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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
☆
第五巻弐拾四回　　小説「仕舞って、そして」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

　　　仕舞って、そして
　　　　　　　　　　　　　　XQO

　自宅住まいの時、年越蕎麦と言えば天麩羅蕎
麦と言うのが常だった。
　二人暮しを始めてから、それが焼蕎麦になっ
た。中華麺を焼くのではなく、十割蕎麦を焼い
てそいつをつゆで喰うのだ。
　そして一昨年の暮れからは湯掻きたての蕎麦
をさっと氷水で締めて盛蕎麦にして喰っている。
　人生の三分の二近くは天麩羅蕎麦で年を越し、
二割少しは焼蕎麦で越し、一割を盛蕎麦で越し
たと言う訳か。殆どを自分が調理してたと言う
のがなんとも言えないけど。
　台所に立つのは苦にはならない。ならないの
だけど、ただじっと待たれるというのが時々煩
わしかった。特に二人暮しの時は、僕を何時も
強引に引っ張り回す相手が打って変わってただ
茫洋と待つだけだったから、余計に。
　熱が冷めてしまうきっかけなんて、そんなも
のかも知れない。いっそ二人暮しをしていなけ
れば長く続いたのかとも思うけど、遅かれ早か
れ何かはあっただろうと思う。いずれにしても
疾うに終わった事だ。
　一人で食う盛蕎麦には今の所飽きていない。
むしろ盛る量を加減できるので却って好都合な
程だ。つゆにした所で作り置きを多目に作って
あるので手間が掛かると言う事は無い。
　寂しいと言う事も実際無い。逆に一人を愉し
んでいると思う。二人暮しの時に感じていた空
虚に比べれば今の方がむしろ充実している。多
分自分が満たされているからだろう。
　旨い蕎麦に出会ったなら、口をつけたが最後
とっとと胃の腑に納めてしまった方が味わいも
喉越しも良い。間延びした蕎麦を蕎麦掻に作り
直して、なんて間抜けを仕出かしては蕎麦に余
りにも失礼だ。恋も多分そんなものだろう。保
存を望んでフリーズドライを試みるのはそれぞ
れの勝手だろうがお奨めは出来無い。新鮮だか
らこその旨みもあるのだ。それを失えば、いず
れはばっさり乾く運命が待っている。
　と、話がずれた。
　しかしマア、舌に馴染み過ぎる程に旨い蕎麦
に巡り会うのも考えものだな。取り寄せ不可で
販売日が限定されているものだから先ず時間を
空ける根回しから必要になってしまう。
　…そう言う部分に夢中になってる事自体、も
しかしたらまだ引き摺っているのかも知れない。
心の痛みを味覚で満たしてもね、と自分でもお
笑い種にしか思えないのだけど。
　でももう一昨々年食った蕎麦は喰う気が失せ
た。増してや間延びしてこしの欠片も失せてし
まった蕎麦なんぞ。焼き蕎麦にしたとて只気の
抜けた蕎麦粉を焼いた代物にしかなりはすまい
よ。

　風呂の帰り、面倒臭いのと寒いのとで目に止
まったラーメン屋台に駆け込む。風呂を沸かす
段階で面倒臭くて銭湯を選択したんだから余程
体が楽をしたくなってるんだろう。ここらじゃ
珍しい豚骨ラーメンの屋台っぽいのにも惹かれ
たし。
　「らっしゃい」
　「並みで一杯」
　「毎度」
　待つ間があるなら何か頼もうと思ってる所に
声掛り。
　「オヤ奇遇ですね」
　改めてみると誰あろう取り寄せ不可の蕎麦屋
の若主人。あんたこそなんでラーメン屋台にい
るんだよ。
　「ああ…マア、腐れ縁です。元相方ですし」
　「へ？」
　「どっちに驚かれました？」
　「蕎麦屋とラーメン屋って所」
　「ああ、あなたも矢張りこっちの人でしたか」
　…尻尾を出したつもりは無いんだけどな。以
心伝心って奴か？
　「マア、勘ですね。これと一緒に居た頃培っ
た」
　視線を向けられた先に居るラーメン屋は意味
有りげにニヤリ。嫌味じゃなさそうな所がなん
か嫌だ。
　何で別れたのかね…まだお似合いな感じだけ
ど。ま、色々あるんだろう。
　「ああ、そうそう。大晦日の蕎麦ですが」
　「ン？」
　「この屋台借りて三人分だけ出前しようと思
ってるんです。御一緒しません？」
　「ヘ？」
　「次を始める為の討入蕎麦も兼ねて、と思い
まして。これも御縁ですし」
　ああ、そう言う事か。つか、人に判る程疲れ
てるのね、俺。じゃ、良い男の誘いに乗って甘
えとこう。人に作って貰う蕎麦を食うのも久し
振りだし。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（了）


○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。

ここで暫し喧伝を。
来る12月28〜30日、東京ビッグサイトにて行わ
れますコミックマーケット75にて、『ショタコ
ンのゆりかご』の委託頒布を下記の通り行いま
す。
☆
12月28日　　東ピ-27a「SystemNage」：da1様
増補版：B5版平綴コピー誌
本文12頁＋附表6頁＋ペーパー2枚挟み込み
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12月30日　西と22b
「みるく☆きゃらめる」：吉本たいまつ様
増補改訂版：B5版レジュメ形態コピー誌
本文15頁＋附表6頁＋別表2頁
☆
両者ともに今迄同様無料頒布形式となります。
委託頒布を快諾して戴きましたda1様、吉本た
いまつ様、誠に有難うございました。
なお、今回発行されます吉本たいまつ様個人
誌『腐男子にきく』誌上でインタビューを受
けております。そちらもご高覧戴けましたら
幸いです。
＊　＊　＊　＊
『腐男子にきく』　吉本たいまつ：編
オフセット版　64頁　表紙：依田沙江美
売価500円
＊　＊　＊　＊

では年明けの次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第五巻弐拾弐回　2008.12.25発行

文責：葡萄瓜XQO
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