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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第六巻拾八回  小説「STEP UP」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回。お楽しみ戴ければ幸いです。

○●○

  STEP UP
                  XQO

 積もり積もった文反古を前にして暫しわざと
うんざりした気持ちを味わってみる。自虐的だ
とは思うがこれも未練を断ち切る為の儀式だと
思えば気楽なもの。貰ったもの与えたものが全
て理のある盟約だったら捨ててしまうにも何ら
躊躇いは無かった筈だが、受け取るものの方に
反古が多く、それに釣られてこちらの理も乱れ
てしまっていた。そういう自家撞着を断ち切る
為の儀式だ。
 機械で千々に砕いたとしても多分未練は残る。
ましてや都合良く墨塗りをしただけで手元に留
めたら一歩たりとも先に進む事は出来ない。
 いっそ焼いてしまえば。芋か何かを焼く時の
焚き付けにでも。いやそれとて業火で焼かれた
ものの哀れさを考えると得策では無い。
 全く、こう言う文反古は厄介なものだ。
 目の前に居ない男よりも無機質な筈の文字の
方が優しいと言うのがまた腹立たしい。多分出
力した男が自己陶酔してたんだろうさと言う自
分の哂い声を認識はするが、そう言う偽りの優
しさでも癒しになるならと縋り付いてしまいそ
うな自分の存在にも気付いているので哂い声に
笑顔で向き合う事が出来ない。
 と、不意に突付かれる肩。
 「儀式終了?」
 「駄目。もう一寸待って」
 「良いけどね、慣れたから」
 そう言う風に慣らしてしまった事に罪悪感を
覚えつつ、明後日の方を向いて口笛を一吹き。
彼とは正式な相方ではないから浮気にはならな
い筈だと強弁はしてみるものの、今の自分の行
動パターンは…と改めて考えると彼に赦されて
いるらしい自分に対して平手打ちの一つも食ら
わせたくなる。
 何回こう言う状況があったのか、などとはも
う怖くて数える気力が無い。そして普通なら数
える前に彼がこっちの目の前から消えて終了に
なる筈だ。それが今でも継続していると言うの
は、こちらが彼に相当依存しているという事な
のだろう。真似出来るとは思えない、余りに烏
許がましいから。
『腐れ縁だしね。怒る気にもなれない』
 そう言う彼の苦笑に対し誠実さを持って報い
たいとは考えるものの、自分の恋愛対象の条件
に彼が合致して居ないのだから仕方がないと言
う言い訳も常に用意している。
 『浮気性じゃなくて恋愛が好きなんだよね、
君は』
 台所に立ちながら背中越しにこう言われたら
返す言葉が無くなってしまう。その声の響きに
一欠片の湿り気も感じられないだけに。
 ……友情だけで同衾するというのは、ありな
んだろうか?

 毎回の様に送り出す背中を見て感情が揺れな
かったといえば、正直嘘になる。徹頭徹尾友情
の心算だったのが片恋に進展してしまったとい
うのは吾が事ながら想定外だった。
 はっきり言うと俺はこいつの様なのは恋愛の
対象外だった。恋に恋したいって気持ちは判ら
ないじゃないが、その度に全身全霊傾けて傍観
者まで巻き添えにするってのは戴けない。
 良い男とは思うよ?今迄の経緯抜きで考える
なら多分一目惚れしてたと思う。それが継続し
たかどうかはとりあえず横に置いといて。
 まあ、ここまで恋愛に対して打ち込めるとい
うのは正直羨ましくはある。後顧の憂いが無け
れば俺も見習いたいとは思う。俺にどんな後顧
の憂いがあるかって?目の前のこの男の面倒に
決まってる。恋愛がどうのこうのと言う前に腐
れ縁だから変な風にどうにかなって貰っちゃ俺
が嫌だし。
 多分こういう世話心を変に持ってしまったの
が俺の失敗なんだと思う。ビジネスライクに友
人であり続けたなら気を揉む事なんてなかった
だろう。
 さて。
 俺の中の片恋は、とりあえず認めよう。否定
したからと言ってこの感情が無くなる訳じゃあ
ない。
 でも、だからと言ってこいつに絆されてなん
かやらない。なし崩しに関係を始めたらこいつ
は今迄同様暗黙の内に甘えるだろうから。
 どうせなら本気で口説いて貰いましょ。今迄
の相手の様に。その口説きに俺がよろめいてし
まったなら新たな局面をきちんと始めるって事
で。で、よろめいた後はその猪突猛進なだけの
恋愛観を叩き直してくれる。
 何しろこいつの恋愛の一番悪い所は、自分だ
けが正しいと思って突っ走る点だ。で、こけた
らこけたで自分の速度を反省するんじゃなくて
相手や経路の所為にする。冗談じゃねぇや。
 
 「えーと」
 「何?」
 「いや、いいや」
 「ふうん?」
 そうして今日も腹芸合戦は続く。形は違えど
双方ともに雄な訳だから征服欲も少し織り交ぜ
ながら。               
                                   【了】


○●○

さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。

ここで一つ喧伝を。
来る10月25日(日)、池袋サンシャインシティ
・A2及びA3+Bホールにて開催される創作JUNE系
同人誌即売会・J.GARDEN27にて『ショタコンの
ゆりかご』冊子増補改訂版を委託頒布させて戴
く運びとなりました。
委託先は、

サークル:「みるく☆きゃらめる」様
代表者:吉本たいまつ様

でございます。今迄同様無償頒布形式となります。

委託を快諾して下さいました吉本たいまつ様、
誠に有難うございました。
★
『ショタコンのゆりかご』冊子増補改訂版
二冊分冊・B5版・オフセット版

本編:縦組三段・表紙除く本文16頁・無線綴
【黄色表紙】
+
資料附表:横書・表紙除く本文8頁・無線綴
【橙色表紙】

無償頒布。
★
お気軽に御高覧戴けましたら幸いです。

※ J.GARDEN公式 http://www.netlaputa.ne.jp/~jgarden/

では、次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第六巻拾八回 2009.9.25発行

文責:葡萄瓜XQO
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