★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 ☆ 第六巻壱回 そして、ボーイズラブ ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 御機嫌よう。葡萄瓜でございます。 本年度もよろしくお願い致します。 さて、つらつらと綴って参りましょうか。 今回は、JUNE・やおい・耽美・ボーイズラブの 変遷の状況を年表風に駆け足でお浚いする試み を致します。 理由と致しましては、ボーイズラブが外部から 論じられます際に分野情勢の変遷を綺麗さっぱ り無視されて、現行の勢力分布があたかも最初 から存在したかの様に強引に平面化されて説明 されているからです。 こういう言葉にだって歴史はあるのだよ、と言 う事を改めて知って戴ければ幸いかと。筆者も 認識を整理しておきたくありますし。 出来る限り記述して参ります。ご了承下さい。 ○●○ JUNE以前【1978年10月以前】 ☆ この分野を特定する言葉は発生していない。 転用された言葉は存在するが、その用法は元か らの語義に依存する部分が大きかった。 ↓ comicJUN創刊【1978年10月1日】 ☆ サン出版より刊行。1979年2月1日にJUNEと改題 するが方向性はほぼ確立されていた。【傍注1】 なお、この改題に際し「作家のジャン=ジュネ の名から誌名を採った」と言う巷説が流れてい るが、ジャン=ジュネの名から誌名を採ろうと していたのは同じ版元が刊行していた男性同性 愛者向け雑誌『さぶ』の事であった。【参照1】 誌面を見る限り、二次創作もオリジナルも、又 そう言う風に読む事の出来る既存の創作表現も 《JUNE》と言う認識の下に集約されていた感が ある。 ↓ らっぽり『やおい』特集号刊行 【1979年12月20日】〔*後に再録〕 ☆ 《やおい》を定義した現在確認できる限り最古 の文献である。ここで定義されたものは二次創 作要素を含まないオリジナルであり、色彩とし ては限りなく《JUNE》に近い。 ↓ キャプテン翼同人誌ブーム【1980年代中盤〜】 ☆ この時点で《やおい》=同性愛関係を主軸とし た二次創作と言う認識が発生した模様。明確な 文献は未だ確認されず。 又余談ながら《やおい》=同人誌と明確に断言 した文献も未だ確認されていない。 同人誌=《やおい》と言う認識を忌避する記述 が聖闘士星矢アンソロジーに掲載された事はあ ったが。【参照2】 ↓ BOY'S LOVE COMICイマージュ創刊 【1991年12月10日】 ☆ 白夜書房より編集プロダクション(有)すたん だっぷの手によって刊行。Boy's Loveと言う言 葉の初出である。 これに前後して勁文社より『耽美小説SERIES』が 刊行され始める。これに続き翌年2月白夜書房よ り『白夜耽美小説シリーズ』が、又12月には二 見書房より『VelvetRoman』シリーズが刊行され 始め、この時点より男性同性愛関係を描いた女 性向け創作小説を称して《耽美小説》と明確に 呼ぶ様になったと思われる。が、この冠が漫画 に冠される事は殆どなかった様子。 そして、この発生時期が微妙に重なった為か 《Boy's Love》≒《耽美》と言う認識混同が生 じていた模様。 実際に明確な区分は提示されていなかった。 ↓ Charede創刊【1994年3月1日】 ☆ 二見書房より刊行。白夜書房=(有)すたんだ っぷ以外でBoy's Loveと言う言葉を用いた嚆矢 と思われる。 しかしながら、現行のBoy's Loveの軽やかさは 見られず、《耽美》との認識混同もまだ存在し ている模様。 ↓ 月刊ぱふ〔雑草社・刊〕 「BOYS LOVE MAGAZINE完全攻略マニュアル」 掲載【1994年8月1日】 ☆ この特集において青磁ビブロスの雑誌編集方針 が提示されている。その目指す所は今日のボー イズラブそのものであるが、留意せねばならな いのはこの時点でその説明に《Boy's Love》と 言う言葉が用いられていない事だ。 むしろ《やおい》と言う言葉で作品が語られて いたのではないかと言う雰囲気が覗える。 『MAGAZINE BE×BOY』のキャッチフレーズに 《BOY's》と冠される様になったのは筆者確認の 限り95年頃ではないかと思われる。 青磁ビブロス〜ビブロス刊行物誌面に《ボーイ ズラブ》の文字が躍る様になったのは97年、社 名変更が正式になされてからの事と思われる。 又『MAGAZINE BE×BOY』のキャッチコピーに 《BOYS LOVE》と用いられる様になったのは2002 年以降。 ↓ コミックJUNE、現行方針にリニューアル 【1998年12月5日】〔マガジン・マガジン/刊〕 ☆ 『JUNE』から派生したコミック雑誌『コミック JUNE』が四号目にして現在に至る過激な性描写 主導の内容にリニューアル。 キャッチコピーに『ボーイズコミック』と用い る。 ↓ 2000年筆者がインターネット上に入った時点で 《Boy's Love》と言う言葉は好事家の間で用い られ、定義も『軽味を帯びたオリジナル創作』 と言う認識で落ち着いていた。 二次創作をボーイズラブと言い換える用法は確 立していなかったと思われる。 ○●○ そして今日に至る…と言う略年表でございます。 いや、略が出来ているかどうか怪しいものです が。 とりあえず、言葉の流れとしてこういうものが あったのだという事は少し掴んで戴けたかと愚 考致します。 この辺を少し踏まえれば、作品を検分する際に 少し役に立とうかと。 さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて 戴きます。 では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 傍注1 株式会社『JUN』からクレームがあった為誌名変 更に至ったとの事。『JUNE』4号に編集部よりの 簡略な説明あり。 ★ 参照文献 『消えたマンガ雑誌』新保信長:編 メディアファクトリー/2000.2.14初版 ☆ 『マンガ青春記』中島梓 集英社文庫/89.12.20初版 ☆ 『ひそやかな教育 〈やおい・ボーイズラブ〉前史』 石田美紀 洛北出版/2008.11.8初版 参照1 『小説JUNE』通巻144号(2002年10月号) マガジンマガジン/2002.10.1発行 ※“『さぶ』大辞典”内インタビュー記事 談:櫻木編集長;『JUNE』編集長(当時)。 『さぶ』及び『JUNE』の創刊に関わる。 *再録 『小説JUNE』通巻129号 (2001年3月号) マガジンマガジン/01.3.1発行 ※巻末綴じ込み付録として再録 参照2 『星矢危機一髪 あぶないせいや』 別冊COMICBOX(5) ふゅーじょんぷろだくと/87.9.1初版 ※読者のお便りコーナーにて<やおい>議論 ======================= 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 第六巻壱回 2009.1.10発行 文責:葡萄瓜XQO website:『仇花の記憶』 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/ mail:xqo_gm@yahoo.co.jp このメールマガジンは melma! http://www.melma.com/backnumber_90840/ Mailux http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533 おしらせメールサービス http://www.marine.ne.jp/mm/user.asp?id=75297 Yahoo!メルマガ http://merumaga.yahoo.co.jp/Detail/17353 まぐまぐ http://www.mag2.com/m/0000270330.html のシステムを利用して発行させて戴いています。 ご意見ご質問等はWebサイトBBS http://otd11.jbbs.livedoor.jp/adabana/bbs_tree にて承ります。 又連動BLOG「ショタやおい雑記」も運営しております。 http://xqosy.seesaa.net/ こちらも宜しくお願い致します。 バックナンバーはサイト内にて公開しております。 再配信ご希望の場合はお手数ですがメール若しくは BBSにてご用命戴ければ幸いです。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆