回訪れれば多い方だ。
 相手の体を貪って心を確かめていた若き日を
思わない事は無い。ゴッゴルもまだ若者の部類
であるから。が、穏やかに心の繋がりだけで日
々を過ごす安穏に、どうやらすっかり慣れてし
まったらしい。

 「おはようございます。グーグリェンドゥ。
又…」
 「元気があると言う事は良い事だ。気になさ
るなお若いの」
 「は、はぁ…」
 こうやって若者の照れた顔を頻繁に観ると言
う余禄も、決して悪いものでは無いだろう。
 そして、今日も一日は始まるのである。
                 (終)

○●○
さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。次号まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第三十二回 2004.11.30発行

文責:葡萄瓜XQO
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