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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
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第七巻拾回 小説「永のお泊り」
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御機嫌よう。葡萄瓜でございます。
小説配信回、お楽しみ戴ければ幸いです。
○●○
永のお泊り
XQO
『糠味噌が腐るからその歌y』
言い終わらない内に投げつけた漬物壺は程好
く相手の顔面を捉えていた。意外な事に相手は
しっかりとその質量を受け止め、悶絶している。
「…ッれ？」
『おめーはよ』
悶絶から現状復帰した相手の顔は赤く染まり
こそすれ外傷は一切無い。どうやらそう言う融
通は利く様だ。
『俺が不在になってから随分と体力がついた
様だが？』
「まーね。お陰様で快眠快食の毎日だしね」
『そう言うもんか？』
「そう言うもんだよ」
実際僕の体重は目の前の馬鹿が居なくなって
から一応年齢なりに増加した。もっともメタボ
腹にはならない様注意した結果だから順調に筋
肉で増加しているのではないか、と自分では思
っている。
それにしたって御挨拶な話だ。久々の訪問な
らいきなり図星を突いてこっちの鶏冠を赤くさ
せる事は無いだろうが。言っとくがお前さんと
カラオケ行くのって本当に苦痛だったんだから
な？美声の持ち主の添え物になった気持ちを少
しは斟酌しやがれ。
「で？」
『へ？』
「彼岸は過ぎたし盆には遠いし、何しに来た
の？」
『おま…ちょ…』
これが十年単位振りとか数年単位振りの再会
なら諸手を挙げる、或いは一寸進んで抱きつい
て歓迎してやっても良いんだけどさ、最低限盆
正月彼岸には来やがって近年では一月に一回は
確実に来訪……流石に有り難味が薄れるんだわ。
一応遺されたと世間に認知されてる身にとって
はね。
ま、良いか。
「盆で思い出した」
『んだよ』
あのな…図体のイメージだけは今でもでかい
んだから踏み石にのの字書くのは止めなさいっ
ての。
「珍しい煙管と良い刻みをこないだ手に入れ
る事が出来てさ。直接味わいたかろ？」
『良いのかよ』
「僕のペースじゃ折角の葉を湿気らすだけだ。
喫うの？喫わんの？」
『喫わなきゃ可哀想だろうが』
ああ、良い貌だ。この貌を見れるんだったら
大枚はたいて総白金の煙管を手に入れた甲斐も
ある。普通の羅宇だとこいつは触れないから相
当悔しがるし。触れた頃は朱いのが良いんだと
か薀蓄垂れっ放しだったけどね。
それに普通の羅宇を通ったならこいつの体内
に入る事が適わない煙も、白金を経由する事で
恐らく通ってくれる。他の経験からの推測だか
ら成功率は四割あれば良いかも知れんけど。
「匂い、判る？」
『残念ながら。でも活きの良いのは判る』
魂だけになってからこっち、この情人から抜
け落ちた感覚は結構ある。それでも経年ととも
にある程度融通が利く様になっているみたいで
温度は感じないが無機物には触れるし、無機物
で打撃を与えてもダメージを受けたりする様に
なっている、多少の調子の変化はあるみたいだ
が、プラスティックの風呂桶はこいつをすり抜
けても金だらいならこいつにぶつけてコント紛
いの事を出来るって事だ。だから漬物壺はこい
つにぶつけられた訳。
でも総白金の煙管はどうなんだろう。そして
煙草の煙をこいつは味わう事が出来るのか？不
惑前にして馬鹿げた事をやってると自分でも思う。
『うん、旨い』
喫いつけてから渡し、そしてぷかり。
煙管は無事こ奴の掌に収まり、紫煙の残滓が
吐き出されてやっと僕はほっとした。
そして気がつくと逆にこっちが拝まれている。
「気味悪いね。止しなさいよ」
『いや、有り難いから拝んでる』
「普通はこっちがあんたを拝むモンだよ」
そういえばあの日もそんな遣り取りをしてた
んだったかと思い出す。で、今があってしまう
訳だがあの日何処かが変わっていればまた違う
日が訪れたんだろうか。
『まあ、悪いけど後四十年はこう言うのに付
き合いなさいよ』
「何？そう言う予定なの？」
『らしいね』
返されてやれやれと苦笑する。それじゃあ旅
支度は次の機会に新調しよう。いっそペアルッ
クも良いかも知れない。
【了】
○●○
さて、此度はこれにてとりあえず筆を擱かせて
戴きます。
ここで一つ喧伝を。
筆者が後援しておりますコミックカフェ・CAFE
801（カフェハチマルイチ）におきまして、4月
16日よりゲーム情報誌『Cool-B』創刊5周年記念
祭が開催されております。
また28日より6月6日まで、男性にも店内が解放
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CAFE801（カフェハチマルイチ）
〒170-0013
東京都豊島区東池袋3-10-6
加藤第6ビル2階
http://cafe801.org/
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では次号配信まで、御機嫌宜しゅう。
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仇花の記憶〜ショタやおい雑話〜
第七巻拾回 2010.5.25発行
文責：葡萄瓜XQO
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