★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 ☆ 第六巻拾壱回 ある作品を廻っての愚考 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 御機嫌よう。葡萄瓜でございます。 さて、つらつらと綴って参りましょうか。 今回は海外から翻訳されて本邦の流通ルートに 乗ったあるBoysLove漫画作品を読みながらつら つら筆者の考えを綴ってみたいと思います。 2007年、日本文芸社KARENコミック文庫よりLEE YOUNG-HEE(イ・ヨンヒ/李英姫)作「絶頂」が 翻訳刊行された時、筆者は人伝いにその存在を 知り暫し首を傾げたものです。 韓国のBL作家さんが本邦の雑誌に連載を持って いた、と言う話を小耳に挟んだ事は無い。とす ると既に単行本として刊行されていたものを翻 訳して本邦の市場に流すと言う事か、と。 それだけならば筆者も首を傾げは致しません。 筆者はいきなり文庫と言う形で刊行すると言う 所に何か腑に落ちぬものを感じたのです。 そしていざ実物を読んでみると…良い作品だと 感じたのですが何か一味物足りない。しかしそ の足りない一味の正体が判らない。その違和感 を抱えたまま結局四巻まで読み進めてそれでも 何か足りないと胸に何かがつかえた心地を抱き 続けて参りました。 そして続きが刊行されないと確定して暫く経っ た後、読みたいと言う欲求に突き動かされてド イツ語訳されていた【註1】五巻以降を取り寄せ て読んでみた所、違和感の正体が漸く掴めたの です。 その巻末には日本のBL漫画単行本では御馴染み のおまけマンガや後書きがきちんと掲載されて おりました。そう、そう言うデザートが文庫版 では一切無かった。ただ作品本文だけが訳され て提示されていただけでした。 幾ら作品で勝負すると言う姿勢の結果でも、こ の省略の仕方はないかと思うのです。読者に与 えられた情報がカバージャケット袖の簡略な作 者情報だけなんて。 こうなったら念には念を、と言う事で邦訳され た四巻分も取り寄せて確認致しました。果たし てその巻末には後書き及びおまけマンガが存在 し、また単なるイラストと思っていた頁も実は スタッフ紹介の頁だったりしたのです。 ……筆者は、この確認作業を終えた後とても侘 しい気持ちになりました。邦訳版が背景効果の 書き文字まで細密に訳してあっただけに、余計 侘しい気持ちになりました。正直、一人の読者 としてこの侘しさを噛み締めています。 筆者は海外から刊行されている日本のBL翻訳作 品を全て読んでいる訳ではないので断言しかね ますが、少なくとも今まで取り寄せた本に関し て言えば後書きやおまけマンガを翻訳せず省略 した例はございませんでした。時にはカバー袖 まで訳出され、それらも作品の一部として認識 されていたと感じます。 確かに余所の国の事情が書かれている後書きだ から必要ないと感じる方もいるかも知れません が、そこに書かれている事柄も存外作品とリン クするものなのです。 翻訳に当たって諸事情はあったかも知れません。 しかしながら、いきなり本と言う形で読者の前 に供するのであれば煽りコピーではなく作品の 周辺まで含めた魅力で語って欲しいのです。 BL漫画の世界では、文庫化と言うのはステイタ スである様です。少なくとも流通に携わる側に とっては。 しかしながらそのステイタスをそれと知らしめ る為には、先ず親本(単行本)の存在が読者の 心に刻まれていなければ如何しようもあります まい。 『絶頂』と言う作品にはその手続きがとられな かった。いきなり文庫化作品として本邦に投下 され、詳細な情報が余り伝えられぬままにただ イメージだけが先行していた。 的確な情報がある程度存在しなければ、読者の 食指をきちんと動かす事は不可能でありましょ う。 取り敢えず四巻までではありますが『絶頂』邦 訳版が今も市場に流通している事は少なくとも 幸いです。 この邦訳版を評価すべき点はもう一点あります。 それはドイツ語訳版経由での確認ですが、各巻 巻頭のカラー頁と思しき部分をきちんとカラー 頁として再現してあるという点です。美麗な色 使いを再現し伝えたと言う点はもっと評価され て良いかと。 将来状況が変化して、続巻も翻訳されると言う 事であれば今度は後書きとおまけマンガも翻訳 される事を切に願います。傍注をつけると言う 手間もかかりましょうが。 一人のBL読みとしての、切実な希望です。 さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて 戴きます。 では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 註1:訳題「THE SUMMIT」 EGMONT Manga&Anime刊 版型はほぼB6版に同じ。カバージャケット無。 現在6巻まで訳出完了。 ※作者漢字表記は筆者による検索結果からの推定。 ======================= 仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜 第六巻拾壱回 2009.6.10発行 文責:葡萄瓜XQO website:『仇花の記憶』 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/ mail:xqo_gm@yahoo.co.jp このメールマガジンは melma! http://www.melma.com/backnumber_90840/ Mailux http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533 おしらせメールサービス http://www.marine.ne.jp/mm/user.asp?id=75297 Yahoo!メルマガ http://merumaga.yahoo.co.jp/Detail/17353 まぐまぐ http://www.mag2.com/m/0000270330.html のシステムを利用して発行させて戴いています。 ご意見ご質問等はWebサイトBBS http://otd11.jbbs.livedoor.jp/adabana/bbs_tree にて承ります。 又連動BLOG「ショタやおい雑記」も運営しております。 http://xqosy.seesaa.net/ こちらも宜しくお願い致します。 バックナンバーはサイト内にて公開しております。 再配信ご希望の場合はお手数ですがメール若しくは BBSにてご用命戴ければ幸いです。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆