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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
☆
第六巻拾弐回　　小説「COOL CROWN」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

  　　COOL CROWN
                          XQO

　俺はこの日四十二回目になろうとする溜息を
吐いて立ち上がり、相方の真正面にどっかと座
った。
　「あのさ、いい加減鬱陶しいんだけど」
　「……誰の所為だと思ってるんだ」
　どんよりした口調で返されるのはもう四十回
目。だからもう慣れっこになってる筈だと自分
に言い聞かせて継ぐべき言葉を探す。
　相方が鬱陶しい空気を纏っているのは彼の言
う通り俺にも責任が少しはある。でも相方の要
望を受け入れる一方では俺自身も正直身体がも
たない訳で。それを見越して強行した報いが今
来てるんだと思ってはいるんだけどね。
　結局言葉は見つからず、俺は一キログラム軽
くなった頭を軽く振って文机の前に戻る。相方
の恨みがましい視線を首筋にピリピリと感じは
するが…自分達だけ夏毛の快感を味わってこっ
ちには選択肢を与えないなんて、かなりずるい
と思う。
　ヒト族が空冷式を取り入れようと思ったら衣
服を取り払うか毛髪を取り払うかの二択しかな
いじゃないか。確かに俺には全裸好きの傾向は
あるけれども、そうしたらしたで不都合な点が
二つ出てくる。下半身の振り子作用が気になる
のと不意の来客の応対に困ると言う点だ。まあ、
後者は俺が応対方式を変えれば何とかなる。一
応関係者の間に限って言えば俺が全裸でも御咎
め無しと言う環境を構築も出来るし。でも前者
はなー…これはヒト族の弱点だな。体内に格納
出来るとか収縮が随意に行える様になっていれ
ば随分変わって来るんだろう。
　正直空冷式云々と言うのも理由だけど、別の
理由もない訳じゃ無い。むしろ大アリクイのコ
ンコンチキだ。脳味噌に加えて余分な一キログ
ラムを頚椎で支えるのがどう言う事か体感した
ら多分苦情は出ないんだろうなぁ。説明だけじ
ゃ今一つピンと来ないだろうし、インパクトを
上書き出来る程の説得力にも欠けるんだろう。
　いっそ下世話な喩えで返してやろうかな。肩
凝りの治療費と外泊経費の対比でもして。
　生業としてるのが座業だから頚椎のケアを怠
ると言う事は公私共に致命傷になる。処方に従
った頚椎牽引を定期的に出来ていれば問題ない
のだろうけど、不定期な状態だし。

　我儘を言っているという自覚はある。相方が
精一杯譲歩してくれているのだからこちらもそ
れに合わせるべきだとも思っている。
　でもそう言う気持ちと強行されてしまって厭
になる気持ちは相並び立つものだ、と自分では
思っている。
　まあ、こっちも強行の後押しをした様なもん
だしな。オレが反対ばかりしてりゃそりゃ強行
もしたくなるもんだろうし。
　ヒト族がオレ達の毛並を撫でて安楽な気持ち
を得る様に、オレも相方の髪を撫でて安楽を得
ていたいって、それだけの事が発端な訳で…相
方の頭皮から生えてる髪ってのがオレにとって
は重要なんだ。どうしようもない我儘だよなと
判ってはいるけど。
　じゃあ、仮にここでオレの我儘を一切無くし
たとする。それでオレ達の関係は対等になるの
か？答は否だ。オレと相方の立ち位置がただ入
れ替わっただけじゃないかと言う気がする。
　そう。不謹慎ながらオレはこの状況を少しだ
け楽しんでいる。こう言う状況でもないと相方
と正面切って喧嘩する事が出来ないから。これ
が正面切った喧嘩と言えるかどうか判らないけ
ど、少なくとも感情的にぶつかる状況が出来て
いるだけ良い。いつもそうなる前に相方はこち
らを逆撫でしない様にスマートに進行させるか
ら。
　我儘を聞いて貰うだけじゃ正直厭なんだ。オ
レは相方を支配したい訳じゃないんだから。

　そして、不意に投げて寄越される雑誌。
　「んだよ」
　「来月までに希望の型決めといて。善処する
から」
　よくよく観ればそれはヘアカタログな訳で…
って、来月？早くないか？
　「我ながら貧乏性に呆れると言うか何と言う
か…こう言う訳」
　鉄砲玉を喰らった俺に相方が袋から取り出し
て見せたのは、彼のものと思しき髪。
　「伸びなきゃこれで応急処置するから。これ
は貸しにしとくよ」
　鼻面を軽く噛まれて微笑まれて…相方の掌の
上で和解成立って事ね。まあ、これだけごねた
後なら良いか。
　取り敢えず希望の髪型は選んでおこう。相方
が少しでも涼しさを感じる様な奴で。礼節とし
てね。　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【了】


○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。

ここでしばし喧伝を。
今週末の6月27日、東京・大田区産業プラザpio
二階小展示ホールにて行われますオンリーイベ
ント“ショタスクラッチ9”上にて、「D18」で
参加されます修道士ペドフェチ様個人サークル
「秘本修道会」にて「ショタコンのゆりかご」
増補改訂版を委託頒布させて戴く運びとなりま
した。
今迄同様無料頒布形式となります。
委託頒布を快諾して戴きました修道士ペドフェ
チ様 、誠に有難うございました。
御来場の折には御高覧戴ければ幸いです。 

では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第六巻拾弐回　2009.6.25発行

文責：葡萄瓜XQO
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